二重敬語とは、1つの語について、敬語を二重に使うことをいいます。
「ご覧になられる」は、「見る」を「ご覧になる」と尊敬語にしたうえに、さらに尊敬語の「〜れる」を加えています。これは二重敬語であり、失礼とみなされます。
×社長が資料を ご覧になられる(二重敬語)
↓
◯社長が資料を ご覧になる(尊敬語)
◯社長が資料を 見られる(尊敬語)
二重敬語は適切ではない表現だとわかっていても、うっかり使ってしまうこともあります。
そんなことにならなにように、こちらで、二重敬語をしっかりチェックしましょう。
わかりやすくチェックできるとありがたいです。
はい。
それでは、よくある二重敬語を一覧表や例文でわかりやすく解説いたします。
目次
二重敬語とは
二重敬語とは、1つの語について、同じ種類の敬語を重ねて使うことです。
「おっしゃられる」は、尊敬語の「おっしゃる」と「れる」を重ねているため、二重敬語です。
また、「ご参上する」は、謙譲語の「参上」と「ご〜する」を重ねているため、二重敬語です。
どことなく違和感は覚えます。
でも、緊張している場合や急いでいる場合には、つい使ってしまいそうです。
つい使ってしまって、後で考えたらあれは二重敬語だった!なんてこともあります。
そうはならないように、こちらでチェックしておきましょう。
【一覧表】よくある二重敬語4つのパターン
二重敬語に気がつくために、よくある二重敬語の4つのパターンを知っておきましょう。
【二重敬語4つのパターン】
- 「お〜(ご)〜になる」+「れる」「られる」
- 謙譲語+「させていただく」
- 敬称+「様」
- 各位+「様」
それでは、詳しく見ていきましょう。
「お(ご)〜になる」+「れる」「られる」
「お(ご)〜になる」という尊敬語に、「れる」「られる」という尊敬語をつけてしまうと二重敬語です。
目覚める(基本)
↓
お目覚めになる(尊敬語)
目覚められる(尊敬語)
↓
お目覚めになられる(二重敬語)
表で確認しましょう。
基本 | 二重敬語 | 正しい表現 |
言う | おっしゃられる | おっしゃる
言われる |
読む | お読みになられる | お読みになる
読まれる |
飲む | お飲みになられる | お飲みになる
飲まれる |
話す | お話になられる | お話になる
話される |
来る | お見えになられる | お見えになる
いらっしゃる |
見る | ご覧になられる | ご覧になる
見られる |
変える | お帰りになられる | お帰りになる
帰られる |
出かける | お出かけになられる | お出かけになる
出かけられる |
使用する | ご使用になられる | ご利用になる
使用される |
謙譲語+「させていただく」
「させていただく」は、「する」の謙譲語です。
そのため、「拝見する」などの謙譲語にプラスして「させていただく」を使うと、二重敬語になってしまいます。
- 拝見(見るの謙譲語)+させていただく(するの謙譲語)=拝見させていただく(二重敬語)
「拝見させていただく」は、1つの語に対して謙譲語を2つ使っているため、二重敬語です。
このように、謙譲語に「させていただく」を使ってしまうのをよく見かけます。
謙譲語+謙譲語では二重敬語で慇懃無礼と感じる方もいます。二重敬語は使わないように気をつけましょう。
表で確認してみましょう。
基本 | 二重敬語 | 正しい表現 |
行く | 参上させていただく
伺わさせていただく |
参上する
伺う |
見る | 拝見させていただく | 拝見する |
もらう | 頂戴させていただく | 頂戴する |
言う | 申し上げさせていただく | 申し上げる |
与える | 差し上げさせていただく | 差し上げる |
記事ブログに、「させていただく」についてわかりやすく解説した記事があります。こちらもご覧ください↓
役職+「様」
「〇〇部長様」のように敬称に「様」をつけるのは二重敬語です。
「部長」「課長」などの役職名は、それ自体が敬称です。そこにさらに敬称の「様」をつけるのは誤りであると考えます。
わかりました。
「〇〇部長様」と、メールに書いたり会話で使ったりしないように気をつけます。
「社長さん」と呼びかけたらなんだか変な感じがするものです。
敬称にさらに敬称をつけるのはやめましょう。
丁寧にお呼びしたつもりが、逆に慇懃無礼であったり、失礼になることもあります。
適切な敬称を使うよう心がけましょう。
各位+「様」
各位には「皆様、皆様方」という敬う意味があります。[注1]
そこに「様」をつけて「〇〇各位様」というのは二重敬語です。
【引用:デジタル大辞泉】
かくい【各位】
大ぜいの人を対象にして、その一人一人を敬って言う語。皆様。皆様方。
多く、改まった席上や書面で用いる。「会員ーにお知らせします」
◆「各位殿」という表現は、経緯が重複することになるので、好ましくない
お知らせの文章などで、「◯◯各位様」を使ってしまわないように注意しましょう。
[注1]デジタル大辞泉
三重敬語もある
二重敬語だけでも慇懃無礼であると考えられていますが、さらに三重敬語になってしまっている言葉もあります。
- お召し上がりになられる
- お承りさせていただきます
- お見えになられる
上記は三重計語です。
「お〜になる」+「召し上がる」+「られる」=三重敬語
「お〜する」+「承る」+「させていただく」=三重敬語
「お〜になる」+「見える」+「られる」=三重敬語
三重敬語になると、さすがに違和感が大きいです。
三重ともなると、「敬語だらけ」の印象です。
丁寧にしたい気持ちはわかりますが、適切を心がけましょう。
二重敬語クイズ
敬語に敬語を重ねてしまうのが誤りなのをご説明しました。
演習問題で確認してみましょう。
問題:どちらの文章が二重敬語で、どちらの文章が正しい表現でしょうか。
【問題1】
◯◯広場を拝見させていただきました。
◯◯広場を拝見いたしました。
【問題2】
お客様がご到着になられました。
お客様がご到着になりました。
【問題3】
部長様、お電話です。
部長、お電話です。
【問題4】
関係者各位様におかれましては…
関係者各位におかれましては…
すぐにおわかりいただけたでしょうか。
下記に解答を示します。
問題:どちらの文章が二重敬語で、どちらの文章が正しい表現でしょうか。
答え:
【問題1】
(☓) ◯◯広場を拝見させていただきました。(二重敬語)
(◯) ◯◯広場を拝見いたしました。
【問題2】
(☓) お客様がご到着になられました。(二重敬語)
(◯) お客様がご到着になりました。
【問題3】
(☓) 部長様、お電話です。(二重敬語)
(◯) 部長、お電話です。
【問題4】
(☓) 関係者各位様におかれましては…(二重敬語)
(◯) 関係者各位におかれましては…
定着している二重敬語
あまりに広く定着しているため、許容される二重敬語もあります。
お召し上がりになる(「召し上がる」+「お〜になる」)
お見えになる(「見える」+「お〜になる」)
お伺いする(「伺う」+「お〜する」)
拝見いたします(「拝見する」「いたす」)
上に挙げた言葉は二重敬語ですが、よく使われる表現です。
本来は適切ではないかもしれませんが、すっかり定着しています。
文化庁の敬語の指針にも、次の記載があります。[注2]
【引用:文化審議会答申「敬語の指針」】
「二重敬語」は,一般に適切ではないとされている。ただし,語によっては,習慣 として定着しているものもある。
【習慣として定着している二重敬語の例】
(尊敬語)お召し上がりになる,お見えになる
(謙譲語)お伺いする,お伺いいたす,お伺い申し上げる
定着している二重敬語は、話し言葉としてなら、使っても問題ないかもしれません。
文章では、二重敬語にならない書き方をするほうが無難でしょう。
[注2]文化庁/文化審議会答申/敬語の指針[pdf]
まとめ
二重敬語は、慇懃無礼であると感じられてしまうこともあります。
丁寧にしたい気持ちがあっても、敬語を不適切に重ねて使うのはやめておきましょう。
ただし、「お召し上がりください」のように一般的になっている表現もあります。「召し上がる」と「お〜ください」が同時に使われている二重敬語ですが、すでに広く定着している言い回しです。
定着している二重敬語については、敬う気持ちをこめた表現として受け入れる人もいれば、過剰だと考える人もいます。判断に迷うところですが、話し言葉であれば、場面に応じて適宜対応するのがよいでしょう。
文章作成の場では、二重敬語は使わないのが基本です。敬語に違和感を覚えたら、二重になっていないか確認してみましょう。