コンテンツマーケティングという言葉が日本のウェブマーケティング界にやってきてから7年ほどが経ち、業界内ではコンテンツマーケティングという言葉は一般的なキーワードになりつつあります。
しかしウェブマーケティングとの関りがない方たちには「ブログを書けばいいんでしょ?」「そんなもの書いても利益はあがらない」と言われてしまいがちという現実もあります。
そこで今回はコンテンツマーケティングを自社でも始めようとしている方が、上司にどのようにアピールするとよいか、そして今一度コンテンツマーケティングの基本に立ち返り、コンテンツマーケティングがなぜ集客に効果的なのかについての理解を深めたいと思います。
目次
知識がないと理解されづらいコンテンツマーケティングの重要性を、順序立てて伝えることがポイント
そもそもコンテンツマーケティングとは何でしょうか?
コンテンツマーケティングの概念を広めてきたジョー・ピューリッチはコンテンツマーティングについてこのように語ります。
“コンテンツマーケティングとは、見込み客を引き付けて維持するために、そして最終的には収益性の高い顧客行動を促進するために、価値のある関連性のある一貫したコンテンツの作成と配信に焦点を当てた戦略的なマーケティングアプローチだ”
参考:『What Is Content Marketing?』Content Marketing Institute
英文をそのまま翻訳しているので分かりづらい文章になってしまいましたが、優良なコンテンツによって見込み客を優良顧客として獲得するための手法がコンテンツマーケティングになります。
コンテンツマーケティングは、ランディングページやECサイトの商品ページのように、訪れた人を購入や商談といった具体的な行動に移させることが主目的ではないため、売上や経費といった数字を追いかける立場の方からすると効果が見えない行為だと思われてしまいがちです。
そのようなときには、コンテンツマーケティングは見込み客を効率的に優良顧客として集めることができ、且つその顧客が競合他社へ流れないための施策であるという側面を推していくことがポイントになるのではなります。
売上目標を達成するために、値下げや何らかの特典をつけたキャンペーンなどを展開する企業は少なくありません。しかしそれらのキャンペーンにより集まった顧客は、商品そのものに対しては元々十分な魅力を感じておらず、キャンペーン特典があって初めて顧客となっています。
そのような顧客にリピーターになってもらうためには、キャンペーンをきっかけに生まれた接点にさらに接点を重ねて、商品や自社を気に入ってもらわなければいけません。
しかし、商品や自社についての知識を既に持っており、理解と共感を持って商品を購入してくれる顧客に対してはどうでしょうか。
キャンペーンで集まった顧客の最初のスタートラインを0、リピーターというゴールラインを10とすると、理解と共感を持って商品を購入してくれた顧客のスタートラインは4ないし5ほどかもしれません。
新規顧客に優良顧客になってもらうための労力を考えると、後者の顧客を集めることにリソースを割くべきであるというのは自明です。
そのような「まだ接点のない見込み客に商品や自社への理解と共感を持ってもらう手法が、コンテンツマーケティングである」ということを理解してもらうことが、上司に伝えるための前提条件ではないかと考えます。
ここからは、この前提知識を上司と共有したうえで、さらに具体的な提案を行いGOサインをもらうための方法について考えていきます。
1.ストック型メディアとフロー型メディアを一緒くたにされないようにする
コンテンツマーケティングの前提知識を持った上司は、こう考えるのではないでしょうか。
「SNSをやればいいの?」
「キャンペーンの告知をしたらいいの?」
このような質問にしっかりと回答するために理解をしておかなければいけないのが、ストック型メディアとフロー型メディアの違いです。
フロー型メディア(SNS)
- 今起きていること、これから起きることを伝えることに特化
- 情報の鮮度が高い分、過去の情報をさかのぼることに適さない
- 拡散力があり、多くの人に知ってもらうことができる
ストック型メディア(オウンドメディアやブログ)
- 情報の鮮度が求められないので、長期的に求められる情報に最適
- 記事を適切にアーカイブすることができ、遡って見るときに分かりやすい
- 文字数を気にしなくてよいため、専門性の高い内容を発信することができる
Webでの集客を考えたとき、今の時代のネット集客はSNSが一番だと考えている方も多いと思いますし、実際に多くの企業がSNSのアカウントで情報発信を行っています。
しかしSNSはフロー型メディアなので今起きていることを伝えたいときには最適ですが、現在起きていることの情報発信でしかないので、現実に置き換えるとビラ配りと同じ行為といえます。ビラ配りで配ったチラシの大半がすぐに捨てられてしまうように、拡散力のないアカウントが行う情報発信に注目が集まる可能性はほぼゼロです。
コンテンツマーケティングは情報を消費していくフロー型メディアとは違い、専門性の高い内容をしっかりと伝えるストック型メディアです。
ですので、先のような質問が上司から来た際には「消費されやすいイベント情報などの発信ではなく、商品知識や自社の想いを理解してもらいファンを作るために行うのがコンテンツマーケティングの目的なので、SNSではなくブログやオウンドメディアでの運営が最適」ということを伝えてみてください。
それでもSNSを始めたいと考える上司には、
- SNSは簡潔な短文で伝えなければ目に留めてもらえないこと、
- 短文で効果的に集客をするためには投稿にリンクを貼りリンク先のページでじっくり読んでしてもらう必要があること、
- じっくり読んでもらうコンテンツを作るということこそがコンテンツマーケティングになるので、まずはコンテンツを作ることが先決だということ
を伝え、コンテンツがあってのSNSだと理解してもらいましょう。
2.ストック型メディアは自然検索との相性が良く、自然検索は集客効果が高いという集客路線でアピールする
ユーザーのリテラシーが以前に比べると高くなった結果、ユーザーは自然と広告を避ける傾向が生まれました。そして、広告を避けて検索順位の上位に表示されている記事にアクセスするユーザーは、自分に営業をかけてくる広告ページではなく、調べたいことに対して正しい情報を求めています。
そのようなユーザーに対して専門性が高く質の良いコンテンツを提供することには、ユーザーに満足してもらえるだけでなく、Googleの評価も上がるという副次的効果があります。
Googleの評価が上がることで検索順位が自然と上がってゆき、その結果さらに自然検索での訪問数がじわじわと上がっていくようになります。
自然検索でコンテンツを読むユーザーは、自身が検索したキーワードへの興味関心を持っています。そのニーズを満たすコンテンツを提供できると、「サイト(=商品や企業)のファンが自然と増え効率の良い集客ができるようになる」ことを伝えてみてください。
3.専門的な知識によって書かれたオリジナルコンテンツはSEOにも効果があることを伝える
例えばアパレル関係なら着こなし術や衣類のお手入れ方法、文具を売っているサイトならプレゼントに最適な文具やちょっとマニアックな文具の紹介、お掃除サービスのような無形の商品を扱っている企業であればプロしか知らないマル秘テクニックといったように、その道のプロだから知っている情報というものはすべての業種に必ずあると思います。
そのような専門の立場の人からの情報を見つけたときに、自然と最後まで読んでしまっていたという経験はないでしょうか。
まとめサイトに載っているレベルのありきたりな内容ではなく、専門的な知識をもって書かれた記事は独自性が高く、しっかりと読まれます。
しっかり読まれたページ=長時間滞在したページが複数ある場合や、そのページの専門性を他のユーザーが評価している=被リンクが多い場合などはページがサイト全体の評価を底上げしますので、コンテンツマーケティングはSEOにもよい影響を与えます。
サイトのアクセス数や広告費などを気にする上司にはSEOにも良い影響があることを伝えてみるのも良い案かもしれません。
4.顧客が知りたい情報を提供することで顧客との関係性が深まることを伝える
ユーザーはモノやサービスを購入する前後の様々な場面で、そのモノやサービスについて調べますがその際にどこで情報を得るかで顧客との関係性が変わります。
パソコンをネットショップで購入することを検討している人を想像してみてください。
購入前はスペックや購入した人の口コミを調べますが、購入後は使用していて分からない機能や操作に関する疑問点を、日常生活の中で検索するようになります。
その際に購入した先のサイトで知りたい情報が得られなかったとしたら、多少なりともがっかりしてしまうのではないでしょうか。「ここが信頼できるから購入したのに、何の情報も得られない」という感情から、顧客との関係性が一段階下がってしまうことが考えられます。
反対に購入した先のサイトに知りたい情報がすべて掲載されていた場合、「ここで買ってよかった、やっぱりここが信頼できる」と関係性が一段階深まっていきます。
以前のアフターフォローは顧客との1対1の関係で生まれるものでしたが、コンテンツマーケティングでアフターフォローを兼ねたコンテンツをサイト内に配置しておくことで1対多数のアフターフォローができるようになります。
もちろん記事を読まない顧客もたくさんいますので、アフターフォローの労力が減ることはありませんが、問い合わせをすることもなく消えていった顧客が減り、リピーターになってくれるかもしれません。
また、自社サイトにそのような記事を置くことで、購入前のユーザーもアフターフォローの記事を読むことができます。それを読んだユーザーは商品への前提知識を持って購入をしてくれるので、購入後のトラブルが減少することも期待できます。
同時に競業他サイトで購入したユーザーを自社に引き込むきっかけにもなりますので、読者が知りたい情報を先読みしたコンテンツが揃うと、集客の労力なしに顧客を呼び込むことができるようになります。
コンテンツマーケティングは売上に結びつかない行為だと思われがちですが、売上の下地作りにはコンテンツマーケティングがとても重要だと理解してもらうことが大切です。
5.消費行動を意識したコンテンツで買いたくなる気持ちを刺激することができる点をアピールする
ここまでの説明でコンテンツマーケティングが集客に効果的だということは理解してもらえていると思います。
そこで最後の一押しとして、パルス型消費行動を意識したコンテンツを作ることで見込み客を購入に一歩近づけるコンテンツを作れるということを、伝えてみるのはいかがでしょうか。
パルス型消費行動とはGoogleが提唱するネットでの消費行動の傾向です。
これまの消費行動といえば、その商品を知ってから購入に至るまでユーザーは時間をかけて段階的に欲求を高めていくというジャーニー型でしたが、スマホユーザーの増加に伴い24時間いつでもネットショッピングができるようになり、情報を知って購入に至るまでのスピードはとても速くなりました。
商品を知ってから購入に至るまでの時間経過がパルスのように瞬間的というところからパルス型消費行動と名づけられています。
Googleは記事の中で、パルス型消費を促す6つの直感センサーについて触れています。
https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/articles/search/shoppersurvey2019-3/
- セーフティ:安全なもの
- フォーミー:自分にぴったりだと思うもの
- コストセーブ:お得なもの
- フォロー:売れているもの、評価が高いもの
- アドベンチャー:興味をそそるもの
- パワーセーブ:買い物の労力を減らせるもの
どのような商品を購入するかでどのセンサーが敏感に働くかは変わりますが、買い物という行為をするにあたって必ず働くという点が共通しています。
Googleの調査によると以下のような傾向が発見されたとのことです。
ヘアケア用品
セーフティ・フォーミー・パワーセーブが重視される
自分にぴったりの安全なものを見つけて継続的に使い続けられる商品が求められている
ソフトドリンク
パワーセーブ・コストセーブ・アドベンチャーが重視される
どこでも気軽に購入できてコスパが良いものが重視されるが、目新しさも求められる
生鮮食品
フォロー・セーフティ・コストセーブが重視される
今流行っていて手軽に購入出来て、口に入れても安全なものが求められる
洋服
パワーセーブ・コストセーブ・アドベンチャー
着回しができて高すぎず、自分を少し変えられるアイテムが求められる
家電
コストセーブ・フォーミー・フォロー
自分の生活にマッチしていて、手ごろな値段で口コミの評価が高い商品が求められる
自家用車
アドベンチャー・セーフティ・フォロー
興味をそそられる車種で安心安全が確立されていて、ユーザーの評価が高い車が求められる
このように、商品の種類により重視される直感センサーには違いがあります。この一覧のアイテムを御社で取り扱っている商品に置き換えた場合どの商品が近いでしょうか。
コンテンツを作成する際に、これらの直感センサーを刺激することを意識して(対極の直感センサーを無駄に刺激することを避けて)記事を作成すると、読者により良い感情をもってもらいやすくなることが期待できます。
とはいえこれらを強く出し過ぎると、狙いすぎた広告のような記事になってしまいユーザーから忌避されることも十分に考えられますので、コンテンツの中ではエッセンス程度に入れる、もしくは重視されていない直感センサーを刺激するようなコンテンツを書かないようにすることをおすすめします。
パルス型消費行動を意識し、商品とユーザーの傾向を理解したうえでコンテンツを書いていくという提案であれば、コンテンツマーケティングの価値をあまり理解してくれない上司からの理解と期待を得られるのではないでしょうか。
コンテンツマーケティングには文章力だけでなく知識と熱意が必要
いざコンテンツを作るとなると、プロのライターによって分かりやすく面白く書いてあるものでなければいけないと考えてしまうかもしれません。
しかし、最低限の文章力は必要になりますが、大切なのはその商品についての知識と熱意です。コンテンツに込めた熱量がユーザーの感情を動かし、動かされた感情が振り子のように揺れる結果、購入に導かれていくようなイメージをもってコンテンツを作っていくことが大切です。
ライターに記事を依頼せず自身で記事を作成してみようと考えたときに、どの程度の文章力が「最低限の文章力」になるのかというところが気になる点ではないでしょうか。
人間もGoogleのロボットもコンテンツを評価する際に、学校の先生のように厳しく日本語の文法をチェックすることはありません。
文章の全体を通して、伝えたいメッセージが読み手に伝わっていればひとまずOKと考えても良いと思います。
そのうえで大切なのは、ユーザーがコンテンツを読んだ時に面白い!と思ったり参考になった!と思うかどうかです。
自分で始めてみようと思う方は、難しく考えすぎず商品への情熱や、お客様との日ごろのやり取りで感じることなどをコンテンツとしてまとめてみると良いかもしれません。
そうはいっても、実際に文章を書こうとパソコンの前に座ると全く手が進まないというパターンはとてもよく起こります。
そのようなときには外注にコンテンツの作成を依頼したほうが無駄な時間をロスせずに集客が出来てトータルでみてプラスになるかもしれません。
プロのライターはその分野に関する知識と文章力をベースに持ち、その商品に関してどのような疑問を持っている人が多いのかといったリサーチを行ったうえで記事を作成することが一般的です。しかし中にはネットで収集しただけの内容の薄い記事を作成されたというケースもあります。
そういったことがないように、ライターに記事を依頼する際には、そのライターが商品の分野において専門的な知識があるかどうかや、記事の質において信頼できるかどうかを確認しておくと失敗がないかもしれません。
コンテンツマーケティングを実践している企業は非常に多く、インターネット上には日々様々なコンテンツが登場します。
そんな中でコンテンツマーケティングを始める場合、後発であることのデメリットももちろんありますが、ライバルやユーザーのニーズのリサーチをしっかり行って質の良いコンテンツを作れば必ず良い結果に繋がります。
上司に伝えるための6つの方法はコンテンツマーケティングの基本でもあります。
良いコンテンツを作成し、上司にGOサインを出したことを後悔させない成果を出していけるよう頑張ってください。