並列の「〜たり」は、「〜たり、たり」と繰り返して使います。
- ×今日は文章を書いたり、イラストを書いた。
上記はありがちな間違いです。正しくは次のように書きます。
- ◯今日は文章を書いたり、イラストを書いたりした。
意外と間違えて使っている人が多い表現です。
今回は、「〜たり」の正しい使い方と言い換え表現をわかりやすく解説いたします。
目次
接続助詞「〜たり」の正しい使い方
「〜たり」は、よく使われる言い回しですが、使い方に気を付ける必要があります。
「〜たり、たり」と繰り返すべき場合と、「〜たり」と1回だけで使える場合があります。
【「〜たり」の使い方】
並列:「〜たり、たり」と2回セットで使ったり、3回セットで使ったりする
「泣いたり、笑ったりする」
例示:「〜たり」は1回だけで使う
「車にひかれたりしたら大変だ」
つまり、次の場合には、「〜たり、たり」とセットで使うのが正しい使い方です。
【並列の「〜たり、たり」はセットで使う】
動作や状態を並列して表す
「映画を観たり、本を読んだりする」
反対の意味の語を2つ並べて、その動作・状態が交互に行われていることを表す
「暑かったり、寒かったり…」
一方、例示の「たり」は、単独で使います。
ある動作や状態を例示して、他の可能性も類推させる場合です。
次のように使います。
【例示の「たり」は1回で使う】
「たり」を1回だけ使って、ほかにも何かあることを類推させる
「日曜日は家で掃除したりする」
「おわびに手紙を書いたりしたが無反応だ」
「日曜日は家で掃除する」では、「掃除する」ことだけが表されています。
しかし、「日曜日は家で掃除したりする」の場合は、掃除のほかにも何かをする可能性を推しはかることができます。
それでは、それぞれ詳しく確認していきましょう。
【2回セット】並列の「たり、〜たり」
「泣いたり笑ったり」のように、ある事柄を並列して述べる場合には、「たり」は繰り返して使う必要があります。
- ☓雨の休日は、掃除をしたり料理をして過ごします。
上の例文は間違いです。
正しくは次のように述べます。
- ◯雨の休日は、掃除をしたり料理をしたりして過ごします。
後ろの「たり」を忘れないようにしましょう。
例文で確認してみましょう。
【例文:間違った使い方→正しい使い方】
×健康のために、ヨガをしたり筋トレをします。
↓修正
◯健康のために、ヨガをしたり筋トレをしたりします。
×放課後はおやつを食べたり宿題をします。
↓修正
◯放課後はおやつを食べたり宿題をしたりします。
×今日は銀行に行ったり郵便局に行きます。
↓修正
◯今日は銀行に行ったり郵便局に行ったりします。
×旅先ではローカルフードを食べたりお酒を飲むのが楽しみです。
↓修正
旅先ではローカルフードを食べたりお酒を飲んだりするのが楽しみです。
くれぐれも、後ろの「たり」を忘れないようにしましょう。
「〜たり」は3回使ってもよい
並列の「〜たり」は通常は2回使用ですが、3回繰り返して使うこともできます。
【例文:「〜たり」を3回使う】
夏の別荘では、釣りをしたりテニスをしたり泳いだりして過ごす。
仕事中は、おしゃべりしたり居眠りしたり動画を観たりするのは、厳禁です。
工場では、機械の点検をしたり整備をしたりメンテナンスをしたりします。
調理方法は、煮たり焼いたり蒸したりします。
後ろの「〜たり」が抜け落ちるのはなぜ?
並列の「たり」の後ろの「たり」が抜け落ちてしまうことが多いようです。
近頃では、アナウンサーの方の解説でも、後ろの「たり」が抜けてしまうことがあると指摘されてもいます。[注1]
並列の「たり」を使う場合には、後ろの「たり」が抜けていないか、注意して見直してみましょう。
また、そういったミスを未然に防ぐためには、文章は短く簡潔であるほうがよいでしょう。
「たり」を2回使うべきと知っていても、文章が長くなると後ろの「たり」を忘れてしまいがちです。短く書けば、そういったリスクを避けられます。
[注1]NHK放送文化研究所/放送現場の疑問・視聴者の疑問/「〜たり〜たり」
【1回だけ】例示と可能性をほのめかす「〜たり」
「たり」は、1回だけで使用できる場合もあります。
- 例示の「たり」
- 可能性をほのめかす「たり」
1つずつ確認してみましょう。
例示の「たり」
例示の「たり」は、ある例をあげて、ほかの事柄もあることを暗示するための「たり」です。
- 今日は本を読みたい
- 今日は本を読んだりしたい
上の文と下の文の意味には違いがあります。
「たり」がない上の文からは、「本を読む」ほかにしたいことがある意は読み取れません。
下の文では、「本を読むほかにもやりたいことがある」という意が読み取れます。
例示の「たり」は、このように、ほかにも何かあることを暗示させるために使います。
【例文:例示の「たり」】
明日は家の掃除をしたりしたい。
暗記するためにはノートに書いたりする必要があります。
ニュースを観たりするといいですよ。
朝はパンを食べたりします。
可能性をほのめかす「たり」
「もしかして〜かもしれない」という可能性をほのめかす「たり」もあります。
- 昨日のテスト、100点だったりしてね。
可能性をほのめかす「たり」は、主に話し言葉で使われる表現です。
【例文:可能性をほのめかす「たり」】
もしかして彼女を好きだったり。
元旦も出勤だったりして。
太ってたりしたらどうしよう。
偶然お会いしたりして。
話し言葉に多いカジュアルな言い回しであるため、文章に使用する場合は、適切であるかどうか注意しましょう。
「〜たり」の言い換え表現
「〜たり」を別の言葉に言い換えることもできます。
言い換え表現を覚えておくと、文章の雰囲気に合わせて選択できます。表現の幅が広がります。
次の2つの方法があります。
- 動詞を名詞にする
- 「など」を使う
具体的に見ていきましょう。
動詞を名詞にする
動詞を名詞にしてすっきり表現する方法があります。
【例文:動詞を名詞にする】
本を読んだり音楽を聴いたりするのが趣味です。
↓言い換え
読書と音楽鑑賞が趣味です。
5人以上で食べたり飲んだりしないでください。
↓言い換え
5人以上で飲食しないでください。
など
「など」を使って言い換えることもできます。
【例文:「など」を使って言い換える】
本を読んだり音楽を聞いたりするのが趣味です。
↓言い換え
本を読むことや音楽聴くことなどが趣味です。
5人以上で食べたり飲んだりしないでください。
↓言い換え
5人以上で食べることや飲むことなどをしないでください。
【注意】「〜たりなど」は冗長
「たり」を使う場合には、注意するポイントがあります。
「たり」の後に余分な語をつけないようにしましょう。「〜したりなど」のように書くと冗長な印象です。
【例文:〜たりなどは冗長】
×本を読んだり音楽を聞いたりなどするのが趣味です。
↓言い換え
◯本を読んだり音楽を聞いたりするのが趣味です。
◯本を読むことや音楽聴くことなどが趣味です。
◯読書や音楽鑑賞が趣味です。
×5人以上で食べたり飲んだりなどしないでください。
↓言い換え
◯5人以上で食べたり飲んだりしないでください。
◯5人以上で食べることや飲むことなどをしないでください。
◯5人以上で飲食しないでください。
「〜たりなど」の「など」は、なくても意味がわかります。つまり余分な語です。
余分な語は廃したほうが文章がすっきりします。
「〜たり」を使うときには「〜たりなど」にしないよう気をつけましょう。
並列では後ろの「〜たり」を忘れないように!
並列の「たり、〜たり」は2回セットで使います。後ろの「たり」を忘れないようにしましょう。
例示や可能性をほのめかす「たり」は単独で使用できます。
「たり」が文章全体の雰囲気にそぐわないようであれば、ご紹介したほかの表現に言い換えてみましょう。