オノマトペは、話し言葉でも書き言葉でも、非常に身近な存在です。「ワンワン吠える」「キラキラ光る」なんて良く使いますよね。
オノマトペという言葉は聞いたことがなくても、日常生活でそれと知らずに使っているものです。
日本語のオノマトペは4500種類もあり、豊かに文章を装飾するためには3つの技術が必要です。
こちらの記事では、オノマトペの概要と一覧をご紹介し、オノマトペの上手な使い方をお伝えします。
目次
オノマトペとは擬音語と擬態語の総称
オノマトペは、物音、生き物の鳴き声、状態、様子を表す言葉の総称です。
オノマトペには擬音語(ぎおんご)と擬態語(ぎたいご)の2種類があります。
「擬音語」とは物音を言語化して表現した言葉
オノマトペのひとつである擬音語とは、虫や動物の鳴き声、さまざまな物音を言葉で表現したものです。
雨が降る音のザーザー、風が吹く音のビュービュー、猫が鳴く声のニャーニャー、などは代表的な擬音語です。
同じ文章でも擬音語を使うことでよりイメージしやすくなります。
まずはオノマトペの擬音語を使わない文章を読んでみましょう。
【例文:擬音語を使わない表現】
雨が激しく降っている。
これを、オノマトペの擬音語を使って書き換えてみると下記のようになります。
【例文:擬音語を使った表現】
雨がザーザー降っている。
「ザーザー」という擬音語が使われていると、雨の降る音や様子をより具体的にイメージできますね。
オノマトペは直感的で記憶に残りやすく、幼児が言葉を覚えるプロセスで最初に発語します。
幼児にも理解しやすいことからわかるように、次の場合に効果的です。
- 固い文章を柔らかくしたいとき
- 文章をイメージしやすくしたいとき
また、国や地域によって人々の聞こえ方が違うことから、同じ物音についても異なる擬音語が発達しました。
たとえば、鶏の鳴き声は、日本語では「コケコッコー」ですが、アメリカでは「クックアドゥードゥルドゥー」です。
また、豚の鳴き声は、日本語では「ブーブー」ですが、英語では「オインク、オインク」です。
全然違うのがわかりますね。後述の「外国語オノマトペ一覧」でご覧ください。
副詞や形容動詞を使って状態を表現するよりも、オノマトペを使うほうが、より柔らかく親しみやすい表現になります。
「擬態語」とは物事の様子や状態を音で表現した言葉
擬態語は、実際には音がしない物事の様子や心の状態を、音で表現したものです。
なめらかな赤ちゃんの肌を「スベスベ」と表現したり、星が光る様子を「キラキラ」という表現は、擬態語です。
日本語の擬態語の豊富さは、日本人の豊かな感性を表現しています。
擬態語には大きくわけて「物事・人の様子や状態を表現する擬態語」と「心情を表現する擬態語」があります。
物事・人の様子や状態を表現する擬態語
擬態語を使わない文章と、擬態語を使った文章を読み比べてみましょう。
【例文:擬態語を使わない表現】
彼は黙って仕事に精を出しています。
【例文:擬態語を使って表現】
彼は黙々(もくもく)と働いています。
擬態語を使わずに「黙って仕事に精を出している」と表現しても、そのままの意味は伝わります。でも、「黙々(もくもく)と働いている」と表現したほうが、彼がどんな様子で仕事をしているのかが、より具体的に頭の中でイメージできますね。
心情を表現する擬態語
擬態語のオノマトペには、心情を表現する言葉もあります。
擬態語を使わない文章と、擬態語を使った文章を読み比べてみましょう。
【例文:擬態語を使わずに心情を表現した場合】
来月の旅行のことを考えると期待で胸がふくらみます。
【例文:擬態語を使って心情を表現した場合】
来月の旅行のことを考えるとワクワクします。
どちらもよい表現ですが、擬態語「ワクワク」を使ったほうが、より生き生きと、書き手の胸が高鳴る様子が伝わります。
オノマトペの擬態語を上手に使えるようになれば、心情表現の幅も広がります。
日本語には痛みを表現する擬態語が豊富
さらに、日本語には痛みを表現する擬態語が数多くあります。
- 頭痛: ガンガン、ズキズキ
- 腹痛: チクチク、シクシク、キリキリ
- 歯痛: ズキズキ、ジンジン
ファイザー株式会社が5,150名を対象に行った調査によると、自分の痛みを医師に伝えるときにオノマトペを使用すると答えた方は61%でした。そのうち、84.8%の方が、オノマトペを使う理由として、「医師に痛みの説明が伝わったと実感するため」と回答しています。[注1]
痛みという主観的な感覚を表現する方法としてもオノマトペが役立つことを示しています。
[注1]ファイザー株式会社/痛み治療に対する医師と患者の意識比較調査
オノマトペの語源は古代ギリシャ語
オノマトペは、擬声語(擬音語・擬態語の総称)を意味するフランス語「onomatopee」をカタカナ表記した言葉です。
オノマトペと聞くと、何かの略かな?と思ってしまいそうですが、実は日本語ではなくフランス語なのです。独特の語感なのも理解できます。
さらに、フランス語の「onomatopee」の語源は、「onomatopoiia」という古代ギリシャ語と言われています。オノマトポイーアといった発音をします。
「onoma(名前)」と「poein(作る)」という2つの言葉が足されてできた言葉と言われています。
そんなわけで「onomatopoiia」は「言葉を作る」を意味します。
古代ギリシャ語「onomatopoiia(オノマトポイーア)」が広まり、英語の「onomatopoeia(オノマトピア)」やフランス語の「onomatopee(オノマトペ)」へと変化しました。
古代ギリシャ語(onomatopiia)→フランス語(onomatopee)→日本語(オノマトペ)と、繋がってきたわけです。
日本語のオノマトペ一覧
日本語のオノマトペの歴史は古く、「古事記」「日本書紀」「万葉集」にもオノマトペが見つけられます。
「古事記」の冒頭では、イザナギノミコトとイザナミノミコトが天の浮橋に立ち、ほこで海原をかき回すシーンがあります。ここで「こをろこをろ」という表現が出てきます。
日本最古の文献にも記述があるオノマトペ。それだけに実に4500語もの数があります。
とくに現代日本で親しまれているオノマトペを一覧でご紹介します。
擬音語のオノマトペ一覧
擬音語のオノマトペを見てみましょう。
【動物や虫の鳴き声】
オノマトペ(擬音語) | 意味 |
ワンワン | 犬の鳴き声 |
メーメー | 羊の鳴き声 |
コケコッコー | 鶏の鳴き声 |
ニャーニャー | 猫の鳴き声 |
ミーンミーン | 蝉の鳴き声 |
【自然界の音】
オノマトペ(擬音語) | 意味 |
ザーザー | 雨が激しく降る音 |
ポタポタ | しずくが垂れる音 |
ビュービュー | 風が強く吹く音 |
ゴロゴロ | 雷が鳴る音 |
さらさら | 木の葉が触れ合う音 |
【動作の音】
オノマトペ(擬音語) | 意味 |
チン | 電子レンジの音 |
コンコン | ドアを叩く音 |
ミシミシ | 床や壁がきしむ音 |
パチン | 電気をつけたり消したりする音 |
ガシャン | ものが割れる音 |
擬態語のオノマトペ一覧
擬態語のオノマトペを見てみましょう。
【人や物事の状態】
オノマトペ(擬態語) | 意味 |
ふらふら | 体に力が入らずよろける様子 |
どんどん | 物事がはかどる様子 |
うろうろ | 動き回る様子 |
コトコト | スープなどを煮込む様子 |
きらきら | 光り輝く様子 |
つるつる | 表面がなめらかな様子 |
【心情】
オノマトペ(擬態語) | 意味 |
わくわく | 期待に胸をふくらませる気持ち |
うんざり | つくづく嫌な気持ち |
がっかり | 落胆した気持ち |
いらいら | 不快で神経が高ぶるさま |
うきうき | 心が弾むさま |
うっとり | 心を奪われてぼうっとする |
外国語のオノマトペ一覧
外国語にももちろんオノマトペはあります。
こちらでは英語のオノマトペとフランス語のオノマトペをご紹介します。
同じものを表現しても、国によって異なる響きなのが興味深いです。
【英語のオノマトペ】
オノマトペ
(英語) |
日本語 | 意味 |
bow bow | ワンワン | 犬の鳴き声 |
meow meow | ニャーニャー | 猫の鳴き声 |
clap | パチパチ | 拍手の音 |
bang | バン | 強くぶつかる音 |
bling bling | ピカピカ | 輝くさま |
murmur | さらさら | 川が流れる様子 |
blab | べらべら | しゃべる様子 |
【フランス語のオノマトペ】
オノマトペ
(フランス語) |
日本語 | 意味 |
ouah ouah | ワンワン | 犬の鳴き声 |
Miaou miaou | ニャーニャー | 猫の鳴き声 |
plic ploc | ポタポタ | 水滴が落ちる音 |
glou glou | ゴクゴク | 飲料を飲む音 |
Ding dong | キンコンカンコン | 鐘の音 |
atchoum | ハクション | くしゃみの音 |
gla gla | ブルブル | 震える音 |
オノマトペを使って文章を装飾する3つの技術

【例文:オノマトペの副詞と形容動詞】
副詞: 頭がズキズキと痛む
形容動詞: 頭の痛みはジンジンだ
このようにオノマトペだけで話が伝わることもあります。
そのため、オノマトペを上手に使いこなせば、長過ぎる文章を短くしたり、かしこまった文体を柔らかい雰囲気へと変えられます。
オノマトペを使いこなすために、3つの技術をご説明します。
技術1. 文章が固いときに織り交ぜる
文章が固いときや、平坦な印象があるときに、オノマトペを織り交ぜてみましょう。
リズミカルな擬音語や擬態語が入ることで、文章の印象にメリハリが生まれます。
例文で比較してみましょう。
【例文:オノマトペを使わない文章】
生活に瞑想を取り入れることで、不快で高ぶった神経を鎮めて熟睡できます。
【例文:オノマトペを使った文章】
生活に瞑想を取り入れることで、イライラを鎮めてぐっすり眠れます。
オノマトペを使うことで、親しみやすい文章になります。
技術2. カタカナとひらがなを使い分けてみる
文脈によって、オノマトペのカタカナとひらがなを使い分けてみましょう。
カタカナの方がしっくりすることもあれば、ひらがなの方が馴染むこともあります。
こちらも例文で比較してみましょう。
【例文:オノマトペをカタカナで表記した場合】
外はサクサク、中はモチモチの食感を楽しめます。
【例文:オノマトペをひらがなで表記した場合】
外はさくさく、中はもちもちの食感を楽しめます。
どちらが正解ということはありません。感性を磨いて、自分の文章に馴染むオノマトペを探してみましょう。
技術3. 長い文章を短くしたいときに使う
文章が長く思い印象があるときに、副詞や形容動詞をオノマトペにしてみましょう。
形容詞や副詞を多用して説明しようとすると、冗長な文章になってしまうこともあります。オノマトペを使うと、文章を短く軽妙にできます。
風に木の葉が揺れている様子を描写する場合を比較してみましょう。
【例文:オノマトペを使わない場合】
木の葉が左右に揺れながら舞い落ちます
【例文:オノマトペを使った場合】
木の葉がひらひら舞い落ちます
この場合にはやはりオノマトペ「ひらひら」を使って書いた方が伝わりやすいですよね。
「左右に揺れながら」が「ひらひら」というたった4文字でおさまります。
長い文章はなかなか読み手に読んでもらえないこともあります。適度にオノマトペを取り入れてみましょう。
形容詞にオノマトペオノマトペを足すと、より具体的な表現ができます。
形容詞について、記事ブログ内にわかりやすく解説した記事があります。こちらに、「形容詞+オノマトペ」による表現方法をお伝えしています。より表現力をアップさせたいとお考えの方は、こちらもご覧ください↓
オノマトペの使いすぎに注意
このように効果的なオノマトペですが、使いすぎには注意しましょう。
あまりに乱発すると、文章が幼稚な印象になってしまい、締まりがなくなることもあります。
例文で確認してみましょう。
【例文:オノマトペを使い過ぎた場合】
カンカンに怒った弟は引き出しをガラッと開けた後、プリントをサッと取り出してビリビリ破きました。
例文は、やや稚拙な印象を受けます。絞って使うことにより、よりオノマトペの効果は発揮されます。
オノマトペで生き生きした文章を
動物の鳴き声が国によって違うように、オノマトペはその国や時代などの文化背景の影響を大きく受ける表現です。
時代の変遷とともに、かつてよく使われていたオノマトペが死語になることもあれば、新しいオノマトペが生まれることもあります。
新聞やテレビ、インターネットニュースなどに着目していると、新しく使われはじめたオノマトペに気がつくこともあるでしょう。
新しいオノマトペも随時取り入れて、文章に時代の空気を取り入れてみてもいいですね。