形容詞とは、物事の状態や性質、人の感情を表す語句です。
- 涼しい 風 が 吹く
- 美しい 星 が 瞬く
上記の文章で、形容詞は「涼しい」と「美しい」です。
形容詞は「涼しい」「美しい」など、言い切りの形が「い」で終わります。
「どんな風か」「どんな星か」など、形容詞によってその特徴が表現されます。
形容詞を数多く知り、的確に選ぶことは、表現を豊かに洗練させてくれます。
ときには、形容詞を上手に言い換えて表現することも必要でしょう。
こちらでは、形容詞の基礎知識を簡単にわかりやすくご説明いたします。
さらに、表現を豊かにするための3つポイントもお伝えいたします。
目次
【形容詞とは】物事の状態や人の感情を表す語句

形容詞とは、物事の状態や人の感情を表す語句のことです。
「青い」「丸い」「嬉しい」のように、言い切りの形が「い」で終わる特徴があります。
形容詞の性質をまとめてみます。
【形容詞の性質】
- 言い切りの形が「い」で終わる
- 活用する
- 自立語
- 単独で修飾語になれる
- 単独で述語になれる
例文で見てみましょう。
【例文:形容詞(状態を表す修飾語)】
人々の心を 明るく照らす。
「明るく」が形容詞で、動詞の「照らす」を修飾しています。「どのように」照らしているのかを表します。
「明るく」は、言い切りの形が「明るい」 です。
また、形容詞は述語にもなります。
【例文:形容詞(状態を表す述語)】
道のりは 遠かった。
述語の「遠かった」が形容詞で、「どのような」道のりだったかを表しています。
「遠かった」は、言い切りの形が「遠い」です。
形容詞には、状態だけではなく、人の感情を表す言葉もたくさんあります。
【例文:形容詞(人の感情を表す】
課題を 達成できて とても 嬉しい。
「嬉しい」は人の感情を表します。感情を表す形容詞は、ほかにも、「悲しい」「悔しい」「楽しい」「愛しい」などがあります。
ほかの言葉を修飾して内容を詳しく説明する言葉を修飾語といいます。形容詞も修飾語に含まれます。修飾語については、記事ブログ内に私がくわしく解説した記事があります。修飾語を効果的に使う4つのコツなど、とてもわかりやすくまとめてあります。ぜひ、こちらも参考にしてみてください↓
属性形容詞と感情形容詞【一覧】

形容詞には、物事の性質や状態を表す「属性形容詞」と人の感情を表す「感情形容詞」があります。
【属性形容詞と感情形容詞】
属性形容詞 | 感情形容詞 |
物事の性質や状態を表す | 人の感情・感覚を表す |
「大きい・小さい」
「広い・狭い」 「高い・低い」 「長い・短い」 「重い・軽い」 「多い・少ない」 「強い・弱い」 「遠い・近い」 「速い・遅い」 「新しい・古い」 「美しい・醜い」 「白い・青い」 「丸い・四角い」 「固い・柔らかい」 「厚い・薄い」 「深い・浅い」 「賢い・愚かしい」 「親しい・よそよそしい」 「濃い・薄い」 「尊い・卑しい」
|
【感情】
「楽しい・辛い」 「嬉しい・悲しい」 「怖い・恐ろしい」 「愛しい・憎い」 「好ましい・嫌い」 「切ない・悩ましい」 「悔しい」 「誇らしい」 「面白い・つまらない」
【感覚】 「おいしい・まずい」 「暑い・寒い」 「眠い」 「きつい」 「甘い・苦い」 「熱い・冷たい」 |
属性形容詞
属性形容詞は、物事の性質や状態を表します。
属性形容詞が表す「属性」は、下記のようにさまざまです
【属性形容詞】
- 形 : 「丸い」「四角い」
- 色 : 「青い」「赤い」「白い」「黄色い」「黒い」
- 重量: 「重い」「軽い」
- 長さ: 「長い」「短い」
- 厚み: 「厚い」「薄い」 など
感情形容詞
感情形容詞は、人の感情や感覚を表します。
感情形容詞は、下記のような喜怒哀楽のほか、愛憎や恐怖など、さまざまな気持ちを表現します。
【喜怒哀楽を表す感情形容詞】
- 喜: 「嬉しい」
- 怒: 「いまいましい」
- 哀: 「悲しい」
- 楽: 「楽しい」
また、感情形容詞は、人が感じた感覚も表します。
【感覚を表す感情形容詞】
- 身体の感覚: 「暑い」「寒い」「痛い」
- 味覚: 「おいしい」「まずい」「甘い」「辛い」
- 生理的感覚: 「眠い」
形容詞の活用は1種類
形容詞の活用は次の1種類だけです。次の図のように、形容詞はすべて同じ活用をします。
命令形はありません。
基本形 | 語幹 | 未然型 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 |
涼しい | すずし | かろ | かっ
く う |
い | い | けれ |
美しい | うつくし | かろ | かっ
く う |
い | い | けれ |
用法 | ウ | タ
ナイ・ ナル |
言い切る | トキ | バ |
形容詞の音便
形容詞は、「ございます」「存じます」が後にくるときに、語尾が変化します。
【例文:形容詞のウ音便】
わたくしが 悪く ございました。
↓
わたくしが 悪う ございました。
とても 美しく ございます。
↓
とても 美しゅう ございます。
上記の例文のように、形容詞「悪く」が「悪う」に語尾が変化します。これを形容詞の「ウ音便」を呼びます。
「美しく→美しゅう」のように、語幹が変化することもあります。
表現力をアップ!形容詞の使い方3つのポイント

形容詞は、むやみやたらと使っては、表現が稚拙になってしまいます。
- すごい 雨が 降っている
上記の文章は、やや稚拙な印象があります。
しっかり伝えるなら言い換えてみましょう。
- 激しい 雨が 降っている
「すごい雨」を「激しい雨」に言い換えるだけでも、文章の印象が変わります。
ときには、形容詞での表現をより具体性のある別の言葉に置き換えてみましょう。
それでは、形容詞を上手に使って表現力をアップさせる3つのポイントをご紹介いたします。
ポイント1. 形容詞「多い・少ない」は数量で表してみる

よく見かけるのが、形容詞「多い」「少ない」などを使った、数が曖昧な文章です。
「かなり多くの人」と書かれていても、人によってイメージする数は違います。
これを具体的な数量にするだけでも、文章わかりやすく様変わりします。
例文で見てみましょう。
【例文:数量が曖昧な形容詞】
今日、出勤する人は かなり少なかった。
「かなり少ない」といっても、人によって少ないと思う基準は異なります。
数量を表す形容詞は、意味が曖昧で読み手に誤解される可能性もあります。
上の例文に数量を入れてみます。
【例文:数量で表した文章】
今日、出勤する人は26人中3人でした。
イメージしやすくなりますね。
金額も、できるだけ具体的に示したほうがよいでしょう。
【例文:金額が曖昧な形容詞】
あの店の 本革の ランドセルは かなり高い です。
「かなり高い」では、高いのだろうということがぼんやりとわかるだけで、イメージが湧きませんね。
【例文:具体的な金額で表した文章】
あの店の 本革の ランドセルは 8万円 です。
形容詞の「高い」を具体的に「8万円」という数値にしたことで、「それは高いランドセルだな」と読み手が納得できます
とくに、金額の高い、安いは、人によって感覚が異なります。
「3万円」を高いと思う方もいれば、10万円を安いと感じる方もいます。
それぞれが独自の金額を思い浮かべてしまうと、誤解が生じます。
やはり、形容詞を使うよりも、具体的な金額で表しましょう。
数量で具体的に示すことにより、スムーズに理解できる文章になります。
ポイント2. 「かわいい」「すごい」「やばい」をやめてみる

「かわいい」「すごい」「やばい」は、話し言葉でよく用いられます。
しかし、文章中で使うのは、いささか安易で、稚拙な印象を与えてしまいかねません。
「かわいい」はもっと具体的に表現できる
「かわいい」は好ましいものを表現したいときに使えるとても便利な言葉です。
デジタル大辞泉によると、下記の意味があります。
【かわいい:可愛い】
- 小さいもの、弱いものなどに心引かれる気持ちをいだくさま。
- 物が小さくできていて、愛らしく見えるさま。
- 無邪気で、見組めない。すれてなく、子供っぽい。
- かわいそうだ。ふびんである。
「かわいい」は、本来、小さいものや弱いものを見て愛おしいと感じる気持ちを表現する言葉です。
小動物や、小さなアクセサリーなどによく使われますね。
しかし、「かわいい」に頼り過ぎてしまうと、表現が単調だったり、曖昧だったりと、伝える力に欠ける文章になってしまいます。
【例文:「かわいい」を使って表現】
こちらは、当店でも人気の、とてもかわいい イヤリングです。
上記の例文では、どんなイヤリングか、説得力に欠けます。具体的に表現してみましょう。
【例文:「かわいい」をほかの言葉で表現】
こちらは、当店でも人気の、ピンク色の和紙を紫陽花の形に固めたイヤリングです。やさしい風合いがとても上品な印象です。
あえて「かわいい」を封印して表現してみると、どんなイヤリングか、より具体的にイメージできます。
「すごい」は「どうすごいのか」を書く
「すごい」も多用される形容詞ですが、意味の幅が広く、具体性に欠けます。
文章表現では、「すごい」の中身まで書くように心がけてみましょう。
【例文:形容詞「すごい」を使って表現】
高校生クイズの王者は すごい。
それは確かにすごいでしょうが、表現が足りない印象です。
【例文:「すごい」をほかの言葉で表現】
高校生クイズの王者は 知識量が多く、幅広い分野の問題すべてに答えられる。
これで、「どうすごいのか」がわかります。
文章を書くとき、まずは形容詞「すごい」で書いてみてもかまいません。その後、「このすごいはほかの表現にできるかな」と考え、工夫してみてください。
地道な工夫の積み重ねは、ライターの皆さんにはきっと楽しい作業となるでしょう。
「やばい」はやめてみる
「やばい」は「危険や不都合な様子」を意味する言葉です。
しかし、近年では、マイナスの意味ばかりでなく、おいしいものを食べたときにも「やばい」「やべえ」と言うこともあります。
デジタル大辞泉によると下記のように示されています。
【やばい】
危険や不都合な状況が予測されるさま。あぶない。
◆若者の間では、「最高である」「すごくいい」の意にも使われる。
◆高ぶる感情を上手く説明できないときに若者がしばしば使う言葉。
本来の意味にプラスして、別の意味も加わり、複数の状況に使われます。
- 危険
- 最高
- 上手く説明できないが心が動いた
例文で見てみましょう。
【例文:「やばい」を使って表現】
- 地震で 本棚が倒れてきて やばかった。
- 駅前の 新しいラーメン屋が やばい。
- この前の ライブは やばかった。
上記の例文でも、心が揺らされる状況であるのはよくわかります。しかし、文章表現をランクアップさせるなら、「やばい」はやめてみましょう。
【例文:「やばい」をほかの言葉で表現】
- 地震で 本棚が倒れてきて、下敷きになるところを間一髪で逃れた。
- 駅前の 新しいラーメン屋がとてもおいしいと評判だ。
- この前の ライブは 感動的だった。
ほかにも、
「地震で本棚が倒れてきて、頭に本が当たって危ないところだった」
「駅前の新しいラーメン屋は豚骨スープが濃厚でおいしいと評判だ」
「この前のライブは曲とステージの演出が巧みで胸がいっぱいになった」
など、「やばい」をやめて、状況や気持ちを具体的に伝えましょう。
抽象的で曖昧な形容詞は、より具体的な表現ができないか、常に意識してみましょう。
まずは形容詞でざっくり表現し、その後、言い換えができないか考えてみるとよいですね。
ポイント3. 形容詞にオノマトペを足して表現してみる

「おいしい」「痛い」などの形容詞は、もっと具体的に表現できないか悩むことがあります。そこで活躍するのがオノマトペです。
オノマトペは「擬音語・擬態語」の総称です。「ワンワン吠える」「キラキラ光る」のように、普段からよく使われます。
形容詞にオノマトペをプラスすることで、より具体的な表現ができます。
「おいしいパンケーキ」は「ふわふわした甘いパンケーキ」に
「おいしい」は、味がよいことを表す便利な表現です。
でも、「おいしい」だけでは、説明足らずな印象もあります。そんなときは、オノマトペをプラスして、具体的に表現してみましょう。
【例文:形容詞「おいしい」を使った表現】
とても おいしいパンケーキ
すごく おいしい トースト
スープにからむ おいしい 麺
【例文:形容詞にオノマトペをプラスした表現】
ふわふわ 甘い パンケーキ
カリカリ 香ばしい トースト
スープにからむ もちもち つるつる 喉越しのよい 麺
食感を表現するオノマトペをプラスすることで、どのようにおいしい食べ物なのか、読み手に伝えられます。
「頭が痛い」は「頭ががんがん痛い」に
「痛い」は、身体や心に受けた苦痛の感覚を伝える便利な表現です。
「痛い」だけでは、やはり説明足らずな印象です。
オノマトペをプラスして具体的に表現してみましょう。
【例文:形容詞「痛い」を使った表現】
頭が 痛い
お腹が 痛い
喉が 痛い
【例文:形容詞にオノマトペをプラスした表現】
頭が がんがん 痛い
お腹が ちくちく 痛い
喉が いがいが 痛い
個人的な感覚である痛みをパッとわかりやすく伝えるのは難しいものです。
「お腹が痛い」だけではどのような痛みかわかりにくいです。だからといって、「お腹が それほど激しくはないが さきほどから繰り返し痛む」というのも、まわりくどい印象があります。
そんなときには、オノマトペの出番です。「お腹がちくちく痛い」と表現したほうがすぐに伝わります。
記事ブログ内に、オノマトペについて私が詳しく解説した記事があります。オノマトペを使って文章を装飾する3つの技術のほか、オノマトペの概要・語源・一覧など、知っておきたい知識が満載です。ぜひ、こちらもご覧ください↓
英語の形容詞(adjective)は名詞を修飾する
英語の形容詞は、名詞を修飾します。
用法は2つです。
- 限定用法 : 形容詞+名詞
- 叙述用法 : 〇〇は△△(形容詞)である
まず、限定用法を例文で見てみましょう。
【例文:形容詞の限定用法(形容詞+名詞)】
abig fish (大きい 魚)
beautiful stars(美しい 星)
「形容詞+名詞」の順番で、形容詞が名詞を修飾します。とてもシンプルですね。
次に、叙述用法を見てみましょう。
【例文:形容詞の叙述用法(〇〇は△△(形容詞)である】
you are so sweet. (あなたはとても優しい)
The cat is so big. (その猫はとても大きい)
叙述用法は、「〇〇は△△(形容詞)である」という使い方をします。限定用法は1つの名詞を修飾しますが、叙述用法は文章全体の意味を表します。
古典の形容詞
古典の世界にも形容詞の雅びやかな表現が見られます。
古典の形容詞 | 意味 |
をかし | 素晴らしい |
うるはし | きちんとしている |
よろし | 悪くはない |
ありがたし | めったにない |
はづかし | 立派だ |
うつくし | かわいい |
らうたし | かわいい |
すさまじ | 興ざめだ |
「ありがたし」は、古典では「めったにない」という意味です。また、「うつくし」は「かわいい」という意味です。
現代の言葉と似ていても、意味が異なる形容詞があることに注意しましょう。
より具体的に表現してイメージしやすい文章を作成しよう
形容詞は「美しい」「悲しい」など、物事や感情を説明してくれるとても便利な言葉です。
しかし、性質上どうしても意味が広くなり、曖昧になる傾向があります。
伝えたい事柄が読み手の目に浮かび、心に響く文章を書くためには、「もっと伝わる表現はないか」を常に意識し、地道な努力を重ねていくしかありません。
- 的確な形容詞を選ぶ
- 限定的な意味の形容詞を選ぶ
- 具体的な表現に言い換えてみる
- 形容詞にオノマトペなどをプラスしてみる
形容詞に安易に頼ることなく、上記を心がけてみましょう。
物事を具体的に伝え、読み手がイメージしやすい文章を目指してみてください。