副詞とは、おもに用言(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾する品詞のことです。
- 彼はとても優しい
「とても優しい」の「とても」は、形容詞「優しい」を修飾する副詞です。
「とても」がつくことで、程度がわかります。
副詞には、表現を豊かにしてより詳しく伝える大切な役割があるのです。
副詞には「活用しない」「自立語である」という特徴もあります。
今回は、知っているようで知らない副詞の基礎知識をおさらいしてみましょう。
品詞の知識を身につけると、文章の間違いを見つけたり、正しい言い方に直したりするのがスムーズになります。
より豊かな文章表現の助けにもなるでしょう。
目次
副詞とは

国語文法の副詞は、次にくる語を修飾して、程度などを説明してくれます。
副詞を使って修飾することで、「どんなふうに」「どのくらい」などを説明できます。
- ゆっくり 歩く
- とても 優しい
- ずいぶん 静かだ
上記の「ゆっくり」「とても」「ずいぶん」は副詞です。
副詞にはおもに6つの性質があります。
- 用言(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾する
- 活用しない
- 自立語
- 連用修飾語になる
- 連体修飾語になることもある(時間・場所・方向・数量の修飾に限る)
- 副詞は連体詞や副詞を修飾することもある
副詞は上記の性質を持ちつつ、さらに主語になることのない語です。
それでは、副詞の性質と働きを詳しく見ていきましょう。
1. 副詞は用言(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾する
副詞は用言を修飾する言葉です。
では、用言とはなんでしょう。
「用言」とは、次の3つの品詞の総称です。
【用言】
- 動詞: 「歩く」「走る」
- 形容詞: 「美しい」「優しい」
- 形容動詞:「静かだ」「きれいだ」
つまり副詞は、動詞・形容詞・形容動詞を修飾して、状態や程度などを表します。
例文で見てみましょう。
【例文:副詞】
動詞 を修飾する 副詞: 私は ゆっくり 歩く。
形容詞 を修飾する 副詞: 彼女は とても 美しい。
形容動詞 を修飾する 副詞: 湖畔は ずいぶん 静かだ。
例文では、どんなふうに、どの程度、といったことが副詞で示されているのがわかります。
状態や程度を伝えるためには副詞が欠かせません。適切な副詞を選んで表現を正確にしたり、豊かにしたりできます。
2. 副詞は活用しない
副詞は活用しない言葉です。
活用とは語尾が変化することです。
動詞であれば、「歩かない」「歩きます」「歩く」「歩くとき」「歩けば」「歩け」のように、活用して語尾が変化します。
副詞はこの活用がなく、形は変化しません。
- ゆっくり 走る
- ゆっくり 歩く
- ゆっくり 動く
上記のように、修飾される言葉が変わっても、副詞の形は変化しません。
「ゆっくら」「ゆっくれ」のように変化することはありません。
ただし、変化はしませんが、「ゆっくりと下がる」のように、「と」や「に」がつくことがあります。この場合は、「と」「に」まで含めて1つの副詞です。
- ゆっくりと 歩き出す
- すぐに できる
例文は、「ゆっくりと」「すぐに」が副詞です。
これに対し、「形容動詞」は、活用する言葉です。副詞と同じように次にくる語を修飾しますが、副詞との大きな違いは、形容動詞は活用する点です。
【例文:副詞(活用しない)と形容動詞(活用する)】
副詞(活用しない): 船が ゆっくり 動き出す。
形容動詞(活用する): 船が 穏やかに 動き出す。
「ゆっくり」は、ゆっくら、ゆっくろ、のように語尾が変化しません。このように活用しない自立語である副詞なのがわかります。
「穏やかに」は、穏やかな、のように語尾が変化します。活用する自立語である形容動詞なのがわかります。
3. 副詞は自立語である
副詞は自立語です。
自立語は、下記の性質をもつ語句です。
【自立語】
- その語句だけで意味がわかる
- その語句だけで文節を作れる
文節に分けた例文で見てみましょう
【例文:自立語を見分けよう】
秋/に/なり/葉/が/赤く/なり/まし/た。
例文では、「秋」「葉」「赤く」が自立語です。
「秋」「葉」「赤く」は、その語句だけで意味がわかり、文節も作れます。
「秋」「葉」は名詞です。「赤く」は自立語で修飾する言葉ですが、活用します。そのため、形容動詞であることがわかります。
自立語で修飾する言葉には活用する語句と活用しない語句があります。
修飾する言葉であり、なおかつ自立語で活用しないのが副詞です。
4. 副詞は連用修飾語になる【基本】
副詞は用言(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾します。
用言を修飾する副詞は、連用修飾語に分類されます。
【例文:連用修飾語になる副詞】
動詞を修飾: 川の様子を しばらく 見つめる。
形容詞を修飾: 小鳥は ずいぶん 美しい
形容動詞を修飾: 家の外は とても 賑やかだ。
用言を修飾して連用修飾語となるのが副詞のおもな働きといえます。
5. 副詞は連体修飾語にもなる【発展】
用言を修飾する副詞ですが、場合によっては、体言(名詞)を修飾して「連体修飾語」になる働きもあります。
ただし、副詞が修飾するのは、下記の名詞に限定されます。
- 時間
- 場所
- 方向
- 数量
例文で見てみましょう。
【例文:連体修飾語になる副詞】
時間:ずっと 昔、ここには小さな家が立っていた。
場所:もっと 前に進む。
さらに、副詞の中には、助詞「の」を伴って連体修飾語になる副詞もあります。
【例文:副詞+助詞「の」で、連体修飾語になる副詞】
私は彼を いつもの 場所で待つ。
もしもの 地震に備える
名詞を修飾して連体修飾語になるのは、副詞としては発展的な内容であるため、「副詞は連体修飾語になることもある」と軽く頭に入れておくのがよいでしょう。
6. 副詞は連体詞や副詞を修飾することもある
また、副詞は、連体詞や副詞を修飾することもあります。
例文で見てみましょう。
【例文:連体詞を修飾する副詞】
ずいぶん 大きな 魚だ。
「大きな」は連体詞で、「ずいぶん」が程度を表す副詞です。
【例文:副詞を修飾する副詞】
もっと ゆっくり 食べなさい。
「ゆっくり」は副詞です。「もっと」は副詞「ゆっくり」をさらに修飾しています。
副詞の3つの種類

副詞には次の3つの種類があります。
- 1. 状態
- 2. 程度
- 3. 呼応(叙述・陳述)
それぞれの働きと当てはまる副詞を一覧で見てみましょう。
【副詞の3種類】
種類 | 働き | 当てはまる副詞 |
状態 | ・動詞を修飾する
・動作の状態を表す |
時間:しばらく・すぐに
頻度:いつも・ときどき 様子:そっと・どんどん |
程度 | ・物事の程度を表す | とても
すいぶん 少々 |
呼応(叙述・陳述) | ・受ける言葉が決まっている副詞 | 推量:きっと〜だろう
否定(打ち消し):決して〜ない 否定の推量:まさか〜まい 疑問・反語:どうして〜か 希望:どうか〜たい・ください 仮定:もし〜しても たとえ:まるで〜ようだ |
1. 状態の副詞
「どんな風に」「どのように」を表すのが状態の副詞です。
おもに動詞を修飾します。
【例文:状態の副詞】
ゆっくり 歩く。
いきなり 飛ぶ。
ゆらゆら 揺れる。
きらきら 光る。
また、状態の副詞には擬態語や擬声語も含まれます。
【例文:擬態語】
星が きらきら 光る。
つるつる 滑る。
のそのそ 歩く。
ひしひし 伝わる。
【例文:擬音語】
犬が わんわん 吠える
妹が げらげら 笑う
2. 程度の副詞
「どのくらい」を表すのが程度の副詞です。
【程度の副詞】
- とても
- ずいぶん
- かなり
- 少し
- もっと
- やや
程度の副詞は、ほかの副詞を修飾したり、名詞(時間・場所・方向・数量に限る)を修飾することもあります。
【例文:程度の副詞】
用言を修飾: とても 美しい
副詞を修飾: ゆっくり 歩く
名詞を修飾: もっと 前
3. 呼応(叙述・陳述)の副詞
呼応の副詞は、それぞれの副詞に応じて、決まった言い方で受けます。
「おそらく〜だろう」などがこれにあたります。
呼応は複数の種類に分けられるのですが、諸説あるため、こちらの記事ではわかりやすい7種類に分けることにします。
【呼応の副詞・7種類】
- 推量
- 否定(打ち消し)
- 否定の推量
- 疑問・反語
- 希望
- 仮定
- たとえ
詳しく見ていきましょう。
1. 呼応の副詞:推量
推量は、推測する意味のある副詞です。「おそらく」などを「〜だろう・でしょう」で受けます。
【呼応の副詞:推量】
- たぶん 〜だろう・でしょう
- きっと 〜だろう・でしょう
- おそらく 〜だろう・でしょう
【例文:呼応の副詞(推量)】
たぶん 帰ってくるだろう。
きっと 勝つだろう。
おそらく 遅れるだろう
2. 呼応の副詞:否定(打ち消し)
打ち消しは、「〜ない」で受ける副詞です。
打ち消す意味があります。
【呼応の副詞:否定(打ち消し)】
- 決して 〜ない
- 全然 〜ない
- とうてい 〜ない
- 少しも 〜ない
- 必ずしも 〜ない
【例文:呼応の副詞(否定:打ち消し)】
勝つまで 決してくじけない。
数学の問題が全然 解けない。
とうてい かなわ ない。
少しも 信じてい ない。
必ずしも 全てでは ない。
3. 呼応の副詞:否定の推量
否定の推量は、「まさか」などを「〜まい」で受け、副詞の後の内容を打ち消す推測をします。
【呼応の副詞:否定の推量】
- まさか 〜まい
- よもや 〜まい
【例文:呼応の副詞(否定の推量)】
まさか 暴露するまい。
よもや、わかるまい。
4. 呼応の副詞:疑問・反語
疑問・反語の副詞は、「〜か」で受けます。
【呼応の副詞:疑問・反語】
- なぜ 〜か
- どうして 〜か
【例文:呼応の副詞(疑問・反語)】
なぜ それをするのか。
どうして 生きる意味を考えるのか。
5. 呼応の副詞:希望
希望の副詞「どうか」などは、「〜たい」「〜ください」で受けます。
【呼応の副詞:希望】
- どうか 〜たい・ください
- ぜひ 〜たい・ください
- どうぞ 〜たい・ください
【例文:呼応の副詞(希望)】
どうか、よく考えてください。
ぜひ、やらせてください。
どうぞ お食べになってください。
6. 呼応の副詞:仮定
仮定の副詞「もし」などは、「〜ても」「〜なら」で受けます。
【呼応の副詞:仮定】
- もし 〜ても
- たとえ 〜ても
- 仮に 〜ても
【例文:呼応の副詞(仮定)】
もし 試合に負けても
たとえ 死ぬとしても
仮に 好きだとしても
7. 呼応の副詞:たとえ
たとえの副詞は、たとえて表す表現です。
【呼応の副詞:たとえ】
- まるで 〜ようだ
- さも 〜ようだ
- ちょうど 〜ようだ
【例文:呼応の副詞(たとえ)】
ちょうど 沸いたようだ。
まるで 太陽のようだ。
さも 手柄をたてたかのようだ。
副詞と連体詞の見分け方

副詞と連体詞が似ていて見分け方がよくわからないという声が聞かれます。
どちらも修飾する言葉ですが、修飾するのが体言か用言かという違いがあるのです。
【副詞と連体詞の共通点】
- 自立語
- 活用がない
- 修飾語になる
【副詞と連体詞の違う点】
- 連体詞:おもに体言(名詞)を修飾する
- 副詞: おもに用言(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾する
例文で見てみましょう。
【例文:連体詞】
この 犬は 小さな 犬です。
例文の連体詞は「この」と「小さな」の2つです。
どちらも「犬」という体言を修飾しています。
「小さな」は活用せず、名詞の前にしかつかない連体詞です。
【例文:副詞】
姉は とても 優しい
例文の副詞は「とても」です。
「優しい」という形容詞を修飾しています。
※ただし、副詞であっても、限定的に、時間・場所・方向・数量を表す名詞を修飾して連体修飾語となることもあります。
例:ずいぶん昔:「ずいぶん」は昔(時間の名詞)を修飾する副詞
副詞をさがしてみよう【練習問題】

それでは、次の文から、副詞をすべて抜き出してみましょう。
【練習問題】
- 問1. さっと 洞窟を 出て、静かに あたりを 見回し、ゆっくり あるき出した。
- 問2. 朝靄が、とても 冷たい風に、そっと 流されてゆく。
【解答】
- 問1. さっと・ゆっくり
- 問2. とても・そっと
正解できたでしょうか。
活用しない自立語で用言を修飾している言葉をさがしてみましょう。
それが副詞です。
英語の副詞
英語にも副詞はあります。
【英語の副詞】
- 程度:very(とても)・quite(かなり)・a little(少し)
- 頻度:always(いつも)・often(しばしば)
【例文:英語の副詞】
She is always busy with her home work. (彼女は仕事でいつも忙しい)
alwaysは、always busy(いつも忙しい)と、次にくる語を修飾します。
古典の副詞
古典の世界にも副詞はあります。
【例文:古典の副詞】
雪の いと 高う降りたるを(枕草子 )
(雪がとても高く降り積もっているのに)
やうやう 白くなり行く(枕草子)
(だんだん白くなっていく)
あまた さぶらひたまひけるなかに(源氏物語)
(たくさん使えなさっていたなかに)
古典の副詞は雅やかな表現がたくさんあります。
現代語との違いを見つけてみても楽しいでしょう。
副詞を知って表現の幅を広げよう
「どんどん」「ゆらゆら」「とても」など、ひらがなで表記されることの多い副詞は、物事を親しみやすく説明してくれます。
「もっと ゆっくり」のように、副詞が副詞を修飾するのもなんだか面白いですね。
品詞というと「面倒だな」というイメージを持たれるかもしれませんが、知ってみると楽しい豆知識が多くあります。
文章を見ても「これは副詞だ」とわかるのも楽しいものです。
副詞を使った説明があることで、読み手の理解はより深まります。
副詞を味方につけて表現の幅を広げてみてください。