口語体で文章を書く!成り立ちから種類までわかりやすく解説

口語体の基礎知識を文語体との違いを含めて解説

口語体は、現代の私たちが一般的に使用している文体です。

文章作成に使用するのは「口語体の書き言葉」です。

 

口語体が普及する前の文章は、文語体という古い言葉遣いの難解な文体で綴られていました。

 

  • 文語体: 石炭をば早積み果てつ。
  • 口語体: 石炭を早くも積み終えました。

 

明治時代、言文一致運動により、口語体が一般的になりました。

口語体の普及により、現在のように誰もが文章から情報を得ることが容易になりました。

 

今回は、口語体の基礎知識、普及の歴史、文語体との違いをご説明します。

口語体を知ることで、文章作成への理解がより深まることでしょう。

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口語体は現代の一般的な文体:始まりは明治

口語体とは

 

口語体は、現代の言葉遣いで書かれる文体です。

私たちが、普段の生活で、会話や読み書きに使うのは、口語体です。

 

デジタル大辞泉には下記の解説があります。

【デジタル大辞泉】

こうごたい【口語体】

  1. ある時代の、話し言葉の形式。話し言葉体。
  2. 現代の、話し言葉に基づく文章の形式。口語文の文体。

常態(「だ体」「である体」など)と敬体(「です・ます体」「でございます体」「であります体」など)がある。⇄文語体。

 

口語体が文章に使用されるようになったのは、明治の言文一致運動からです。

それ以前は、文語体という、平安の言葉を基礎にして独特の発達をとげた書き言葉が使われていました。

明治の文明開化とともに、誰にでもわかる文章への必要性が高まり、二葉亭四迷ら、文筆家たちが言文一致運動を推進して奮闘しました。

そのかいあり、それまでは難解で知識階級にしか理解できなかった書物が、口語体でわかりやすく書かれるようになり、読み書きする層が広まりました。

普段、無意識に使用している口語体ですが、実は、口語体の普及には、明治の文筆家の熱い奮闘の歴史がありました。

 

口語体の種類:「です・ます調」「だ・である調」

口語体には、「だ・である調」と「です・ます調」があります。

 

  • 親しみやすく丁寧な雰囲気になるのが「です・ます調」
  • 断定的で引き締まった雰囲気になるのが常体の「だ・である調」

 

記事作成では、口語体の書き言葉、敬体の「です・ます調」が適しています。

 

記事ブログ内に、「です・ます調」と「だ・である調」についてご説明した記事があります。両者の使い分けがすっきりと理解できるよう解説しております。ぜひ、こちらもご覧ください

「です・ます調」と「だ・である調」の違いを5つの事例から分析【例文あり】

 

「話し言葉」と「書き言葉」の違いについても、記事ブログ内の記事をご覧ください。適切な表現ができるよう解説しております↓

「話し言葉」と「書き言葉」の違い!6つのタイプでわかりやすく解説

 

言文一致運動:文語体から口語体への転換

言文一致運動で口語体が普及する

明治までの文章は、文語体という、日常の話し言葉から乖離した難解な言葉遣いで書かれていました。

1868年、明治が幕開けし、日本が近代国家として変貌するなか、言葉や文章も、よりわかりやすく変えていく必要に迫られました。

 

この流れのなか、二葉亭四迷ら、文筆家の言文一致運動により、話し言葉をベースとした口語体が確立し、普及しました。

一般の人々にも読み書きが広まり学びの機会を得られるようになったのには、文筆家たちの創意工夫と奮闘の歴史がありました。

詳しく見ていきましょう。

 

明治初期:わかりやすい文章のニーズが高まる

明治になり、文明開化が始まると、それまで使用されていた文語体による難解な文章ではなく、もっと理解しやすい書き言葉が必要になってきました。

明治初期まで文章に使われていた言葉は、文語体という特殊な書き言葉でした。当時、文語体による文章は、知識階級の限られた人でなければ理解が難しいものでした。

 

明治初期の文章に使われていた言葉は次のようなものでした。

 

【引用:モルレー申報(明6)】

原文

故ニ人民ノ普通ノ国語ヲ以テ授受ノ媒トセザレバ其ノ教育能ク浹及スルコトナシ

口語訳

教育の普及は人民の普通に使用している国語で行わなければ、あまねく及ぼすことができない

 

例文のように、明治初頭の文章は、当時の一般の人々にとって、話し言葉とは乖離した理解の難しいものでした。

 

明治5年、福沢諭吉の学問のすすめには次の言葉があります。

 

【福沢諭吉/学問のすすめ】

学問とは、ただむずかしき字を知り、解し難き古文を読み、和歌を楽しみ、詩を作るなど、世上に実のなき文学を言うにあらず。

 

当時、学問に使われていた字や文章は難解で、知識階級にしか理解できないものでした。学問を一般に普及させるには、読み書きする層を広げる必要があると福沢諭吉も考えていたことがわかります。

そこで、「会話の言葉遣い=言う」と「文語=文」を一致させて、誰にでも読めるわかりやすい文章を書こうという言文一致運動が始まります。

 

明治20年代:二葉亭四迷らにより言文一致運動が進められる

言文一致の代表的な小説

 

言文一致の動きに対し、文語にこだわる文筆家からは反発や抵抗がありました。

日常の会話で使う話し言葉で文章を書くことは、「趣がなく低俗である」と感じる文筆家も多かったのです。

 

しかし、西洋の言葉に刺激を受けた二葉亭四迷が、「日本語でもわかりやすい文章を書いてみよう」と試みます。

そして明治20年、完成したのが、小説「浮雲」です。

【二葉亭四迷/浮雲】

文三が食事を済まして縁側を回りひそかに奥の間をのぞいて見れば、お政ばかりでお勢の姿は見えぬ。お勢は近ごろ早朝より駿河台辺りへ英語のけいこにまいるようになッたことゆえ、さては今日ももう出かけたのかと恐る恐る座舗へ入ッて来る。その文三の顔を見て今まで火鉢の琢磨(すりみが)きをしていたお政がにわかに光沢(つや)布巾の手を止めて不思議そうな顔をしたのもそのはず、この時の文三の顔色がツイ一通りの顔色でない、蒼ざめていて力なさそうで、悲しそうで恨めしそうで恥ずかしそうで、イヤハヤ何とも言いようがない。

 

さらに、山田美妙により小説「胡蝶」が発表されます。ここで、「です・ます調」が取り入れられました。

その後、尾崎紅葉により小説「二人女房」が「である調」で発表されます。

 

  • 二葉亭四迷 :  浮雲   「だ体」
  • 山田美妙  :  胡蝶   「です体」
  • 尾崎紅葉  :  二人女房 「である体」

 

こうして、次第に新聞などもわかりやすい口語体へと変遷していきます。

昭和以降は、法律文なども口語文で書かれるようになりました。[注1]

 

[注1]文化庁/内閣官房長官/内閣閣甲第16号[pdf]

 

明治36年:小学校の教科書も口語体になる

明治初期の教科書は、文語体で書かれたわかりにくいものでした。[注2]

言文一致運動により、明治36年、小学校の教科書も言文一致で口語体になりました。

 

その後、明治38年に、夏目漱石の傑作「吾輩は猫である」が発表されます。

【夏目漱石/吾輩は猫である】

吾輩(わがはい)は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当(けんとう)がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪(どうあく)な種族であったそうだ。この書生というのは時々我々を捕(つかま)えて煮(に)て食うという話である。しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。

 

「吾輩は猫である」は、当時、一般の人にもわかりやすい文章として評判になりました。

二葉亭四迷・山本美杪らが始めた言文一致運動は、その後、さらに明治の文筆家たちが創意工夫を重ね、誰もが読める文体となって普及したのです。

 

[注2]国立教育政策研究所教育図書館/近代教科書デジタルアーカイブ/明治初年教科書

 

口語体には「話し言葉」と「書き言葉」がある

話し言葉から影響されて確立した口語体ですが、口語体にも細かく「話し言葉」と「書き言葉」があります。

「話し言葉」はフォーマルな文章作成には適しません。より会話に近く、正式な言葉遣いとは認められていない新しい言葉の使い方であるためです。[注3]

例文で見てみましょう。

 

【例文:口語体の「話し言葉」と「書き言葉」】

✕ ら抜き言葉

話し言葉:海の上に星が見れます

改善例:海の上に星が見られます

 

✕ 本来の意味ではない使い方

話し言葉:海外ドラマの魅力にはまっています

改善例:海外ドラマの魅力に熱中しています

 

私的なメール、ブログ、会話文では、カジュアルな「話し言葉」を使用してもよいでしょう。

しかし、公的な文章では、「書き言葉」を使用することが基本です。

もちろん、記事作成の際には、口語体の書き言葉を使用しましょう。

 

[注3]「話し言葉」と「書き言葉」の違い!6つのタイプでわかりやすく解説

 

口語体と文語体の違い

口語体と文語体の違い

 

口語体は、「現代の言葉遣いの文体」です。

それに対する文語体は、「古代から明治までの古い言葉遣いの文体」です。

 

口語体と文語体の動詞の終止形には次の違いがあります。

 

【動詞の終止形】

口語 思う ある 落ちる 投げる 来る する
文語 思ふ あり 落つ 投ぐ 来(く)

 

例文で見てみましょう。

 

【例文:口語体と文語体の終止形】

  • 口語体: 私は、思う
  • 文語体: 我、思ふ

 

  • 口語体: 日が、落ちる
  • 文語体: 日の、落つ

 

  • 口語体: 花がある。月がある
  • 文語体: 花ありあり

 

動詞のほかにも、語彙、文法、用言の活用は、大きく異なります。

また、口語体と文語体の文章には、大きな特徴の違いがあります。

 

【口語体と文語体:特徴の違い】

  • 口語体: 現代の言葉遣いであるため、理解しやすい。簡潔で親しみやすい。
  • 文語体: 古い言葉遣いであるため、理解が難しい。格調高い。独特の趣がある。

 

記事ブログ内に、文語体についてわかりやくすご説明した記事があります。格調高い文語体について作品例を挙げて解説しています。文語体ならではの日本語の美しさにご興味がおありの方は、こちらもご覧ください↓

文語体とは明治までの書き言葉!作品例を挙げて解説

 

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口語体は情報をわかりやすく伝える

口語体の文章は、誰にでも理解しやすく、情報を伝えることに適しています。

そんな口語体ができて普及するまでには、明治の文筆家たちの奮闘がありました。

今、私たちが「わかりやすい文章」を書けるのも、先人達の創意工夫があってこそです。

 

文学作品では、文語体の難解な表現が好まれる場合もあります。

しかし、読み手に情報を届ける目的であれば、「口語体の書き言葉」を使用し、シンプルでわかりやすい文章を書きましょう。親しみやすさと共感をもって読んでいただけることでしょう。

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