語彙力とは、「どれだけ多くの言葉を知っていて、それを適切に使えるか」という能力です。
「語彙力がない」
「語彙力を鍛えるためにはどうしたらよいか…」
という声はよく聞かれます。
語彙力があれば、伝えたい事柄を的確に表現できます。また、読み手を飽きさせずに最後まで読んでいただくこともできます。
意味が伝わる文章を作成するためにも、日頃から語彙力を高める努力をしましょう。
こちらでは、語彙力の意味、語彙力の必要性、語彙力の鍛え方について簡単にわかるようご説明します。
目次
語彙力とは
語彙力とは、どれだけ多くの言葉を知っていて、それを使いこなせるかという能力のことを指します。
ごいりょく【語彙力】の解説
その人がもっている単語の知識と、それを使いこなす能力。「ーが高い」
引用:goo国語辞書
つまり、語彙力とは、次の2つを兼ねた能力のことです。
・どれだけ多くの言葉を知っているか【知識】
・どれだけ言葉を使いこなせるか【運用能力】
まず、言葉の知識を多く持っていることが大切です。
しかし、知識だけあっても、実際に言葉にするときに的確に使えないようでは語彙力が高いとはいえません。
覚えた言葉をいかに使いこなすかという運用能力も大切です。
最近は、なんでも「ヤバイ」で表す人も多いようです。
そう、憂慮に堪えない問題です。
「危険な人→あいつヤバイ」「仕事量が多い→仕事ヤバイ」「おいしい→ヤバイ」
これではどんどん語彙力が低くなってしまいます。
語彙力の程度は、一般的に、「高い」「低い」で表現します。
「語彙力が多い・語彙力が少ない」という表現は間違いです。「多い・少ない」で語るのであれば、「語彙が多い・語彙が少ない」とすべきでしょう。
語彙力の高さは、難しい言葉が使えるということだけではありません。誰にもわかるやさしい言葉を選べることも語彙力の高さと言えます。
より多くの言葉を知り、用途に合わせた適切な言葉を使えるようになるのを目指しましょう。
語彙力が高い3つのメリット
語彙力が高いメリットは大きく3つ挙げられます。
メリット1. 意味が伝わる文章を作成できる
語彙力が高ければ、伝えたい事柄を的確に伝えられます。
よりシンプルに伝えることも可能でしょう。
伝えたいことがあって書いてみたけれど、読み返してみたら何が言いたいのか意味がわからないと自分で思うことがあります。
そういうこともあります。
語彙が豊富で適切に組み合わせられたら、意味を伝えることも簡単でしょう。
メリット2. 人の心に届く文章を作成できる
語彙が豊富で適切に使いこなせれば、人の心に届く文章を作成できます。
スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行った伝説のスピーチの有名な一節があります。
- Stay Hungry. Stay Foolish.
これを、次のように訳してしまったらどうでしょう。
- おなかをすかせていなさい。おバカさんでいなさい。
上記のように訳したら、人の心を動かす名スピーチにはならないでしょう。
次のように訳されてこそ、伝説のスピーチとなりえます。
- 貪欲であれ。愚かであれ。
同じような意味でも雰囲気がガラリと変わります。
適切な語彙を当てはめる力は、人の心を動かす名文を作り出すことにつながります。
メリット3. 表現力が豊かになる
語彙力が高くなれば、より表現の幅が広がります。
読み手や文章のテーマの特性を考えて、柔らかい文章にしたり、固い文章にしたりできます。
【例文:読み手によって語彙を使い分ける】
小学生向け:環境のためにも、この問題をそのままにしておくことはできません。
ビジネス向け:環境のためにも、この問題を看過することはできません。
例文のほかにも、語彙力があればテーマに合わせた使い分けができます。
専門性の高いテーマであれば専門用語を駆使して説明を行ったり、女性向けのテーマであればやさしい大和言葉を使ったりと、読み手に合わせた豊かな表現ができます。
語彙力が低い4つのデメリット
語彙力が低いデメリットは、次の4つが挙げられます。
- 浅薄な印象を与える
- 伝わらない
- 理解が及ばない
- 思考が深まらない
語彙力が低いと、伝える力が足りないばかりでなく、相手の話や文章を的確に理解できなくなってしまいます。
また、人間は言葉を使って思考しているため、決まりきった少ない語彙では、思考も深まりません。
そうなると、結局、伝える力も弱くなるという悪いスパイラルに陥ってしまうのです。
デメリット1. 浅薄な印象を与える
決まりきった言葉だけを使っていては、幼稚で浅薄な印象を与えてしまいます。
特にビジネスシーンの会話やメールでは、子どもっぽいと感じられる言い方をしないよう気をつけましょう。
ちょっとした言い方の違いでも大きく印象は変わります。例文で確認してみましょう。
【例文:言い方で印象を変える】
わかりません。(稚拙な印象)
↓
不勉強で申し訳ありません。(反省の意が伝わる)
教えてください。(唐突な印象)
↓
〇〇についてご教示いただけますか?(丁寧な印象)
確認してください。(やや、きつい印象)
↓
ご確認のほどお願いいたします。(ソフトな印象)
語彙力が低いと、良い印象で伝えるのが難しいこともあります。
デメリット2. 伝わらない
当然ですが、語彙力が低いと、相手に伝える力も弱くなります。
ある商品の良さをアピールしようにも、「素敵」「かっこいい」「おいしい」しかなくては、今ひとつ伝える力は弱いでしょう。
アピールしたい事柄に合わせた細やかな表現力が必要です。
【例文:宣伝文】
おいしい桃ジュース
↓改善案
長野とれたて!100%桃ジュース
少しの違いですが、改善案のほうが、商品のアピールしたい部分が伝わります。
また、気持ちを伝えるときにも、語彙力が低いと損をしてしまいます。
相手をほめたいときに、「すごい!」しか言えないよりも、「語彙選択の卓越したセンスに驚きました」と言えたほうが、より伝わるのではないでしょうか。
デメリット3. 理解力が足りなくなる
語彙力が低いと、発信する力だけではなく、受信する力もおぼつかなくなります。
相手が自分の知らない言葉を使っていると、理解が追いつかないこともあります。
「どうも微妙なニュアンスが伝わらない」
そんなふうに感じられてしまうかもしれません。
知っている語彙が少ないと、言われたことや書かれたことがわからず、自分流の解釈をしてしまいがちです。
それでは、発信側の心の機微や情報を正確に理解することが難しいでしょう。
デメリット4. 思考が深まらない
人間は、言葉で物事を考えています。
知っている言葉が多く、言葉を使いこなせていれば、思考も自ずと深まります。
知っている言葉の数が少ないと、限られた思考しかできなくなってしまいます。物事を感じ取る言葉が限定的になり、思考が深まりません。
例えば、気持ちを表現する言葉が少なかったらどうでしょう。
【例文:気持ちを表現する言葉】
心の痛み
↓
つらい
苦しい
気が重い
悲しみで胸がいっぱいだ。
張り裂けるような心の痛みを感じる。
心の痛みを表現するのにもたくさんの言葉があります。これらを知らないと、漠然とした不快感を心のなかで消化するのが難しくなります。
普段から、「ヤバイ」「キモイ」「ムカつく」など、安易な言葉でなんでも表現してしまわないように注意しましょう。
語彙力を鍛える方法
語彙力を鍛えるために必要なのは次の2つです。
- インプット
- アウトプット
インプットは、言葉を覚えて言葉の知識を増やすことです。読書が代表的です。
アウトプットは、とにかく書くことです。その際は、誰にでも伝わる文章を書くことを意識しましょう。
それでは、具体的にご説明いたします。
インプット:読む、調べる
インプットでは、言葉の知識を増やします。
さまざまな書籍や記事を読んでみましょう。
語彙力を増やすための本を読むのも早道ですが、さまざまなジャンルの本を読むことも必ず役立ちます。
また、何かを読んでいて知らない言葉が出てきたら、すぐに調べましょう。
知らない言葉だけではなく、少し理解があやふやだなと感じたら、その都度しっかり調べることをおすすめします。
アウトプット:書く、言い換える
知っている言葉を使いこなすためには、ともかく文章を書いてみることが大切です。
おすすめは、ブログのように不特定多数の人に向けて書いてみることです。
その際、誰にでも伝わる文章であるよう、読み手の目線を意識してみてください。
「この言い方ではなんだかしっくしこない」
そう感じたら、どんどん書き直し、言い換えをしてみましょう。類語を調べて言い換えてみることも語彙を増やすためにはおすすめです。
【一覧】語彙力のための言い換え一覧表
では、語彙力を高めるため、シーン別の言い換えを一覧にまとめます。
一助となれば幸いです。
【気持ちを表現する語彙】 | |
プラスの気持ち | 嬉しい 楽しい 幸せ 爽快 満足 ワクワク |
マイナスの気持ち | 悲しい 寂しい 孤独 哀れ 心が痛む 失望する
虚しい 惨め 切ない 落胆 残念 遺憾 言語道断 もってのほか 度しがたい |
おいしい | うまい 絶品 美味 風味がよい 乙な味
格別 極上 甘美 馥郁(ふくいく) 芳醇 味わい深い |
感動 | 感無量 万感胸に迫る 感銘を受ける
高揚感に包まれる 心躍る |
【ほめる語彙】 | |
かわいい | 愛らしい 可憐 あどけない
愛おしい 愛くるしい 可愛らしい |
美しい | 素敵 きれい まばゆい 麗しい
眉目よい 風光明媚 秀麗 壮麗 |
優れている | 頭脳明晰 聡明 目端が利く 人徳がある
見識がある 利発 先見の明がある 右に出る者がない 無双 |
【今風の言葉を言い換える語彙】 | |
ヤバイ | 危ない 大変 一大事だ 不都合だ
不具合がある 危険人物だ 危機的状況だ 心配 言語道断 |
キモイ | 気持ち悪い 不快だ 嫌な気分になる 厭わしい
不愉快 忌まわしい 疎ましい ひどい |
超(チョー) | 著しく(いちじるしく) 極めて 並外れた 卓越 傑出
いたって 途方もなく 得も言われぬ 絶大な たまわなく 恐るべき 心から |
ムカつく | いらいらする いら立つ カッとする
カチンとくる 頭にくる 胸糞悪い 嫌な感じ 面白くない 腹立たしい 怒りを覚える しゃくに障る 気に障る むしゃくしゃする 憎い 虫唾が走る 鬱憤がたまる |
【コミュニケーションを円滑にする語彙】 | |
同意する | 承知いたしました
かしこまりました |
お受け取りください | ご笑納ください |
何度もすみません | 度々申し訳ありません
度々恐れ入ります |
手伝ってください | お力をお貸しください
お力添えください |
私のミスです | 私の不手際です
私の認識不足です |
納得できません | 承服いたしかねます |
反省しています | 不徳のいたすところです
面目ありません |
「「超ラッキー」と「心からうれしく思います」では、受ける印象がずいぶん違いますね。
そうです。
語彙力を高めて、自分の気持ちや情報を明確に伝えられるといいですね。
語彙力は伝える力
「語彙力が高い」ということは、言葉の知識があり、それを適切に使う能力があるということです。
語彙力が高いと、文章や会話をとおして、情報や思いを的確に伝えることができます。
ただし、難しい言葉をたくさん使えることがよいわけではありません。
伝えたい相手が心地よく感じる言葉を、正しく使って組み立てることが大切なのです。
ご紹介した方法で言葉の知識を増やし、読み手の思いを想像しながら文章を組み立ててみましょう。
参考文献:斎藤孝「大人の語彙力ノート」SBクリエイティブ株式会社