紅葉の名所は圧巻の景色でした。
「圧巻」を単純に「素晴らしい」というニュアンスで使っていませんか?
「圧巻」は全体の中で最もすぐれている部分に対して使う言葉です。
伝えたいニュアンスに合うように「圧倒的な景色」「壮観」などと言い換えましょう。
「これまで見た中で最も優れた景色」の意味であれば「圧巻の景色」と表現できます。
「圧巻(あっかん)」の本来の意味は「全体の中で最もすぐれた部分」のことです。
「圧倒されるもの」という意味で使用するのは正しい表現ではありません。
褒め言葉である「圧巻」の正しい意味と使い方を解説いたします。
また、「圧巻」の語源(故事成語)・類語・英語表現などを例文つきでご紹介します。
目次
「圧巻(あっかん)」の意味とは:褒め言葉
「圧巻」の意味は「全体の中で最も優れた部分」です。
デジタル大辞泉には次の記載があります。
あっかん【圧巻】
《「巻」は、昔の中国の官吏登用試験の答案。最優等者のものをいちばん上にのせたところから》
書物の中で最もすぐれた詩文。
作中最もすぐれた部分。
転じて、全体の中で、最もすぐれた部分。出色。
「恋人との別離の場面は圧巻だ」[引用:小学館「デジタル大辞泉」]
つまり、「圧巻」は次の意味として使います。
- 書物の中で最も優れた詩文。
- 作中の最も優れた部分。
- 全体の中で最も優れた部分。
「全体」の中で、最も優れている「部分」を褒める表現です。
例文で確認してみましょう。
【例文:圧巻】
親子の再会の場面は圧巻の演技だった。
セブの海はこれまで見た海の中でも圧巻の美しさだった。
その作品の別離の一節は圧巻だった。
「圧巻」は全体の中の最も優れた部分を褒める言葉です。
「圧巻」の語源:故事成語
圧巻の語源は中国の科挙(かきょ)の時代にまでさかのぼります。
その昔、中国には「科挙」と呼ばれる官吏登用試験がありました。
科挙は、隋(587年)から清末期(1905年)まで続きました。
「圧巻」の「巻」は、「試験の答案」という意味があります。
科挙では、最優秀の答案を一番上にのせました。
そのことから、「圧巻」は、「最も優れた詩文」を示す故事成語となりました。
(中国語の「圧」には、「上から押さえつける」という意味があります)
ちなみに、現代の中国語にも圧巻という言葉があります。
【中国語の圧巻】
压卷(yājuàn)
意味:複数の詩文や絵画のうち、最も優れたもの。
「圧巻」の使い方:例文
「圧巻」の使い方を教えてください。
分かりました。
「圧巻」の使い方を例文でご紹介します。
「圧巻」は意味を間違えないように使いましょう。
「圧巻」は、「全体の中で最も優れている」という意味で使います。
【例文:圧巻】
先日観た映画の中でサムのセリフは圧巻だった。
【例文:圧巻】
彼の歌のサビの部分は圧巻だった。
【例文:圧巻】
彼女の演技力は劇団の中でも圧巻だ。
【例文:圧巻】
〇〇の四季の中でも圧巻なのは冬景色である。
「圧巻」を単純に「素晴らしい」という意味で使うのはニュアンスを間違えています。
「全体の中で最も優れている」ことを褒めるときに使いましょう。
「圧巻」の類語
「圧巻」の類語をご紹介します。
類語 | ニュアンス |
・見せ場
・佳境 ・ハイライト |
全体の中でも面白い部分。 |
・圧倒的
・抜群 ・格別 ・卓越 ・出色 |
他より優れているもの。 |
特に、言い換えをするときに使いやすい言葉を確認していきましょう。
圧倒的
「圧倒的(あっとうてき)」の意味は「他より非常に勝っているさま」「他をしのいで優れている状態であるさま」です。
例文で確認してみましょう。
【例文:圧倒的】
チャーチルは圧倒的な支持を得ていた。
彼女はクラスの中でも圧倒的な才能を持っている。
ハイライト
「ハイライト」は「最も興味を引く部分」「最も興味を引く場面」という意味があります。
例文で確認してみましょう。
【例文:ハイライト】
今日の舞台のハイライトは、歌手の〇〇さんのゲスト出演です。
主人公が敵を倒すシーンは、この映画のハイライトです。
出色
「出色(しゅっしょく)」には、「他より特に優れていること」「他より特に優れているさま」という意味があります。
例文で確認してみましょう。
【例文:出色】
彼の演技は、他のスケーターの中でも出色の出来でした。
ラストゲームは出色のパフォーマンスでした。
抜群
「抜群(ばつぐん)」には「多くのものの中で特に優れていること」「多くのものの中で特に優れているさま」という意味があります。
例文で確認してみましょう。
【例文:抜群】
彼はこれまでで抜群の成績をおさめた。
このエッセイは抜群の出来です。
よくある「圧巻」の意味の間違い:圧巻されるは間違い
「圧巻の景色」など、ニュアンスを間違えて使われている例をよく見かけます。
「圧巻」の本来の意味 | 「圧巻」の間違いの意味 |
全体の中で最も優れた部分 | 非常に素晴らしい |
「圧巻」は「全体の中で最も優れた部分」という意味です。
漠然と「非常に素晴らしい」というニュアンスで「圧巻」を使うのは間違いです。
適切に言い換えましょう。
「圧巻の景色」であれば「壮観」「素晴らしい景色」などと言い換えられます。
もし、「これまでに観た中で最も素晴らしい」というニュアンスであれば、「圧巻」を使えます。
また、「圧巻」と「圧倒」を混同している例もあります。
「圧巻される」というのは間違った使い方です。「圧倒される」と言い換えましょう。
例文で確認してみましょう。
【例文:「圧巻」を適切に言い換える】
× オーロラは圧巻の景色です。
↓改善
◯ オーロラは壮観です。
◯ オーロラは素晴らしい景色です。
【例文:「圧巻」を適切に言い換える】
× さすが圧巻のパフォーマンスでした。
↓改善
◯ さすが息を呑むほど素晴らしいパフォーマンスでした。
【例文:「圧巻」を適切に言い換える】
× どのゴールも圧巻でした。
↓
◯ どのゴールも見事でした。
伝えたい意味に合うように、適切に言い換えていきましょう。
「圧巻」の英語表現
「圧巻」の英語表現をご紹介します。
「圧巻」は「全体の中で最も優れている部分」という意味です。
本来の意味に沿って訳すと「The best part 」ですが、文章の中では文脈に沿って言い換えます。
- The best part
- Masterpiece
- Highlight
例文で確認してみましょう。
The best part
「The best part 」には、「最もよい部分という意味があります」
最も素晴らしい部分を表現するときに使えます。
【例文:The best part 】
This movie is worth watching. Especially, the last scene is the best part.
(この映画は見る価値がある。特に、最後のシーンは圧巻だ)
Masterpiece
「Masterpiece」には、「傑作」「名作」という意味があります。
ある作品が非常に出来栄えがよいこと、傑出していることを表現できます。
【例文:Masterpiece】
Her language ability is a masterpiece.
(彼女の語学力は圧巻だ)
Highlight
「Highlight」には「見どころ」という意味があります。
ショーや催しなどの最も印象的な部分を表現できます。
【Highlight】
The concert was amazing. Especially, Her voice was the highlight.
(そのコンサートは素晴らしかった。特に彼女の声は圧巻だった)
まとめ
「圧巻」は「全体の中で最も優れた部分」を意味する褒め言葉です。
「圧倒的」「壮観」「座巻」とは微妙に意味が異なります。
何かを単体で褒めたいとき使用するのは間違いです。
「全体の中で最も優れている」ことを褒めたいときに使いましょう。