「通して(とおして)」と「通じて(つうじて)」は、どちらを使えば適切なのか、迷う場面があります。
似ている表現ですが、ニュアンスに違いがあるため、使い分けが必要です。
- 「通して」:具体的な手段・能動的
- 「通じて」:広範囲な影響力・状態的
使い分けに迷う場合、まずは上記のように覚えておきましょう。
また、公用文では、「通り」の表記にも注意が必要です。
- 銀座通り ←漢字
- 次のとおり ←平仮名
名詞としての意味が強い場合は漢字の「通り」、形式名詞の場合は平仮名の「とおり」を使います。
この記事では、「通して」「通じて」の意味、違い、使い分けなどを、具体的な例文を挙げて解説します。
目次
「通して」と「通じて」の意味の違い
「通して」と「通じて」の意味の違いを確認しましょう。
文章を書いていて、「通して」か「通じて」か迷うときがあります。
能動的に何かを媒介した結果を表現したい場面では「通して」を。
自然な伝達やある状態の継続による影響を表現したい場面では「通じて」を使うのがよいでしょう。
「通して」と「通じて」は、次の基準で使い分けます。
| 通して(とおして) | 通じて(つうじて) | |
| 文法 | 「通す」
他動詞
|
「通じる」
自動詞
|
| ニュアンス | 能動的なプロセスを強調するイメージ
口語的 |
自然なプロセスで、広範な影響や効果が広がるイメージ
書き言葉的 |
| ポイント | 〜を使って
〜に頼んで |
〜をきっかけに
〜を経由して |
| 例 |
|
|
使い分けを誤ると、どこか不自然になってしまいます。
具体的に、次の2つの場合に分けて詳しく確認してみましょう。
- 手段・媒介として使う場合
- 期間を示す場合
手段・媒介として使う場合:〜を介して・経由して
「〜を介して」という意味合いで使われる場合の違いについて解説します。
まず、次の表で確認してみましょう。
【手段・媒介として使う場合】
| 通して | 通じて | |
| ニュアンス | 能動的に、何かを媒介として利用し、行動するニュアンスが強い | その媒介を自然なきっかけとして伝わってくるニュアンスが強い |
| ポイント | 具体的な手段やプロセスを強調している
ex.「〜を利用して」 |
広範な影響や結果に焦点がある
ex.「〜を経由して」 |
| 例文 | ・友人を通して、彼に手紙を渡した
・窓を通して、外の景色を見た ・通訳を通して、社長と話をした |
・インターネットを通じて、そのニュースを知った
・趣味を通じて、親しくなった ・報道を通じて、事件の概要が明らかになった |
どちらを使おうか迷う場合、次のポイントを判断基準とするのがおすすめです。
- 能動的な行為→通して
- 自然な経路→通じて
例えば、「インターネットを通して検索する」は、自分が意志を持って(能動的に)インターネットを道具として使うことを示しています。
同じ内容を、「インターネットを通じて検索する」と表現するのは、少し不自然でしょう。
「ニュースを知る」場合は、情報が伝わってくる受け身の側面が強いので「〜を通じて」がより自然です。
期間を示す場合:〜の間ずっと
期間を示す場合の、「通して」と「通じて」について、使い分けのポイントを確認してみましょう。
| 通して | 通じて | |
| ニュアンス | ある期間、同じ行動を継続することを表す | ある期間、ある状態や傾向が見られることを表す |
| ポイント | 継続的な行為に焦点があたる | 全体的な状態や性質に焦点があたる |
| 例文 | ・夏休みを通して、毎朝ピアノの練習をした
・1年を通して、研究に没頭した |
・1年を通じて、気候が温暖だ
・物語全体を通じて、家族の愛が描かれている |
例えば、次の文章の違いを確認しましょう。
その地域は、1年を 通じて 暖かい←◯
その地域は、1年を 通して 暖かい←△
「通じて」は、1年間全体にわたって暖かい状態が続いていることを表しています。
そのため、「通して」を使うと、意味は通じるのですが、どこか不自然になってしまいます。
次のポイントを判断基準として覚えておきましょう。
- 継続的な行為→通して
- 全体的な状態や性質→通じて
【就活】「経験を通して」「経験を通じて」はどちら?
就活のための文章で迷うのが、「経験を通して」と「経験を通じて」のどちらを使用するかです。
能動的に行った経験に焦点をあてるなら、「経験を通して(とおして)」が望ましいでしょう
【例文】
生徒会長の経験を通して得た学びは〇〇です。
留学時の経験を通して、〇〇と考えるようになりました。
使い分けが必要な理由
微妙なニュアンスの違いまで考えて使い分ける必要がありますか?
はい。
ニュアンスを的確に伝えられることで、説得力のある文章になります。
細部まで諦めず、意味をまっすぐに届けることを常に考えていきましょう。
言葉の細かい意味に意識を向け、使い分けることには次のメリットがあります。
- ニュアンスを的確に伝えられる
- 誤解や感情の行き違いを避けられる
説得力があり、効果的な文章を綴るためには、細部までこだわる姿勢が欠かせません。
ニュアンスを的確に伝えられる
「通して」と「通じて」を使い分けることで、読み手は文章の意図をスムーズに汲み取れるようになります。
次の例文で確認してみましょう。
プロジェクトを通して学んだ→手段を意図的に選んで行動した
趣味を通じて知るようになった→自然なきっかけから知った
ニュアンスを知って使い分けることで、読み手に違和感を抱かせず、書き手の意図を伝えられます。
誤解や感情の行き違いを避けられる
意味が伝わらない文章や、誤解される文章では、感情の行き違いや混乱が生じてしまうことがあります。
次のように、ニュアンスに沿った使い分けをしてみましょう。
【例文:ニュアンスに沿った使用】
「どのような手段を通して行うのか」
「どのような状況を通じて効果が生まれたのか」
意識して使い分けることで、読み手の混乱を避けられます。
「通して」「通じて」の文法
「通して」と「通じて」の文法を理解することで、ニュアンスの違いが掴みやすくなるでしょう。
【文法の比較】
| 通して(とおして) | 通じて(つうじて) | |
| 文法 | 動詞「通す」の連用形➕接続助詞 | 動詞「通じる」の連用形➕接続助詞 |
| もとの動詞 | 通す
他動詞(〜を通過させる) |
通じる
自動詞(〜が伝わる・繋がる) |
| 核にある意味 | 主体の意志による行為 | 自然な伝達による状態の変化 |
「通して」「通じて」の言い換え表現
「通して」「通じて」の使い分けに迷ったときには、別の表現を使ってしまうという方法もあります。
言い換え表現を確認してみましょう。
〜を介して
「〜を介して」の意味は、「〜を仲立ちとして」です。
【例文】
上司を通して知り合った
↓
上司を介して知り合った
〜によって
「〜によって」は、手段や原因などを表します。
【例文】
プロジェクトを通して、知名度を広めた
↓
プロジェクトによって、知名度を広めた
〜の間ずっと
期間を表すときには「〜の間ずっと」と言い換えることもできます。
【例文】
1年と通じて、温暖な気候だ
↓
1年の間ずっと、温暖な気候だ
「通り」と「とおり」公用文では?
「通り」と「とおり」も使い分けを悩む場面があります。
形式名詞の場合には、「とおり」と平仮名で表記しましょう。[注1]
| 通り(漢字表記) | とおり(平仮名表記) |
| 固有名詞 | 形式名詞 |
|
|
形式名詞について解説した記事もご覧ください。↓
[注1]参考:文化庁「新しい『公用文作成の要領』に向けて(報告)」pdf
「通して」と「通じて」はニュアンスの違いを考えて使い分けよう
説得力のある文章のためには、ニュアンスまで考えて使い分けましょう。
細部までこだわることで、意味がわかりやすく伝わり、スムーズに読み進められる文章になります。
AIを使用して、とりあえず文字を羅列しただけでは、意味は少しも頭に入らないということはないでしょうか。
読み手に伝えるために、妥協は禁物です。
読み手に、まっすぐ意味を届けられるよう、常に考えていきましょう。






