意味が伝わりにくい、あいまいでおおざっぱな印象を与えてしまう文章は、読者をイラッとさせてしまうものです。誤解を生じさせ、あいまいな印象を与えてしまう原因の一つには、形容詞の誤用が考えられます。
今回は、形容詞の適切な使い方で知的な文章を作るためのコツを解説します。
目次
そもそも形容詞とは?
形容詞の使い方の前に、まず形容詞とはどのような言葉なのか確認してみましょう。
形容詞は物事の性質や状態を表す言葉で、名詞の直前にきて名詞を修飾(情報や意味を加えること)します。基本形は「〜い」で終わる自立語です。
(形容詞の例)かわいい・優しい・おいしい・若い・古い・大きい
形容詞の活用語尾は「かろ・かっ・く・い・い・けれ」
形容詞が他の言葉と大きく違うのは、連なる言葉によって活用(未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形)があることです。活用形によって語尾が変わることがあります。例として「優しい」の活用を表にまとめました。
形容詞には語幹(活用で変化しない部分)と活用語尾(活用で変化する部分)があります。
形容詞は活用形が全て同じですから、覚えやすいですよ。
活用の種類 | 語幹 | 活用語尾 | 活用後の形容詞(太字は後に連なる言葉) |
未然形 | 優し | かろ | 優しかろう |
連用形 | かっ・く | 優しかった・優しくなる・優しくない | |
終止形 | い | 優しい(言い切り) | |
連体形 | い | 優しいとき | |
仮定形 | けれ | 優しければ |
形容詞の使いすぎは避ける!多用しすぎると軽い文章になる
形容詞は名詞を修飾するために使う言葉ですが、簡単に性質や程度を表現できるので、つい多用してしまうのが形容詞の落とし穴といえます。形容詞を使いすぎると、読者をイラッとさせてしまったり、賢くなさそうな印象を与えてしまったりすることがあります。
そうならないように、まずは形容詞を使いすぎることの危険性を学びましょう。
おおざっぱであいまいな印象を与えてしまう
形容詞は使いすぎるとおおざっぱな印象を与えます。文章の中に含まれすぎていると意味が伝わりにくくなり、あいまいな表現になってしまうのです。
例えば、こんな形容詞の使い方はNGです。
例文:
- いい会社です。
- すごい会社です。
このように会社のアピールをされても、「いい会社なんだ!この会社に入社したい!」と思えるでしょうか。このような、おおざっぱなは会社の情報は、他と比較したり検証したりする題材にすらなりません。リアリティーがなく詳細が伝わらないため、多くの人にとって魅力的に感じられることはないでしょう。
主観的な形容詞で読者に誤解を与えてしまう危険性がある
形容詞の間違った使い方は自己中心的な印象を与えてしまいます。主観的な言葉で発想を膨らませてしまう危険性があるのです。
例文で考えてみましょう。
例文:
- 早朝の駅は人が少ない。
- 年明けのショッピングモールは人が多い。
このように「少ない」「多い」といった量を表す形容詞は、読み手によって解釈が異なるため多用しないようにしなければなりません。100人を「多い」と捉えて記載しても、「多い」と読んだ人は10,000人を想像するかもしれないのです。こうして発信者と読者の感覚に差が生まれると、文章全体を誤解してしまう危険性もあります。
特にネガティブな形容詞はストレートすぎる印象を与えることがある
さらに、形容詞はストレートすぎる印象を与えて読者をいら立たせてしまうこともあります。特にネガティブな内容を説明するための形容詞は要注意です。
例文:
- 赤ちゃんの泣き声がうるさい
- 仕事にやりがいのない人生はつまらない。
こうしたネガティブな表現の形容詞はオブラートに包んだほうが良いでしょう。子どものいる母親からすると「うるさい」という表現に反感を覚えるかもしれませんし、仕事のない人は「つまらない」を見て、自分の人生を否定されたように感じるかもしれません。必要以上に鋭くなりがちな形容詞はできるだけ使わないようにしましょう。
日常的に形容詞の使用を控える必要性
「かわいい」「やばい」「すごい」など若い世代によく使われる言葉はほとんどが形容詞で、人が何かに触れて反応する時につい口から出る言葉です。
例えば「やばい」は本来「あぶない」や「不都合」といった意味がありますが、「おいしい」「すごい」「格好良い」「とても良い」という意味などでも使われることも増えてきました。もしかすると、日常会話で使う形容詞はほとんど「やばい」で代用されてしまうケースもあるかもしれませんね。
友人との会話やプライベートのSNSであれば大した問題はないかもしれませんが、しっかりしたWEBサイトのコンテンツでは違います。
形容詞を多用すれば楽に文章が書けるかもしれませんが、稚拙な印象を与えやすく、伝えたい内容も読者に正確に伝わりにくくなってしまいます。
日常的に形容詞を多用するのを避けて、別の言葉で表現する習慣をつけておくことをおすすめします。
形容詞を多用しないためにできる3つのコツ
形容詞の間違った使い方をすると読者に読んでもらえない残念な記事になる危険性があることを説明してきました。では、形容詞を多用しないために具体的にどうすればよいのでしょうか。ここからは、知的な文章を作るための3つのコツをご紹介します。
動詞に変える
1つめにできることは、形容詞を動詞に変えることです。
暑い、うれしい、たのしいなど、感じていることを表す形容詞は、動詞に変えることで一気に具体性を増すことが出来ます。
例文1:
今日はとても寒いです。→今日の寒さは体が震えるほどです。
例文2:
あなたに会えてうれしかったです。→あなたに会えて心が弾みました。
例文3:
女子会は楽しかったです。→女子会で元気をもらいました。
このように、簡単に使える形容詞を、より具体的な動詞で表すことにより、気持ちがどの程度なのかをはっきり読者に理解してもらうことが出来るのです。
慣用句に変える
2つ目のコツは、形容詞を慣用句に替えるというものです。昔から言い広められている言葉や言い回しである慣用句を使うことで、文章の知性が一気に増します。
例文1:
今日はとても寒いです。→今日の冷気は肌を刺す。
例文2:
あなたに会えてうれしかったです。→あなたに会えて胸を躍らせました。
例文3:
女子会は楽しかったです。→女子会では話が弾みました。
具体的数値などを付け加える
3つ目のコツは形容詞に具体的な数値を付け加えるというものです。数値が加わると同じ形容詞でも具体性が増します。より詳しい情報をあげることによって同じ形容詞でも説得力のある文章に変わるのです。
例文1:
今日はとても寒いです。→今日は気温0度でとても寒いです。
例文2:
あなたに会えてうれしかったです。→1年ぶりにあなたに会えてうれしかったです。
例文3:
女子会は楽しかったです。→女子会が楽しくて3時間があっという間に過ぎました。
形容詞の使い方に配慮して知的な文章を提供する
形容詞は使い方を改善すれば、分かりやすく名詞を説明することが出来ます。商品を説明したり、おすすめの知識や情報を公開するときには、形容詞で埋めてしまうのではなく、より具体的な数値を提示したり、慣用句や動詞に言い換えたりすること。そうすることで記事全体の説得力が増し、読者の関心を引きつけることにも役立つでしょう。