「編集長がいらっしゃいます」
「編集長がいらっしゃります」
あれ?どちらが正しいですか?
どちらが正しいのか、迷うときがありますね。
今後、迷うことのないように、正解を確認しておきましょう!
「いらっしゃいます」と「いらっしゃります」は、どちらも正しいといえます。
ただし、「いらっしゃいます」の方が現代的で、一般的な形です。
ビジネスシーンや日常会話では、「いらっしゃいます」を使えば間違いないでしょう。
「いらっしゃいます」と「いらっしゃります」について、解説します。
どちらが正しいのか、なぜ違いが生まれたのか、確認してみましょう。
目次
多くの場面で正しいのは「いらっしゃいます」
現代の表現として正しいのは、「いらっしゃいます」の方です。
【例文】
❌ 先生はいらっしゃりますか?
◯ 先生はいらっしゃいますか?
しかし、文法では、「いらっしゃります」が本来の形であるため、迷いが生じるのです。
- 「いらっしゃる」+「ます」→「いらっしゃります」
では、なぜ、「いらっしゃります」が「いらっしゃいます」に変化したのでしょう。
それは、「言いやすさ」に理由があります。
「いらっしゃります」を、「イ音便」で言いやすく変化させたのが「いらっしゃいます」なのです。
【文法】「いらっしゃります」が本来の形である理由
「いらっしゃいます」が一般的であるとしても、文法ルールでは、「いらっしゃります」が本来の活用形です。
基本:「ます」の前は「連用形」
動詞に助動詞「ます」をつける場合、動詞は「連用形」に変化します。
- 例1:書く→「書き」+「ます」→書きます
- 例2:食べる→「食べ」+「ます」→食べます
上記の「書き」「食べ」が、「連用形」にあたります。
「いらっしゃる」は「ラ行五段活用」
「いらっしゃる」は、「ラ行五段活用」の動詞です。
| 活用形 | 活用語尾 | 語形 |
| 未然形 | ら | いらっしゃら |
| 連用形 | り/い | いらっしゃり
いらっしゃい(イ音便) |
| 終止形 | る | いらっしゃる |
| 連体形 | る | いらっしゃる |
| 仮定系 | れ | いらっしゃれ |
| 命令形 | い/ませ | いらっしゃい
いらっしゃいませ |
「いらっしゃる」の連用形は「いらっしゃり」です。
文法ルールに忠実な活用
「走る」「作る」「帰る」なども「ラ行五段活用」の動詞に属します。
「ラ行五段活用」の動詞に「ます」をつけると、どのように変化するのか見てみましょう。
【「走る」の場合】
動詞:走る
連用形:走り
丁寧形(+ます):走ります
【「作る」の場合】
動詞:作る
連用形:作り
丁寧形(+ます):作ります
【「帰る」の場合】
動詞:帰る
連用形:帰り
丁寧形(+ます):帰ります
「走り+ます→走ります」のように、「いらっしゃり+ます→いらっしゃります」となります。
【「いらっしゃる」の場合】
動詞:いらっしゃる
連用形:いらっしゃり
丁寧形:いらっしゃります
上記のように、「いらっしゃります」が、本来の文法ルールに忠実である場合です。
「いらっしゃいます」が主流になった背景
文法ルール上は、「いらっしゃります」が本来の形であるにもかかわらず、なぜ、現代では「いらっしゃいます」が主流となったのでしょう。
日本語がもつ「音便(おんびん)」という現象に鍵があります。
音便とは:言いやすさのための変化
「音便」とは、言いやすさのために、単語の一部の音が、本来の音とは違う音に変化する現象を指します。
音便は、変化後の音の種類によって、主に4つに分類されます。
- イ音便(いおんびん)
- 促音便(そくおんびん)
- 撥音便(はつおんびん)
- ウ音便(うおんびん)
それぞれ、確認してみましょう。」
【イ音便】
語中の「き」「ぎ」「し」「り」などの音が「い」の音に変化する
- 書きて → 書いて (kaki-te → kaite)
- 急ぎて → 急いで (isogi-de → isoide)
- ござります → ございます (gozari-masu → gozai-masu)
- いらっしゃります → いらっしゃいます (irasshari-masu → irasshai-masu)
丁寧語の「ございます」は、このイ音便によって生まれた形です。
【促音便】
「ち」「ひ」「り」などの音が、詰まる音である「っ」に変化する
- 立ちて → 立って (tachi-te → tatte)
- 言ひて → 言って (ihi-te → itte)
- 取りて → 取って (tori-te → totte)
「待って」「売った」など、タ行・ラ行・ワ行の五段活用動詞の多くに見られます。
【撥音便】
「び」「み」「に」などの音が、撥(は)ねる音である「ん」に変化する
- 読みて → 読んで (yomi-te → yonde)
- 遊びて → 遊んで (asobi-te → asonde)
- 死にて → 死んで (shini-te → shinde)
「飛んだ」「休んで」など、バ行・マ行・ナ行の五段活用動詞に見られます。
【ウ音便】
「ひ」「び」「み」などの音が、「う」の音に変化する
- 言ひて → 言うて (ihi-te → iute)
- はやく→はやう(hayaku → hayau)※おはようございます」の中に形が残る
- 思ひて→思うて(omohi-te → omoute)
現代ではあまり見られませんが、方言、古典的な表現、一部の単語に残っています。
イ音便の例
「イ音便」の代表的な例として、「ございます」が挙げられます。
「ございます」は、「ござる」の連用形「ござり」に「ます」がついた「ござります」が本来の形です。
しかし、「ござります」は、発音しにくいと感じられるでしょう。
そこで、発音しにくい「り」の音が「い」に変化する「イ音便」が発生しました。
その後、よりスムーズに発声できる「ございます」という形が、世の中に定着しました。
-
- 本来の形:ござり + ます → ござります
- イ音便化: ござ り ます → ござ い ます(言いやすい!)
「いらっしゃります」から「いらっしゃいます」へ
「ございます」と同じ理由で、「いらっしゃります」も「いらっしゃいます」へと変化します。
「いらっしゃります」は、やはり「り」の音が発音しにくく、日常生活で使うのには固さのある表現です。
そこで、よりスムーズに発音したいという自然な流れの中で「イ音便」が適用されていきました。
- 本来の形:いらっしゃり + ます → いらっしゃります
- イ音便化:いらっしゃ り ます → いらっしゃ い ます(言いやすい!)
言葉は、「発音しやすさ」によって変化することがあります。
「いらっしゃいます」は、イ音便が適用され、定着した、正しい言葉遣いなのです。
くださいます・なさいます・おっしゃいます
「イ音便」による変化は、「いらっしゃいます」だけの現象ではありません。
多くの尊敬語が、同じように、言いやすい形へと変化しました。
くださいます
「くださいます」は、相手が自分にしてくれる行為への敬意を示す「尊敬語」+「丁寧語」です。
- 本来の形:くださり + ます → くださります
- イ音便による変化:くださいます
【例文:くださいます】
× 先生が、書いてくださります。
◯ 先生が、書いてくださいます。
なさいます
「なさいます」は、「なさる」をさらに丁寧にした言葉です。
- 本来の形:なさり + ます → なさります
- イ音便による変化:なさいます
【例文:なさいます】
× 部長がご挨拶をなさります。
◯ 部長がご挨拶をなさいます。
おっしゃいます
「おっしゃいます」は、「おっしゃる」を、さらに丁寧にした言葉です。
敬うべき相手が、何かを「言う」場合に、敬意を表すために使います。
- 本来の形:おっしゃり + ます → おっしゃります
- イ音便による変化:おっしゃいます
【例文:おっしゃいます】
× お客様が、意見をおっしゃります。
◯ お客様が、意見をおっしゃいます。
迷わず「いらっしゃいます」を使おう
「いらっしゃります」と「いらっしゃいます」で、迷う場面があったら、「いらっしゃいます」を使いましょう。
ビジネス、接客、日常会話など、あらゆる場面で、正しいとされる言い方が「いらっしゃいます」の方です。
「いらっしゃります」を使うことには、知識不足と誤解されたり、慇懃無礼に聞こえたりするリスクがあります。
避ける方が無難でしょう。
「イ音便」で発音しやすい「いらっしゃいます」を使い、敬意をスムーズに伝えることが大切です。






