あの人は気が置けないから一緒にいて疲れます。
おっと。
その「気が置けない」は間違った意味で使っていませんか?
「気が置けない」は「相手に遠慮する必要がなく、心から打ち解けるられる」という意味です。
そうでしたか!
「相手に遠慮しなくてはならない」という意味で使っていました。
間違えていました。
「気が置けない」とは、「相手に遠慮する必要がなく、心から打ち解けられる」という意味の慣用句です。
次のように使うのが本来の意味に合っています。
- 気が置けない友人は一緒にいて疲れない
今回は、誤用が多い慣用句「気が置けない」についてわかりやすく解説いたします。
目次
【意味】「気が置けない」は「遠慮がいらない」の慣用句
「気が置けない」は次の意味を持つ慣用句です。
気が置けない
相手に遠慮したり気をつかったりしなくてよい
つまり、「相手に遠慮しなくてよい」ということですね。
心から打ち解けられる人に使う表現なのがわかりました。
そうです。
「気が置けない友人といるとくつろげる」のように使います。
デジタル大辞泉にも次のように記載されています。[注1]
【デジタル大辞泉】
気(き)が置(お)けない
慣:遠慮したり気をつかったりする必要がなく、心から打ち解けることができる。「ー・ない間柄」
◆文化庁が発表した「国語に関する世論調査」で、「その人は気が置けない人ですね」を、「<相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい>と<相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならない>」の、どちらの意味だと思うかを尋ねたところ、次のような結果が出た。
相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい(本来の意味とされる)
平成14年度調査:44.6パーセント
平成18年度調査:42.4パーセント
平成24年度調査:42.7パーセント
相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならない(本来の意味ではない)
平成14年度調査:40.1パーセント
平成18年度調査:48.2パーセント
平成24年度調査:47.6パーセント
やはり誤用が多いのが気になります。
「相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならない」と、間違った意味で認識してしまっている人が平成24年度の調査では47.6%です。[注2]
「気が置けない」という言葉が、「気を許せない」や「信頼が置けない」という言葉と混同されがちなのかもしれません…
[注1]小学館/デジタル大辞泉
[注2]文化庁/平成24年度「国語に関する世論調査」の結果の概要[pdf]
【例文】「気が置けない」の使い方
「気が置けない」はどのように使うのか、例文で確認してみましょう。
【例文:気が置けない】
気が置けない友人といるととても落ち着く
幼馴染は気が置けないからこれからも付き合いたい
気が置けない仲間と行く旅行は楽しい
次の食事会は気が置けない友人だけだから気が楽だ
入学してから初めて気が置けない友人ができた
彼は気が置けない友人だから何年も付き合っている
「気が置けない」は、「遠慮がいらない・気配りがいらない・気を使わなくてよい」という意味なので、親密な間柄の友人に対して使われることが多いです。
長年のお付き合いではなくても、親しく遠慮がいらない間柄であれば、「気が置けない間柄」といえます。
【語源】「気が置けない」の由来
「置く」には、次の意味もあります。
徒然草に次の文章があります。
【徒然草37】
原文:
朝夕、隔てなく馴れたる人の、
ともある時、
我に心おき、ひきつくろへるさまに見ゆるこそ、
現代語訳:
普段は慣れ親しんでいる人が、
ふとした時、
私に気配りをして、整った身なりをしている様子に見えるのは、
上記の文章では、「心おき」が、「気配りをする」という意味で使われています。
当時、「心を置く(気を置く)」ことが、「心を配る」という意味として使われていたことがわかります。
「心(気)を置く」が「心を配る、気兼ねをする」であるなら、その否定形である「気が置けない」は、「心配りがいらない、気兼ねがいらない」という意味になるのでしょう。
【類語】気が置けないの類語
「気が置けない」が、「心配りや遠慮がいらない」という意味だとわかりました。
誤用が多いこともわかりました。本来の意味で使うと、勘違いする人がいるかもしれません。
ほかの言い方があれば教えてください。
わかりました。
気が置けないの類語を3つご紹介します。
気が置けないの類語を確認しましょう。
より伝わりやすい表現があれば、そちらに書き換えるのもよいでしょう。
気心の知れた
「気心」は、「その人が本来もっている性質や考え方」という意味です。
「気心の知れた友人」といえば、「お互いのことをよく知っている友人」であることがわかります。
【例文:気心の知れた】
彼とは10年来の付き合いで、気心の知れた仲だ。
気心の知れた友人だから、何でも話せる。
気の許せる
「気の許せる」も、相手に遠慮しないで接することができる意味があります。
【例文:気の許せる】
彼女とは気の許せる関係だ。
気の許せる友達といると楽しい。
気兼ねない
「気兼ね」は、「他人の思わくなどに気をつかうこと。遠慮」という意味です。
「気兼ねない」で、「遠慮ない」という意味を表します。「気遣いのいらない・遠慮のいらないこと」を表現できます。
【例文:気兼ねない】
彼とは幼馴染の気兼ねない関係だ。
気兼ねない仲だから何でも言ってほしい。
【対義語】気が置けないの対義語
「気が置けない」の対義語も知っておきたいです。
わかりました。
それでは、「気が置けない」の対義語もご紹介します。
「心配りや遠慮が必要」という意味で「気が置けない」が間違って使われていることもあります。
そうした場合には、「気が置けない」の対義語を使って修正してもよいでしょう。
気兼ねする
「気兼ね」とは、「他人の思わくなどに気をつかうこと。遠慮」を意味します。
「気兼ねする」で、相手に遠慮することを表現できます。
【例文:気兼ねする】
隣近所に気兼ねして、小さな声で喋る。
気兼ねする仲だから、なかなか本音が言えない。
気が張る
「気が張る」は、「気持ちを引きしめる。緊張する」という意味です。
遠慮や心配りが必要ない気楽な様子とは反対の意味です。
【例文:気が張る】
校長先生の前では気が張る。
知り合って間もないため、気が張る関係です。
「気が置けない」は約半数の人が間違った意味で使用している
内閣府の「国語に関する世論調査」によると、「気が置けない」の意味を約半数の人が間違えてしまっている結果があります。[注2]
平成24年 | 平成18年 | 平成14年 | |
(ア)相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい | 42.7% | 42.4% | 44.6% |
(イ)相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならない | 47.6% | 48.2% | 40.1% |
(ア)と(イ)両方 | 1.2% | 1.4% | 2.2% |
(ア)(イ)とは別の意味 | 4.7% | 1.4% | 6.3% |
分からない | 3.8% | 6.7% | 6.9% |
平成24年の結果では、次の点が注目されます。
- 相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい: 42.7% (本来の意味)
- 相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならない: 47.6% (間違った意味)
約半数の人が間違った意味を選択しています。
わずかな差とはいえ、本来の意味を選択した人のほうが少ないようです。
誤用がこれだけ多いということは、本来の意味で正しく使用しても、意味を勘違いして理解されてしまう恐れがあります。
[注2]文化庁/平成24年度「国語に関する世論調査」の結果の概要[pdf]
英語の「気が置けない」は?
「気が置けない」を英語で表現するなら、次の3つがおすすめです。
close
closeは、「親密な、親しい」という意味があります。
a close friend(親友)
people(who are)close to him(彼に親しい人々)
friendly
friendlyには、「友人にふさわしい、親しみのある、好意的な」という意味があります。
He became friendly with them.(彼は彼らと親しくなった)
She was smiling at me in a friendly way.(彼女は親しみをもって私たちに笑いかけた)
casual
casualには、「態度、雰囲気などがうちとけた」という意味もあります。
a casual meeting(気の置けない集まり)
Don’t be too casual with me.(あまりなれなれしくしないで)
「気が置けない」はプラスの意味を持つ慣用句
「気が置けない」は、「遠慮がいらない、気配りが必要ない」というプラスの関係や様子を表す言葉です。
しかし、「気が置けない」は、「油断ならない」などのマイナスの意味と勘違いしている人も多い言葉のようです。
意味を誤解している人が約半数もいるとの調査結果もあります。
「気が置けない」を間違えて理解しないことも大切ですが、さらに、使用する際も、読み手に誤解されないよう注意しましょう。