Webサイト内に設置するべき内部リンクの本数には、具体的な定義がありません。検索エンジンを提供しているGoogleさえも具体的な数字を挙げておらず、インターネット上には様々な考察があるものの、どれも納得のいく説明とはいえないです。
そこで本記事では、Webページ内に設置するべき内部リンクの本数について、(1)SEO対策との関連性をご紹介したで、(2)行動経済学の学説を参考に、サイト内にどのような内部リンクをどれだけ設置するべきか考察していきます。
目次
適切な内部リンク数は明確に定義されていない
ページ内に含めるべき内部リンク本数を考察するにあたって、まずはGoogleが内部リンクについてどのような見解を持っているのか再確認していきましょう。
多すぎる内部リンクに対するGoogleの見解
Googleはウェブサイト内に設置するべき内部リンクの数について、次のような見解を述べています。
<Googleがページを検出できるよう手助けする>
(中略)
- 1 ページのリンクを妥当な数に抑えます(最大で数千個)。
以上の文章はGoogleが公開している「ウェブマスター向けガイドライン」から引用したものであり、これを遵守することでウェブサイトがGoogleから正しく認識され、ランク付けをするプロセスをスムーズに行う手助けに繋がるのだとされています。
したがって上記の意味での「多すぎる内部リンク」とは、GoogleクローラーによるWebサイト監査の限界値を示唆する言及であり、ページのインデックスを意図的に削除する「手動ペナルティ」とは全く関係のない言及であると考えられます。
一方で、検索結果ランキングを故意に操作することを目的とした大量の内部リンク設置については、Googleによる具体的な言及が見られました。
次のような手法を使用しないようにします。
(中略)
- リンク プログラムへの参加
PageRank や Google 検索結果でのサイトのランキングを操作することを目的としたリンクは、リンク プログラムの一部と見なされることがあり、Google のウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン)への違反となる場合があります。これには、自分のサイトへのリンクを操作する行為も、自分のサイトからのリンクを操作する行為も含まれます。
Googleはリンクについて、「自然なリンクを掲載する」という表現を何度も利用しています。自然なリンクとは、例えば「ある商品を誰かに共有したい時のリンク」「便利なサイトを共有したい時のリンク」などが該当します。
そういった「自然なリンク」の枠組みから逸脱したリンクは全て「不自然なリンク」としてみなされ、Googleの手動による対策(手動ペナルティ)の対象となることが明記されていました。
サイトにおいて、他サイトへの不自然、人為的、偽装、または不正なリンクのパターンが検出されました。PageRank を操作することを目的としたリンクの購入やリンク プログラムへの参加は、Google のウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン)に違反しています。
出典:Search Console ヘルプ|サイトからの不自然なリンク
したがって、①内部リンクは必要性に応じて掲載すべきであり、②そこに妥当性があるなら1ページあたりの内部リンク数に制限はないものの、③数千個を超える数の内部リンクはクローラーが精査できないのだと理解できます。
結論としては、検索結果のランキング操作を目的とした不自然かつ大量のリンクは避けるべきだと判断できるでしょう。
Googleクローラーについては、下記の記事をご参照ください。
内部リンクを大量に設置することで間接的に生じる悪影響について
前提確認:
内部リンクが多すぎる状態とは「ユーザーがアクセスできる遷移先が大量にある」ということを意味します。そういった状態のWebページでは、次のような現象が起こります。
- ユーザーが知りたい情報を見つけられず、離脱する
- ユーザーが知りたい情報を選び切れず、離脱する
- ユーザーに見せたい情報が埋もれてしまい、Webサイト業績が悪くなる
次に2つの例を掲載し、順を追って解説していきます。
1. 大量の内部リンクはユーザーの選択行動を阻害する
Webページ内に設置された大量の内部リンクは、ユーザーの選択行動を阻害する要因となります。
例えば社内で共通に利用しているパソコンのデスクトップが用途不明のフォルダだらけで、全く整理されておらず画面を埋め尽くしている……という状態を想像してみてください。
普段使いしている自分のデスクトップならさておき、共用パソコンのデスクトップがその状態なら、不便極まりないはずです。
必要な情報をすぐに見つけることができず、判断に迷い、情報を探すことさえ諦めてしまうことも考えられます。
これは大量の内部リンクが設置されているWebページにおいても同様のことが言えます。
- 知りたい情報について、どこからアクセスできるかわからず、ブラウザバックする
- 気になる情報が多すぎて、どのページから参照すべきかわからない
Webサイト内でユーザーが上記行動を取れば、コンバージョンしていたはずの顧客を取り逃してしまうことにも繋がります。
Webサイト単位で蓄積されるユーザー行動データ(UXデータ)の観点からも、良くない状況だと言えるでしょう。
したがってWebページには大量の内部リンクを置くべきではなく、戦略的に、必要な情報のみを内部リンクとして掲載するべきです。
2. 大量の内部リンクを目にしたユーザーは、リンククリックの決断ができない
大量の内部リンクがWebサイトに与える悪影響について、もう1つ例を挙げて説明します。
<新人研修の際、新人は業務について学びたい>
・上司から「このフォルダに入ってるマニュアルに目を通しておいて」と指示があった。
・フォルダを開いたら、あらゆるファイルが無秩序に散らかっている状態だった。
・どのファイルから目を通すべきかわからず、そっとブラウザーを閉じた。
人間は大量の選択肢を目にした時、選択に迷うか、選択を辞めることがわかっています。
このことについては、行動経済学の世界において “選択のパラドックス” を説明した「ジャム実験」が有名です。
<ジャム実験>
24種類のジャムを陳列した時と、6種類のジャムを陳列した時の総売り上げを比較した。
ジャムの種類以外の条件は同じだったにもかかわらず、最終的な売り上げは「6種類のジャムを陳列」した時の方が高かった。<解説>
24種類のジャムが陳列された棚と、6種類のジャムが陳列された棚では、後者の売上の方が高かった。
人間は多すぎる選択肢を目にした際、判断に迷い、決断できなくなる(ジャムの購入に至らない)。
多すぎる内部リンクが含まれるWebサイトでも同様のことが言えます。
大量の内部リンクが設置されたページを目にしたユーザーは、内部リンクの内容を検討することに疲れ、その内容を精査しようとせず、最終的にブラウザバックしてしまうことが考えられるでしょう。
ランディングページへユーザーを誘導することで収益化しているWebサイトにおいて、これは致命的な影響を与えます。①ユーザーが多すぎる選択肢を持つことで、選択すること(ページ移動すること)自体を辞めてしまう可能性がありますし、②そもそも選択肢が多くなるほど重要なページへユーザーが遷移する確率は低くなると考えられるからです。
Webページ内に含めるべき内部リンクを検討するポイント
これまでの内容を踏まえるに、内部リンクは、①リンクを掲載する妥当性のあるページで、②サイト内の重要性が高く、ユーザーに見せたいきページのみを掲載するべきだと考察できます。
そうすることによって、Webサイト本来の目的を達成しやすくなるからです。
検索結果の上位に自社サイトが掲載されることばかりを追い求めるあまり、Webサイト本来の目的を見失ってはいけません。
そこで本章では、いわば内部リンクの断捨離をすべく、どのようなポイントで最適な内部リンクを検討するべきか解説します。
1. サイト全体に共通してリンクが掲載される場所を見直す
まずは、トップページやサイドバーなど「サイト内の全てのページにおいて共通したコンテンツが表示される」ことが多い場所の内部リンクを見直しましょう。
見直し:意味のない内部リンク(選択肢)を減らす
1. トップページからのリンク
2. サイドバーからのリンク代替策:より掲載効果の高いリンクを設置する
1. お問い合わせページなど、サイト運用目的に沿ったコンテンツ
2. コンテンツと関連性の高いページ
3. 広告(要検討)
トップページに設置されているリンク
日本の多くのWebサイトでは、トップページに新着記事が一覧表示される設定が為されています。
この設定はサイト訪問ユーザーの目的がハッキリしてるサイトでは非効率的であり、「無駄な内部リンク」だと判断できる場合が多いです。
すでにオウンドメディアを運用している方で、トップページで新規記事を一覧表示させている方は、Googleアナリティクスを利用して「個別ページからトップページへ移動したユーザーの次の行動」を計測してみましょう。
その結果、トップページから新規記事へのアクセスが少ない様であれば、新規記事ではない別のコンテンツを掲載するべきだと言えます。
せっかくサイトに訪問した見込み客を取り逃がさないためにも、よりユーザーの興味関心に寄り添った、サイトの目的を達成できるようなコンテンツの挿入を検討しましょう。
サイドバーに設置されている内部リンク
サイドバーにWebサイト閲覧ユーザーの関心が高い情報を掲載すれば、ユーザーはあらゆるページから該当ページへアクセスするようになり、サイト内の回遊率が向上します。
そのような背景からサイドバー部分には「人気記事ウィジェット」や「新着記事一覧」ウィジェットを設置しているWebサイトが多いです。
しかしながら、「人気記事」や「新着記事」は、本当にユーザーが興味関心を抱くページなのでしょうか?
人気記事ウィジェットに表示される記事が「人気」である理由とは、多くの場合、該当する記事が「検索ボリュームの高いクエリで上位表示されているから」でしょう。
そうであるならば、ここで言う「人気記事」が「サイトに訪れるユーザーが興味関心を抱くページ」であるとは言えません。それは単に検索エンジンから多くアクセスされているだけであって、「人気」の意味を履き違えているのです。
人気記事ウィジェットによって自動的に表示される記事群が、実際のWebサイト閲覧ユーザーの興味関心から遠く離れているなら、それらはサイドバーに設置するべきでないコンテンツだと言えます。
こちらも実際のクリック率を計測してみて、他に挿入すべき特定のコンテンツ(内部リンク)がないか検討するべきでしょう。
サイトの回遊率については、下記の記事をご参照ください。
2. 内部リンクを設置するのではなく、ユーザーにサイト内を検索させる
内部リンクによってユーザーのサイト内回遊を促すのではなく、代わりにサイト内検索機能を利用することも有効な施策です。
サイト側がユーザーの興味関心を汲み取ったコンテンツをサジェストするのではなく、ユーザーに興味関心のあるコンテンツを探してもらうことで、より効率的にサイト内回遊を促すことができます。
余計な選択肢を与えるのではなく、必要最低限の選択肢を与えることで、これまで紹介した懸念点を全てクリアできます。
施策を検討する場合はABテストを行い、変更前後で数値を比較した上で、より効果的なUI設計を模索することを推奨します。
UI/UX設計については、下記の記事をご参照ください。
自社サイトに最適な内部リンク構成を模索しよう
本記事ではサイト内に大量の内部リンクが設置されている状況について、SEO対策の観点と、ユーザビリティの観点の両側面から考察しました。
大量の内部リンクについて、Googleは次のように提唱しています。
- 内部リンクは必要性に応じて掲載すべき
- そこに妥当性があるなら1ページあたりの内部リンク数に制限はない
- 数千個を超える数の内部リンクはクローラーが精査できない
- 内部リンクは必要に応じて、適切な数を設置する
その上で、以下のような観点からもWebサイト設計を吟味しなおすべきです。
- 多すぎる内部リンク(選択肢)を目の当たりにしたユーザーは、選択に迷う
- 多くの選択肢がある場合、決断することを諦めてしまうユーザーも多い
総括して、Webサイト担当者はあらゆる要素を検討した上で、自社サイトに最適な姿を模索していくべきだといえます。「ほかのサイトがそうだから」といって、理由もなく設置していた内部リンクは最適解ではないかもしれません。
Webサイトの業績を底上げするためにも、その妥当性を再検討してみましょう。