重複の読み方は、「ちょうふく・じゅうふく」で迷うことがあります。
「じゅうふく」では間違いだという考え方もあります。
どうなのでしょう?
はい、はっきりさせましょう。
「ちょうふく」も「じゅうふく」も正しい読み方です。
本来は「ちょうふく」であったものが、「じゅうふく」という読み方が広まり、現在では認められるようになりました。
さて、その重複ですが、文章のなかで知らずに重複表現を使ってしまうことがあります。
- 頭痛が痛い
- 馬から落馬する
上記は有名な例です。そこまでわかりやすくなくても、「たいていの場合、賛成の場合が多い」などと、すっきりしない重複を書いてしまうこともあります。
今回は、重複の読み方と意味、文章中の削除すべき重複をご紹介いたします。
目次
【重複の読み方】ちょうふく・じゅうふく
「重複」をどんなふうにお読みでしょうか。
「じゅうふく」と読む方もいれば、「ちょうふく」が正しい読み方だと主張する方もいらっしゃいます。
「ちょうふく・じゅうふく」どちらの読み方をしても間違いではありません。
「重複」は、「ちょうふく」が本来の読み方とされています。しかし、現在では「じゅうふく」という読み方も認められています。つまり、どちらの読み方をしても大丈夫です。
ただし、本来の読み方にこだわる方と会話する場合には、「ちょうふく」を使ったほうがよいかもしれません。
広辞苑には次の記載があります。[注1]
【引用:広辞苑】
ちょうふく【重複】
同じ物事が幾度も重なること。かさなりあうこと。じゅうふく。
「話がーする」「ーを避ける」
じゅうふく【重複】
⇒ちょうふく
広辞苑でも、どちらの読み方も記載されています。
それでは、どちらの読み方をしている人が多いでしょうか。
現在では、「じゅうふく」と読む人が多いようです。
平成15年度「国語に関する世論調査」では、次の記載があります。[注2]
5.言葉の発音
以下の10語について,二通りの発音を挙げ,ふだんどちらで発音しているかを尋ねた。 結果は以下のとおり。(「どちらも同じくらいの割合で言う」「分からない」は省略。)
世論 せろん 18.9%
よろん 73.6%
重複 じゅうふく 76.1%
ちょうふく 20.0%
情緒 じょうしょ 14.9%
じょうちょ 82.2%
固執 こしつ 73.7%
こしゅう 19.5%
施策 しさく 67.6%
せさく 26.1%
早急 さっきゅう 21.2%
そうきゅう 74.5%
地熱 じねつ 43.3%
ちねつ 52.4%
十匹 じっぴき 23.3%
じゅっぴき 75.1%
3階 さんかい 35.7%
さんがい 61.2%
あり得る ありうる 39.8%
ありえる 54.5%
次の結果がわかります。
- じゅうふく:76.1%
- ちょうふく:20.0%
もともとは「ちょうふく」という読み方でしたが、「じゅうふく」という読み方が広まり、現在では、より多くの人が「じゅうふく」と読んでいるのがわかります。
[注1]岩波書店/広辞苑
【重複の意味】同じ物事が重なり合うこと
重複の意味は、同じ物事が重なることです。
デジタル大辞泉に次の記載があります。
【デジタル大辞泉】
ちょうふく【重複】
同じ物事が重なり合うこと。じゅうふく。
「語句のーを避ける」「話がーする」
文章中で、うっかり語句が重複してしまうことがあります。
語句が重複してしまっている文章はよく見かけます。
適切に修正する必要があります。
「文章中で語句が重複する」というのは、「必ず必須です」などのことです。「必須」は「必ず用いるべきこと」という意味です。つまり、「必ず必須です」では、「必ず必ず用いるべきことです」と、重複しているわけです。
すっきりした文章を作成するためには、重複は避けなければなりません。
文章の重複について次で詳しくご説明します。
重複は避ける
伝わりやすい文章を作成するためには、余分な言葉を省く必要があります。
余分な言葉の一つに、「重複」があります。
- 頭痛が痛かったので寝ていました。
- 馬から落馬して骨を骨折しました。
「頭痛が痛い」「馬から落馬」「骨を骨折」は、重複していて、おかしいと感じられてしまいます。
上記は極端でわかりやすい例ですが、普段の会話のなかでも「おやっ」と感じる重複を見逃していることはあります。
【例文:ありがちな重複】
違和感を感じます。
良い朗報があります。
指摘事項を注意したところ…
水分補給を摂ってください。
それは必ず必要です。
貯金を貯めようかな。
金賞を受賞する。
食事を食べましょう。
伝わりやいすっきりした文章のためには、重複を削除しましょう。
【ありがちな重複を削除する】
重複した文章 | 重複を削除した文章 |
違和感を感じます。 | 違和感を覚えます。 |
良い朗報があります。 | 朗報があります。 |
指摘事項を注意しところ… | 指摘事項を伝えたところ… |
水分補給を摂ってください。 | 水分補給をしてください。 |
それは必ず必要です。 | それは必要です。 |
貯金を貯めようかな。 | 貯金しようかな。 |
金賞を受賞する。 | 金賞をとる。 |
食事を食べましょう。 | 食事をしましょう。 |
文章から重複を削除するとすっきりした印象になります。
重複の4つのパターンと言い換え方法
それでは、文章中にある重複を4つに分類して、詳しく見ていきましょう。
パターン1. 同じ意味を繰り返す
同じ意味の表現を重ねてしまうことがあります。
「頭痛が痛い」「後で後悔する」などがこのパターンです。
【同じ意味を繰り返すパターン】
重複 | 言い換え |
その件については、部下に全てを一任しました。 | その件については、部下に一任しました。 |
そのような言い方には違和感を感じます。 | そのような言い方には違和感を覚えます。 |
まずはじめに、〇〇をご説明します。 | まず、〇〇をご説明します。 |
重さはだいたい〇〇ほどです。 | 重さはだいたい◯◯です。
重さは〇〇ほどです。 |
一番最初に、
一番最後に、 |
最初に、
最後に、 |
紫外線が当たると色が変色します。 | 紫外線が当たると変色します。
紫外線が当たると色が変わります。 |
たいていの人は、納得しない人が多い。 | たいていの人は納得しない。
納得しない人が多い。 |
後で後悔するでしょう。 | 後悔するでしょう。
後で悔やむでしょう。 |
間違いなく、そこに原因があるのは確実です。 | 間違いなく、そこに原因があります。
そこに原因があるのは確実です。 |
パターン2. 同じ言葉を繰り返す
一つの文章のなかで、同じ言葉を繰り返すタイプの重複があります。
「間違いなく…確実です」など、気が付かずに使ってしまうことが多いようです。
【同じ言葉を繰り返すパターン】
重複 | 言い換え |
驚いたことに、そのやり方があるのかと驚きました。 | そのやり方があるのかと驚きました。
驚いたことに、そのやり方がありました。 |
ただおいしいだけではなく、色合いも絶妙でおいしいのです。 | ただおいしいだけではなく、色合いも絶妙です。
|
この言葉の意味を知ったのも、その映画と出会って知りました。 | その映画と出会い、この言葉の意味を知りました。
|
担当の方が言うには、そこは危険だと言いました。 | 担当の方が言うには、そこは危険です。
担当の方が、そこは危険だと言いました。 |
パターン3. 「こと」を繰り返す
不要な「こと」を繰り返している文章もあります。
「こと」は一文に一つの方がすっきりします。
【「こと」を繰り返すパターン】
重複 | 言い換え |
サイバー攻撃を防ぐことは大切なことです。 | サイバー攻撃を防ぐのは大切なことです。
サイバー攻撃を防ぐことは大切です。 |
ゴルフをすることができることが条件です。 | ゴルフができることが条件です。 |
高収入であることが幸せなこととは限らない。 | 高収入であることが幸せとは限らない。
高収入が幸せなこととは限らない。 |
簡単にできることが良いことだとは、誰もが思うことです。 | 簡単にできるのが良いとは、誰もが思うことです。 |
パターン4.可能表現を繰り返す
可能を表す表現が重複している文章もあります。
すっきりさせましょう。
【可能表現を繰り返すパターン】
重複 | 言い換え |
検定試験に合格できることができました。 | 検定試験に合格できました。 |
仕事にありつけることができました。 | 仕事にありつけました。
|
皆から集められることができます。 | 皆から集められます。
皆から集めることができます。 |
そちらの入り口から入れることが可能です。 | そちらの入り口から入れます。
そちらの入り口からは入ることが可能です。 |
そのように書かれることができます。 | そのように書けます。
そのように書くことがきできます。 |
よく眠れることが可能です。 | よく眠ることができます。
よく眠れます。 |
重複がある文章は伝わりにくい
重複がある文章は意味が伝わりにくいと感じます。
そうですね。
例えば、次の文章は「こと」が重複しています。
「重複を避けることが理解しやすい文章を書くことには大切です」
もっとすっきりさせましょう。私なら次のように修正します。
「理解しやすい文章のためには重複を避けましょう」
余分な言葉を削ると、本当に伝えたい事柄がはっきりします。
スムーズに伝わる文章ほどシンプルです。
重複を見かけたら修正していきましょう。
【参考文献】阿部紘久「文章力を伸ばす」日本実業出版社