「てにをは」とは言葉をつなぐ「助詞」の総称です。
「てにをは」が1文字変わるだけで、文章のニュアンスがガラリと変化します。
「父 が 本を買ってくれた」
「父 は 本を買ってくれた」
上はどちらも同じ内容の文章ですが、ニュアンスは全く異なります。
「が」を使った文章では、父が強調され、動作もはっきりと感じます。
「は」を使った文章は、柔らかい印象で事実を伝えています。
伝えたい事柄をニュアンスまで的確に伝えるため、「てにをは」の使い方を知っておきましょう。
また、下記の2つの文章はどちらも同じ意味ですが、正しい「てにをは」(助詞)の使い方はどちらでしょうか。
「コーヒー が 飲みたい」
「コーヒー を 飲みたい」
正解は、「が」を使った文章です。
こちらは記事内 【てにをはの使い方1】 でご紹介いたします。チェックしてみてください。
目次
「てにをは」とは助詞の総称
「てにをは」とは、言葉と言葉をつなぐ助詞のことです。
「て」「に」「を」「は」だけを指すのではなく、助詞全般を指します。
助詞の例を挙げます。
【例文:さまざまな助詞】
「花 が咲く」の 「が」
「夢 を掴む」の 「を」
「僕 は 走り出す」の 「は」
上記は助詞「てにをは」を使った文章です。
「てにをは」を一文字間違えると、下記のように意味がわからない文章になってしまいます。
【例文:間違った助詞】
花へ 咲く
夢が 掴む
僕 を 走り出す
このように、助詞である「てにをは」を間違って使用した文章は、
「この文章は、てにをはがおかしい」
と、指摘されることもあります。
「てにをは」は、正しく伝わる文章を書くために、とても大切な要素なのです。
「てにをは」の由来は漢文から
それではなぜ助詞を「てにをは」と呼ぶのでしょう。
「てにをは」の呼び名は漢文に由来します。
漢文を訓読する際には点図を用います。
この点図の四隅の訓点に記されるのが「て」「に」「を」「は」です。
そのため、「てにをは」と呼ばれるようになりました。
ニュアンスを伝える「てにをは」の正しい使い方
「てにをは」は言葉と言葉をつなぐ助詞です。
1文字違うだけで文章のニュアンスがガラリと変わります。
「てにをは」の正しい使い方を知って、ニュアンスまで正確に伝えられるようになりましょう。
【てにをはの使い方1】目的格を表す「が」「を」の使い分け
「てにをは」の中でも、「が」と「を」の使い分けに迷うことがあります。
【例文:「が」と「を」の使い分け】
コーヒー が飲みたい
コーヒー を 飲みたい
上記の文章はどちらも成り立っているように感じますが、次の正解は一文だけです。
【正解】
コーヒー が 飲みたい
コーヒーは目的格であるため、助詞は「を」だと思われがちです。
しかし、意志や願望を表す「〜たい」が語尾にくるときには、「が」が目的格の助詞として選ばれるのです。
ただし、「飲みたい」の後ろに「〜と思う」が続く場合には、助詞は「を」を選択します。
つまり、次の2つが助詞を正しく使った文章です。
【例文:「が」と「を」を正しく使用した文章】
コーヒー が 飲みたい
コーヒー を 飲みたいと思う
細かい部分ですが、正しく使えれば記事作成をワンランクアップさせられます。
助詞「が」は、次の3つを表すときに使います。
- 1. 意志・願望 「〜 が したい」
- 2. 可能・能力 「〜 が できる」
- 3. 感情 「〜 が 好きだ」
それでは、一つひとつ詳しく見ていきましょう。
「を」との使い分けもご説明いたします。
1. 意志や願望を表す助詞「が」「を」
意志や願望を表すときに使う「が」を、例文で見ていきましょう。
【例文:助詞「が」を使用して意志・願望を表す場合】
私は 星 が見たい。
私は 車 が 欲しい。
上のように、「〜したい」「〜が欲しい」という意志・願望を表す場合には、「が」を用います。
ただし、この「〜したい」「〜が欲しい」の後ろに、「~と思う」「~と希望する」などの動詞が加わる場合、助詞は「を」を選択します。
【例文:助詞「を」を使用して意志・願望を表す場合】
私は 星 を 見たい と思う。
私は 車 を 欲しい と思う。
2. 可能を表す助詞「が」
語尾が「〜できる」「〜れる・られる」などの文章で、可能や能力を表す場合にも助詞「が」が使われます。
では、例文で見ていきましょう。
【例文:助詞「が」を使用して可能を表す場合】
絵 が 上手に描ける。
ドイツ語 が 上手に話せる。
3. 感情をストレートに表現する「が」 穏やかに表現する「を」
「好き」「嫌い」「悲しい」「嬉しい」などのを感情を表す文章でも助詞「が」「を」が使われます。
例文で見ていきましょう。
【例文:助詞「が」を使用して感情をストレートに表す場合】
ケーキ が 大好きだ。
お酒 が 嫌いだ。
好悪の感情をストレートに表現するときには「が」が用いられますが、少し穏やかに表現するときには「を」を用います。
【例文:助詞「を」を使用して感情を穏やかに表す場合】
あなた を 好きだと思う。
虫 を 嫌いだと思う。
伝えたいニュアンスによって使い分けてみましょう。
【てにをはの使い方2】場所を表す「で」と「に」の使い分け
場所を表す助詞「で」と「に」ですが、こちらも使い分けに悩むことがあります。
例えば、次の文章です。
【例文:助詞の使い分け】
明日は現地 で 集合です
明日は現地 に 集合です
一見、どちらも正しく感じるため、使い分けに迷ってしまいます。
正解は下記です。
【正解】
「明日は現地 で 集合です」
これについては、「で」と「に」の使い分けを見ながら理解していきましょう。
「で」と「に」の使い分けに迷ったら、次の2つを基準とします。
- 動作性の強い文章(人物の意志による行動)→「で」
- 状態性の強い文章(物の状態や人がいる場所)→「に」
明日、現地で集合するのは、人の意志による行動であるため、ここでは「で」を選択します。
例文で確認しましょう。
動作性の強い文章は「で」を使用して場所を表す
まず、動作性の強い文章です。
動作性の強い文章では、場所を「で」で表すのが正解です。
【例文:動作性の強い文章で場所を表す】
カフェ で コーヒーを 飲む。
図書館 で 本を 読む。
お店 で 洋服を 買う。
動作とは、「コーヒーを飲む」「本を読む」「洋服を買う」など、人の意志による行為です。
「どこ で ◯◯する」という形にします。
この場合に間違って「に」を使ってしまうと、違和感のある文章になってしまいます。
【例文:助詞「に」を誤用した場合】
カフェ に コーヒーを飲む。
図書館 に本を読む。
お店 に 洋服を買う。
まさに、「てにをはがおかしい」と指摘される文章です。
状態性の強い文章は「に」を使用して場所を表す
それでは、状態性の強い文章です。
状態性の強い文章では、場所を「に」で表すのが正解です。
まず、正しい例文を見てみましょう。
【例文:状態性の強い文章で場所を表す】
そのカフェに 友人がいる。
図書館 に その本がある。
お店 に その洋服がある。
状態性の強い文章とは、友人がいる場所や、本がある場所を示しています。
こういった場合には、「に」を使いましょう。
それでは、もしも、状態性の強い文章で場所を表す場合に、間違って「で」を使ってしまうとどうなるか確認してみましょう。
【例文:助詞「で」を誤用した場合】
そのカフェ で 友人がいる。
図書館 で その本がある。
お店 で その洋服がある。
不自然です。
場所を示す「てにをは」を使うなら、「に」と「で」の使い分けに注意しましょう。
【てにをはの使い方3】行き先を表す「に」「へ」「まで」の使い分け
「に」「へ」「まで」は、行き先を表す「てにをは」(助詞)です。
同じように行き先を表しますが、次のように使い分けます。
- 「に」 目的地点
- 「へ」 移動する方向
- 「まで」 移動の過程
「に」は、目的地点を表し、「へ」は移動する方向を表し、「まで」は移動の過程を表します。
わかりやすく例文で見ていきましょう。
次に挙げる3つの例文を用いて解説いたします。
例文1. 階段で 5階 に 登る (目的地点)
例文2. 階段で 5階 へ 登る (移動する方向)
例文3. 階段で 5階 まで 登る (移動する過程)
詳しく確認しましょう。
【例文1:「に」を使った文章】
階段で5階 に 登る。
「に」は、移動した先の目的地点を指します。
文章が持つニュアンスは、5階という目的地点に重きが置かれます。
5階に着いた状態がイメージされる文章です。
【例文2:「へ」を使った文章】
階段で5階 へ 登る。
「へ」は移動する方向を指します。
文章が持つニュアンスは、8階という方向に重きが置かれます。
5階へ向かって登っていく状態がイメージされます。
【例文3:「まで」を使った文章】
階段で5階 まで 登る。
「まで」は移動の過程を指します。
文章が持つニュアンスは、8階まで登る過程に重きが置かれます。
5階まで登る苦労がイメージされますね。
つまり、下記のように使い分けるとニュアンスをより正確に伝えられます。
- 「に」: 着いたときをイメージ
- 「へ」: これから向かっていくイメージ
- 「まで」:移動の過程をイメージ
上手に使いこなしてみましょう。
【てにをはの使い方4】主語を表す「が」と「は」の使い分け
代表的な「てにをは」として、主語を表す「が」と「は」があります。
「が」は格助詞、「は」は係助詞です。
「が」を使うか、「は」を使うかで、文章の印象はガラリと変わります。
具体的には、下記の違いがあります。
- 「が」は主語を強調し、動作も強い印象を与える。
- 「は」は主語を強調せず、文章全体が客観的な印象を与える。
どのように使い分けていくのが正解なのか、例文を用いてご説明いたします。
【例文:助詞「が」と「は」を使用した文章】
A. 彼 が CDを 貸してくれた。
B. 彼 は CDを 貸してくれた。
2つの文章では、「彼」が主語です。
助詞は「が」と「は」のどちらを使っても、文章は成り立ちます。
しかし、2つの文章のニュアンスは異なります。
【Aの「が」を使った文章】
本を貸してくれたのは、他の誰でもなく「彼」であることが強調されています。
彼が強調されているばかりでなく、本を貸してくれたというその動作も強い印象を与えます。
【Bの「は」を使った文章】
「彼」は強調されず、動作そのものも穏やかな印象です。事実を客観的に表現しています。
もう1つ例文で見てみましょう。
【例文:助詞「が」と「は」を使用した文章】
A. 私 が リーダーの佐藤です。
B. 私 は リーダーの佐藤です。
Aの「が」を使った文章のほうが、「私」が強調されているのがわかりますね。
「他でもないこの私こそがリーダーの佐藤です」というニュアンスが伝わります。
一方、Bの「は」を使った文章は、全体的に穏やかに事実だけを伝える印象です。
「が」と「は」を誤用すると…
それでは、「が」と「は」を誤用するとどうなってしまうのか見ていきましょう。
まず、間違いの例文です。
【間違いの例文:助詞「が」を誤用した場合】
私 が 食事を終えると、ベランダへ出てタバコを吸った。
これでは、タバコを吸ったのが「私」なのか、それとも別の誰かなのかわかりません。
それでは意味を正しく伝える助詞を入れてみましょう。
【例文:助詞を「が」を適切に使用した場合】
私 は 食事を終えると、ベランダへ出てタバコを吸った。
「が」を「は」に変えることでスムーズに意味が伝わる文章になりました。
また、反対に、「が」を使うべき文章で「は」を使ってしまうとどうなるか確認してみましょう。
【例文:助詞「は」を誤用した場合】
妹 は 家で宿題をしていたとき、私は塾で勉強していた。
違和感のある文章です。
それでは正しい述語を入れてみましょう。
【例文:助詞を「が」を適切に使用した場合】
妹 が 家で宿題をしていたとき、私は塾で勉強していた。
助詞「は」を、「が」に変えるだけで、主語がはっきりして意味がスムーズに伝わります。
このように、主語を表す「が」と「は」は、やや混同しやすいです。
意味をしっかり伝えるためにも間違えることのないよう使用しましょう。
日本語を簡単にワンランクアップ!上品になる「てにをは」の使い方
「てにをは」のちょっとした気配りで、普段の言葉の使い方をワンランクアップできます。
「〜をお願いします」でスマートに意志を伝える
「コーヒーと紅茶、どちらになさいますか?」
この質問には2つの答え方があります。
- 1. 紅茶 で お願いします。
- 2. 紅茶 を お願いします。
1のように、「〜で」と答えてしまう方は意外と多いようです。
丁寧に答えたつもりでとっさに出てしまうのがこの答え方です。
しかし、「〜で」というと、「〜でいいよ」という投げやりな印象があります。
この場合、「〜を」を使うだけで、丁寧でスムーズに意志が伝わります。
このような場面では、意識して「〜を」を使用して答えましょう。気配りのある答え方ができます。
「〜より」でかしこまった大人の表現をしてみる
下記の2つは同じ意味でどちらも正しい文章です。
- 1. 心 から お礼申し上げます。
- 2. 心 より お礼申し上げます。
それでは、どちらを選択するのがよいのでしょうか。
より文語的に上品に表現したいと思うのであれば、2の「〜より」を選んでみましょう。
「〜より」のほうが言葉のもつニュアンスが改まった丁寧な印象になります。
とくにフォーマルな場の挨拶では「〜より」を選んでみるとよいでしょう。
「てにをは」を正しく使えるようになるための3つの方法
「てにをは」を正しく使いたいのであれば、正しい文章の感覚を養いましょう。
実際に文章を書く、編集する過程で、「てにをは」を理論的に考えて選択するのでは時間がかかり過ぎてしまいます。
感覚を鍛えて適切な「てにをは」をスピーディーに選択するために、どうしたらよいのかをご説明いたします。
方法1. 本を読んで正しい文章の感覚を身に着ける
まずは日頃から本を読みましょう。
本は「校閲」を経てから出版されているため、正しい文章かどうかもチェックされています。
「てにをは」も正しく使われていると考えられます。
本を読んで、正しい文章を感覚として身に着けてしまいましょう。
方法2. 自分が書いた文章を誰かに確認してもらう
自分では正しいと思い込んでいても、実は間違った「てにをは」の使い方をしているかもしれません。
身近な人に自分が書いた文章の確認をお願いしてみるのもおすすめです。
下記の2点を重点的に確認してもらいましょう。
- 「てにをは」の使い方が間違っていないか
- ニュアンスが的確に伝わっているか
できることなら、文章の知識が豊富な人に依頼するのがよいでしょう。
方法3. 自分が書いた文章を声に出して読んでみる
文章が適切であるかどうか迷ったら、声に出して読んでみることをおすすめします。
日本語を母語とする人が持つ感覚を呼び覚まし、正しい「てにをは」を選択できることがあります。
正しい「てにをは」で伝わる文章を作成しよう
「てにをは」が1文字変わるだけでも文章は大きく変わります。
ニュアンスを適切に伝えるなら、「てにをは」にこだわらなければなりません。
ご紹介した知識を参考に、正しい「てにをは」を選択しましょう。
迷ったら、声に出して確認してみることをおすすめします。
より伝わりやすい文章が正解です。
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