主語とは、「誰が・何が」を示す文節です。
・私が 見る
・花が 咲く
・小鳥が 鳴く
「私が」「花が」「小鳥が」は主語です。
主語と述語の組み合わせが明快な文章は、意味がわかりやすく、スラスラ理解できます。
反対に、主語が省略されている文章や、主語と述語が噛み合わない文章は、意味がわからないと感じます。
伝わる文章を書くために、もっと主語に着目してみましょう。
わかりやすい文章は、主語が明確に示され、主語と述語が近く、しっかり組み合わされています。
目次
【主語とは】「誰が・何が」に当たる文節
主語は、「誰が(は)」「何が(は)」に当たる文節です。文節とは、文の構成要素を、不自然にならない程度に区切った最小の単位です。
- 星が(主語) きらめく(述語)
上の文の「星が」は主語です。動作や状態の主体となるのが主語です。
主語の形は、助詞「〜は」「〜が」を伴うことが多いですが、ほかにもいくつかの形があります。
【例文:主語の形】
彼は 4時に 駅に 着く。 (〜は)
母が おやつに クッキーを 焼いてくれた。(〜が)
妹も その本を 持っている。 (〜も)
私だけ その事実を 知っている。 (〜だけ)
私、現場を 見ました。 (助詞を省略)
例文のように、動作の主体を表すのが主語です。
動作の主体を表す重要な主語ですが、省略することもできます。主語を省略できるのは、日本語の特徴です。
【例文:主語を省略した文章】
明日、(私は) 学校に行きます。
(彼らは)夏休みは 別荘で 過ごします。
()内が省略された主語です。
例文は、主語がなくても文章として成立しています。
しかし、主語が省略されると、読み手は主語を推察しなければなりません。読み手に負担がかかり、齟齬が生じる可能性もあります。日本語の文章で、主語は省略できる場合もありますが、主語を示すほうが意味がわかりやすいでしょう。
また、主語とセットで語られるのが述語です。「何が」を示す文節が主語で、「どうする」を示す文節が述語です。
主語と述語が適切に組み合わされた文章は、意味がわかりやすく、すっきりと頭に入ってきます。
主語とは何かを考えるとき、次の3つのポイントを覚えておきましょう。
【主語とは】
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述語については、記事ブログ内に私がわかりやすくご説明ししている記事があります。主語と述語をすっきり組み合わせると、文章が劇的にわかりやすくなることを解説しています。伝わる文章を書きたい!とお考えの方は、こちらもご覧になってください↓
【主語と述語の関係】文章を組み立てる重要な骨組み
主語と述語が近く、しっかり組み合わされている文章は、誰が読んでも意味がわかりやすいです。
- 雨が 降る
- 空が 青い
- 太陽が 輝く
上記のように主語と述語が噛み合っている文章は、心地よいほどスッキリと意味がわかります。
しかし、実際の場面では、私たちは、もっと長く複雑な文章を書かなければなりません。
そのような場合、主語と述語の組み合わせには細心の注意を払いましょう。
文部科学省のホームページにも、「書けない子どもへの指導」として、次のアドバイスがあります。[注1]
【参考元:文部科学省/作文】
書けない子どもへの指導2- 詳しく述べる方法
主語―述語(花が咲いた)を柱とし、主語を詳しく説明する。また、述語を詳しく説明(修飾)するよう問答により促し、いったん口頭で述べたことを書かせる。
10-6 よい文章を書くための15か条/中級
7 主語と述語を照応させる
「主語と述語を照応させる」とは、つまり、主語と述語を適切に組み合わせる、ということです。文部科学省も、作文指導で、よい文章を書くために、主語と述語を大切にするよう指導しているのがわかります。
主語と述語を適切に組み合わせる、とは、つまり、「誰がどうした」「何がどうした」をはっきりさせる、ということです。
【例文:主語と述語の悪い例と改善例】
悪い例 : 図書館の閉館時間は 午後10時まで利用できます。
改善例 : 図書館の閉館時間は 午後10時です。
改善例 : 図書館は 午後10時まで利用できます。
悪い例では、主語と述語が噛み合っていません。改善例では、主語と述語がしっかり噛み合っています。
作成した文章を読み直してみて、「なんだか違和感がある」「意味がわかりにくい」と感じるときには、主語と述語が噛み合っているかどうかを確認してみましょう。
主語の上手な使い方:2つのポイント
意味が伝わる文章のためには、主語の使い方に次の2つのポイントがあります。
- 主語は一つひとつの文章に丁寧につけていく
- 主語と述語をしっかり組み合わせる
詳しく見ていきましょう。
ポイント1. 主語は一つひとつの文章に丁寧につけていく
主語はできる限り省略しないようにしましょう。
日本語の主語は省略できますが、省略できる場合は限られています。[注2]
- 前文と同じ話題で、同じ意味的役割の主語
上記の場合であれば、主語を省略することもできます。
例文で見てみましょう。
【例文:主語の省略のよい例】
私の母は、熱があって病院に行った。インフルエンザだった。
例文では、後文の「私の母は、インフルエンザだった」の「私の母は」が省略されていますが、意味がはっきりわかります。
前文と後文は同じ話題で、主語に当たる言葉が同じであるためです。
主語を省略するとしたら、このように、主語が明らかにわかりきっている場合だけにしましょう。
もしも、不適切に主語を省略するとどうなるか見てみましょう。
【例文:主語の省略の悪い例】
私は、弟と久しぶりに会う約束をしたが、熱を出してしまって会えなかった。
例文では、熱を出したのが、「私」なのか「弟」なのかわかりません。
このうよな場合、読み手の反応は3つパターンにわかれます。
- 誰が熱を出したのかわからない
- 「私」が熱を出したのだろう
- 「弟」が熱を出したのだろう
つまり、「わからない」と思う方だけではなく、省略された主語を想像で補ってしまう方もいるため、書き手の意図とは違う解釈がなされてしまう可能性もあるのです。
主語を省略した文章には、「意味がわからない」「意味を誤解されてしまう」というリスクがあるのです。
主語は、必要か必要でないかを丁寧に判断しながら書き込んでいくようにしましょう。
文学作品に見られる主語がない文章
川端康成の作品「雪国」の冒頭の文章です。
眼前に広がる雪景色を感じる文印象的な文章ですが、この文章には主語がありません。
このように、主語がなくても素晴らしい文章が成立することはあります。
文学作品では、作者が意図的に主語を書かないことで、次の効果を出すこともあります。
- 文章を印象的にする
- 想像の余地を残す
しかし、情報を正確に伝えることが大切な記事作成では、想像の余地があってはいけません。主語はしっかり書きましょう。
[注2] 東京外国語大学/留学日本語教育センター論集/文章表現と会話における日本語の主語の省略[pdf]
ポイント2. 主語と述語をしっかり組み合わせる
文章の主語と述語が噛み合わないことを「文章のねじれ」といいます。
文章のねじれがあると、とたんに読みにくく、意味が伝わらなくなってしまいます。
【例文:主語と述語が噛み合わない文章】
私の志望校は、ハーバード大学に合格することです。
主語「私の志望校は」に対して、述語が「合格することです」で結ばれています。噛み合っていません。これが文章のねじれです。
直してみましょう。
【改善例】
私の志望校は、ハーバード大学です。
すっきりしましたね。
文章が長く複雑になるほど、こうした文章のねじれが生じやすくなります。
文章のねじれを防ぐためには、次のことを心がけましょう。
- 一文を短くする
- 主語を一文にひとつにする
本当に伝わる文章を書くためには、簡単なことを丁寧に積み重ねてみましょう。
主語の見つけ方
文中の主語の見つけ方をご紹介します。
まず、述語を見つけ、そこから、「誰が」「何が」を考えると、主語へとたどり着けます。
「丘の上の 桜が すっか り満開だ」の主語を見つける
1 まず、述語を見つける
丘の上の 桜が すっかり 満開だ
↓
述語は「満開だ」
2 述語の主体となる主語を見つける
「満開だ」が述語
↓
「何が」満開なのか?
↓
「桜が」満開だ。
↓
「桜が」が主語!
つまり、「丘の上の桜がすっかり満開だ」という文章では、「桜が」が主語で「満開だ」が述語です。
主語が省かれている文章も見てみましょう。
「毎日 受験勉強ばかりで とても 苦しい」の主語を見つける
1 まず、述語を見つける
毎日 受験勉強ばかりで とても 苦しい
↓
述語は「苦しい」
2 述語の主体となる主語を見つける
「苦しい」のは誰か?
↓
「苦しい」のはおそらく「私」
↓
省略されている主語は「私」
主語が省かれている場合は、述語を見つけ、その主体となるのが誰なのか、何なのか、を考えてみましょう。
【練習問題】主語と述語を見つけよう
主語と述語を見つける練習をしてみましょう。
【練習問題:主語と述語を見つける】
猫が ニャーニャーと 鳴く。
彼女が ドラマを 見る。
先生は 消しゴムで 答えを 消した。
青い 花が 咲いた。
学校の 体育館は 広い。
風鈴が 風に 揺れて 鳴る。
今日の 朝食は 念願の ホットケーキだ。
どうでしょう?まず、述語を見つけ、その主体となる「誰が」「何が」を見つけましょう。それが主語です。
【答え:主語と述語を見つける】
答え:赤字が主語、青字が述語
猫が ニャーニャーと 鳴く。
彼女が ドラマを 見る。
先生は 消しゴムで 答えを 消した。
青い 花が 咲いた。
学校の 体育館は 広い。
風鈴が 風に 揺れて 鳴る。
今日の 朝食は 念願の ホットケーキだ。
英語の主語は省かない
日本語では、主語を省くことができますが、英語文では、必ず主語を書きます。
【例文:英語の主語】
I play tennis everyday.
my daughter go to school.
She can drive.
赤字が主語です。
英語では、形式主語itを使うこともあります。
It is difficult to speak English.
英語を話すことは難しい
toのあとの、「英語を話すこと」という長い主語をすっきりさせて最初に持ってくるため、itを使っています。
英語では主語や述語を文頭ではっきりさせることが好まれるようです。
主語を大切にして意味が伝わる文章を書こう
意味が伝わる文章を書くためには、主語と述語をできるだけ近づけ、適切に組み合わせましょう。
主語を省いてよいのは、主語がなくても意味が通じるという確信があるときのみです。
「言いたいことが、なんだか伝わらないな」そう感じたら、主語を大切にすることを今日から意識してみましょう。
文章で意味を伝えるのは並大抵のことではありません。
やさしい文章ほど、丁寧に練られてできあがります。できた文章は必ず読み返し、これで伝わるだろうか、主語を足したほうがよいだろうか、と考えてみましょう。