敬語の「下さい」と「ください」は、ビジネスや公用文では、次の使い分けが必要です。
- 「コーヒーを下さい」
- 「ご安心ください」
上記のように使い分けます。
- 何かをもらいたい動詞であれば「下さい」を使う
- 何かをしてほしいという補助動詞であれば「ください」を使う
漢字の「下さい」とひらがなの「ください」は、使い分ける必要があるのですか?
はい。明確な使い分けの指針があります。
公用文では、上記に示した決まりがあるため、こちらで覚えておきましょう。
今回は、「下さい」と「ください」の意味の違いと使い方を、例文でわかりやすくご説明します。
目次
「下さい」「ください」意味の違い
新聞、雑誌、web記事など、公用文では「下さい」と「ください」を使い分けます。
この違いと使い分けは簡単です。
【下さい(漢字表記の場合)】
・「くれ」の尊敬語
【ください(ひらがな表記の場合】
・懇願する意の補助動詞
とてもシンプルです。
例文もつけると次の表にまとめられます。
意味 | 例 | |
下さい
(漢字表記の場合) |
「くれ」の 尊敬語 | 食べ物を 下さい
お手紙を 下さい |
ください
(ひらがな表記の場合) |
懇願する意の 補助動詞 | (して) ください
ご注意 ください |
「ください」に限らず、公用文では、補助動詞はひらがな表記が基本です。
「補助動詞はひらがな表記」と、それだけはしっかり覚えておきしょう。
「下さい」は動詞「くれ」の尊敬語
「下さい」は動詞「くれ」の尊敬語として使われます。[注1]
ください【下さい】
1 「くれ」の尊敬語。相手に物や何かを請求する意を表す。ちょうだいしたい。
「手紙を下さい」「しばらく時間を下さい」
引用:小学館/デジタル大辞泉
「〇〇をくれ」「〇〇をちょうだいしたい」」を丁寧に表現しています。
「ください」は補助動詞
「ください」とひらがな表記されるのは補助動詞の場合です。[注1]
ください【下さい】
2 (補助動詞)「お」を伴った動詞の連用形、「ご(御)」を伴った漢語、
また、動詞の連用形に接続助詞「て」を添えたものなどに付いて、相手に何かを要望・懇願する意を表す。
「お座りください」「ご覧ください」「止めてください」
引用:小学館/デジタル大辞泉
「(して)ください」など、補助動詞として懇願する意味を表現しています。
[注1]小学館/デジタル大辞泉
「下さい」「ください」用法【公用文・ビジネス】
それでは、「下さい」「ください」を、実際の公用文やビジネス文ではどのように使うでしょう。
例文でご紹介します。[注2]
「下さい」の使い方を例文で解説
「下さい」は「くれ」の意を表す尊敬語として使う場合に漢字表記とします。
例文で確認してみましょう。
【例文:下さい】
お金を 下さい。
お給料を 下さる。
ご褒美を 下さる。
お手紙を 下さい。
時間を 下さい。
とにかく、「ちょうだい!」の意味を丁寧にして使うなら、「下さい」と漢字表記します。
あ、まあ、そういう考え方もありますね…
「ください」の使い方を例文で解説
「ください」は、懇願の意を表す補助動詞の場合に使います。
例文で確認してみましょう。
【例文:ください】
故障を直して ください。
しっかりして ください。
ご検討 ください。
ご注意 ください。
ご了承 ください。
私にやらせて ください。
ともかく「補助動詞はひらがな表記」と理解しました!
そういうことです。
[注2]参考:共同通信社「記者ハンドブック第13版」
【誤用注意!】くださいをつければ丁寧というわけでもない
「下さい」と「ください」の使い分けはわかりやすいため、シンプルに理解できます。
ただし、大きな注意点があります。
それは、「謙譲語+ください」という間違いです。これが意外にも使われがちなのです。
「ください」をつければ丁寧な言葉になるかといえば、そんなことはありません。
例でご説明します。
もし、自分がお客様という立場で受付の人に質問をしたとします。
【間違い例】
✕ 「それについては、担当者に伺ってください」
…こんなふうに返事をされたら、なんだか変な感じがします。
それでは、どこが変なのでしょうか。
ポイント1. 「伺う」は謙譲語なので相手(お客様)の動作に使う敬語ではない。
ポイント2. 「伺う」は向かう相手を立てる言葉なので、担当者を立ててしまう。
これでは、お客様に対して、こちら側の担当者を立てた行動を指示しているようで、失礼になってしまいます。
「なんだか変」という感覚はここからきます。
この場合、受付の人の応対として適切なのは下記の言葉遣いです。
正解1. 担当者に お尋ね ください。
正解2. 担当者に お聞き ください。
「ください」をつけておけば丁寧になるかといえば、けしてそのようなことはないということでしょうか?
そうです。
とくに、謙譲語には注意が必要です。
【例文:謙譲語にくださいをつけた間違い例】
✕ 伺って ください
✕ 拝見して ください
✕ 頂いて ください
例文は3つとも間違いです!
くれぐれも取引先の方、お客様、目上の方にこのような言葉遣いをしないように注意しましょう。
ちなみに、目上の方に対しては、「尊敬語+ください」が良いでしょう。
【例文:尊敬語にくださいをつけた正しい例】
✕ 伺って ください
↓
◯ お尋ねください
◯ お聞きください
✕ 拝見して ください
↓
◯ ご覧になってください
✕ 頂いて ください
↓
◯ 召し上がってください
謙譲語の使い方については、詳しく解説した記事があります。
わかりやすくまとめてあるので、ぜひ、ご覧ください!↓
公用文では「下さい」と「ください」を使い分ける
公用文での「下さい」と「ください」の使い分けをご説明しました。
- 下さい: 尊敬語「くれ」
- ください: 補助動詞「(して)ください」
とくに難しいことはありません。シンプルに覚えてしまいましょう。
「ください」のほかにも、補助動詞は基本的にひらがな表記です。
「お願いいたします」の「いたします」や、「よろしくお願いいたします」の「いたします」などが補助動詞であるため、ひらがな表記します。「致します」とは書きません。
補助動詞はひらがなで表記するように気をつけましょう。