「けだし(蓋し)」は接続詞ではなく副詞!意味と使い方を例文で解説

「けだし」の意味と使い方を例文で解説

これはまた、けだし名言ですね。

???

「けだし」の意味がわかりません。

「けだし」は「まさしく」などの意味をもつ副詞です。

 

「けだし」は頻出する言葉ではありませんが、しっかり意味を覚えておいて正しく使いましょう。

 

「けだし」の意味・使い方を例文で解説いたします。

また、古文や漢文の「けだし(蓋し)」の意味もご紹介いたします。

 

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「けだし」の意味:まさしく 確かに おそらく

「けだし」の意味は「まさしく」

 

「けだし」は、次の意味をもつ言葉です。

 

  1. まさしく。確かに。思うに。
  2. もしかすると。あるいは。
  3. もしも。ひょっとして。
  4. おおよそ。

 

いくつも意味があって迷います。

現代語であれば「まさしく、確かに」として使われることが多いです。

「けだし」といえば「まさしく」と覚えておきましょう。

 

よく使われる言葉に「けだし名言」があります。

これは、「まさしく名言」という意味です。

 

デジタル大辞泉に次の記載があります。

1 物事を確信をもって推定する意を表す。まさしく。たしかに。思うに。

蓋しその通りであろう」

2 (あとに推量の意味を表す語を伴って)もしかすると。あるいは。

「百足らず八十隅坂に手向けせば過ぎし人にけだし逢はむかも」

3 (あとに仮定の意味を表す語を伴って)万が一。もしも。ひょっとして。

「わが背子しけだしまからば白妙の袖を振らさね見つつしのはむ」

4 おおよそ。大略。多く、漢文訓読文や和漢混淆文などに用いる

「よって勧進修行の趣、けだしもって斯くの如し」

[引用]小学館「デジタル大辞泉」

 

「けだし」には、幅広い意味があって、混乱します。

まず、現代語では「まさしく」と覚えておきましょう。

 

法律の世界における「けだし」の意味は「なぜなら」

「けだし」は、法律の分野では独特の意味があります。

 

【法律の分野では特殊な意味をもつ「けだし」】

けだし = なぜならば

 

法律の分野では、「けだし」は「なぜならば」という意味で使われます。

「けだし〜だからである」という使われ方をします。

 

法律の分野における業界用語のようなものでしょうか。

念のため、覚えておきましょう。

 

ただし、近年では、法律の分野でも、そのような「けだし」の使われ方は、見かけなくなってきたようです。

 

「けだし」の使い方:例文

「けだし」の使い方を例文で解説

 

「けだし」の使い方を例文でご紹介します。

 

「けだし」は文学作品でも使われています。

…どうしてそんな変なものができたというなら、そいつは蓋し簡単だ。

[引用]宮沢賢治「楢ノ木大学士の野宿」

 

「けだし」は、「まさしく」「思うに」」といった意味で使われます。

 

例文で使い方を確認してみましょう。

 

【例文:けだし】

社長のおっしゃることは、けだしそのとおりであります。

 

【例文:けだし】

彼は、けだし時代の寵児である。

 

【例文:けだし】

世界を知ることは、けだし留学の醍醐味である。

 

【例文:けだし】

弱音を吐かないのは、けだし彼女の流儀である。

 

【例文:けだし】

これはけだし至高の逸品です。

 

あまり耳慣れない「けだし」ですが、「まさしく」「思うに」という意味と分かっていれば、使うシーンは思っているよりたくさんあります。

 

けだし名言

「けだし」という言葉でよく使われるのが「けだし名言」ではないでしょうか。

これは「まさしく名言」という意味です。

 

【例文:けだし名言】

「働かざるもの食うべからず」とは、けだし名言である。

→「働かざるもの食うべからず」とは、まさしく名言である。

 

【例文:けだし名言】

「部長の先日のお言葉、けだし名言です」

→「部長の先日のお言葉、まさしく名言です」

 

【例文:けだし名言】

「◯◯とは、あれもけだし名言。さすがです」

→「〇〇とは、あれもまさしく名言。さすがです」

 

このように、「けだし名言」は使われます。

使えることも大切ですが、ふと耳にしたときや目にしたときに、意味がわからなくて混乱することのないようにしましょう。

 

「けだし」は接続詞ではなく副詞

「けだし」は接続詞ではなく副詞

 

「けだし」は接続詞と思われがちですが違います。

「けだし」は副詞です。

意味が分かっていないと接続詞かと思ってしまいそうです。

接続詞と勘違いされる方も多いのですが、違います。

「けだし」は副詞です。

 

接続詞と副詞の違いを簡単に示します↓

  • 接続詞 :文と文をつなぐ言葉 (しかし、そして、など)
  • 副詞  :主に用言を修飾する言葉 (ゆっくり、たいそう、など)

 

「けだし」は次にくる言葉を修飾する言葉です。

そのため、接続詞ではなく副詞です。

 

【古文】「けだし」の意味

古文の「けだし」

 

古文の「けだし」には次の意味があります。[注1]

 

【古文「けだし」の意味】

1.ひょっとすると。あるいは。

2.下に仮定の表現を伴って)もしかして。万一。

3.おおかた。たぶん。大体。

 

実際の古文を参考に確認してみましょう。

いにしへ恋ふらむ鳥はほととぎす、けだしや泣きしわが念へるごと

(意味)
昔を恋い慕っている鳥はほととぎすで、ひょっとすると鳴いているのかもしれない、私が(昔のあの人を)思っているように。

[万葉集一一二]

 

山守(やまもり)はけだしありとも

(意味)
山の番人はもしかしているとしても

[万葉集四◯二]

 

風の力けだし少し

(意味)
風の力はたぶん少ない

[源氏物語 少女]

 

[注1]学研全訳古語辞典

 

【漢文】「蓋し(けだし)」の意味

古代の中国語では、「蓋」は「おそらく」という意味で使用されていたようです[注2]

 

周之建国也、千百諸侯

(意味)
周が国を建てた時、おそらく1800の諸侯がいた。

 

古文の「けだし」にも、「おおかた。たぶん」という意味があります。
そのため、当時の中国語の「盖」を読み下すときに、似ている意味がある「けだし」が当てられたのではないでしょうか。

 

[注2]白水社「中国語辞典」

 

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「けだし」を使ってみよう

「けだし」は「まさしく」の意味で使える言葉です。

素晴らしい言葉に出会ったときなどに「けだし名言」と表現できます。

他にも、「これこそ、けだし醍醐味といえる」「けだし至高の作品である」など、文章中でも機会があれば使ってみましょう。

ただし、「けだし」は多用するとくどい印象になるため、ここぞというときにだけ使ってみてください。

 

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