「行く」には、「いく」と「ゆく」の2つの読み方があります。どちらで表記するのが正しいのか迷うこともあります。
どちらも間違いではありません。
次のように状況によって使い分けます。
- いく…より口語的
- ゆく…より文学的
今回は、「いく」と「ゆく」 の違いについて簡単に解説いたします。
目次
「いく」と「ゆく」表記の2つのコツ
「行く」の読み方、「いく」と「ゆく」は、どちらも間違いではありません。
状況に合わせて、適宜使い分けてよいものです。
次の2つのコツに沿って使い分けましょう。
- いく:より口語的・現代的
- ゆく:より文学的・古風
例文で確認してみましょう。
【例文:「いく」と「ゆく」】
「歩いていこう」→口語的・現代的
「歩いてゆこう」→文学的・古風
「去っていく」→口語的・現代的
「去ってゆく」→文学的・古風
「いく」は、会話で使っても自然です。現代的でシンプルな言い方です。
「ゆく」は、会話よりは文中で使うことが多いです。文学的で古風な言い回しに適しています。
例えば、普段の会話で、「ランチにいこう」と言うことはあっても、「ランチにゆこう」と言うことはあまりないのではないでしょうか。
コツ1. 「いく」は口語的でシンプルな表現
「いく」について、デジタル大辞泉には、次の記載があります。[注1]
い・く【行く】
〔動カ五(四)〕→ゆく
つまり、「ゆく」と意味が同じであることがわかります。
意味は同じですが、状況によって「いく」が適している場合があります。
次の場合は「いく」を使いましょう。
- より口語的・現代的に表現したい
- シンプルに表現したい
例文で確認してみましょう。
【例文:いく】
学校へいく。
うまくいく。
例文はどちらも、「ゆく」で表現してしまうと不自然に古めかしくなってしまいます。
現代的な文章をシンプルに表現したいなら、「いく」が適切でしょう。
[注1]小学館/デジタル大辞泉
コツ2. 「ゆく」は文学的で古風な表現
「ゆく」について、デジタル大辞泉には、次の記載があります。[注1]
ゆ・く【行く/逝く/往く】
[動カ五(四)]
1 向こうへ移動する。「はやく―・け」
2 目的地へ向かって進む。「学校へ―・く」
3 歩く。歩いて進む。「悪路を―・く」
4 通り過ぎる。「沖を―・く船」
5 年月が経過する。「―・く秋を惜しむ」
6 流れる。「―・く水のごとく」
7 (逝く)死ぬ。「君―・きて三年」
8 物事がはかどる。「うまく―・かない」
9 物事をする。「前の方法で―・くことにする」
10 気持ちが十分満足する。「納得が―・く」
11 年をとる。成長する。「年の―・かない子供」
12 嫁に行く。とつぐ。「末娘も嫁に―・く年ごろになった」
13 (「いく」の形で)俗に、性交時の快感が絶頂に達する。
14 (補助動詞)動作の継続・進行の意を表す。「やせて―・く」
[可能]ゆける[補説]「いく」の語形も上代からみられ、平安時代以降は「ゆく」と併用される。「ゆく」「いく」はほとんど意味は同じであるが、古くは「ゆく」のほうがより広く使われ、特に訓点資料・和歌(「生く」との掛け詞の場合を除き)では、ほとんどすべてが「ゆく」である。現在では「ゆく」に比べて「いく」のほうが話し言葉的な感じをもち、したがって、「過ぎ行く」「散り行く」など、文章語的な語の場合には「ゆく」となるのが普通である。なお、「ゆきて」のイ音便形「ゆいて」も用いられたが、現在は一般的でなく、促音便形は「ゆく」のほうは用いられず、「いく」を用いて「いって」「いった」となる。
補足には次の点が言及されています。
- 古くは「ゆく」のほうがより広く使われていた
- 現在では「ゆく」に比べて「いく」のほうが話し言葉的な感じをもつ
状況によって、「ゆく」が適している場合があります。
次の場合には「ゆく」を使いましょう。
- より文学的に表現したい
- 古風な言い回しにしたい
例文で確認してみましょう。
【例文:ゆく】
去りゆく。
合点がゆく。
減ってゆく。
例文は、どれも文学的であったり、古めかしい言い回しに感じます。
あえてそういった表現をしたい場合は、「ゆく」が適しているでしょう。
[注1]小学館/デジタル大辞泉
放送界の「いく」と「ゆく」の見解
それでは、放送界では、「行く」の読み方をどのように扱っているでしょうか。
NHK放送文化研究所のサイトには、次の記載があります。[注2]
【引用:NHK放送文化研究所】
これらの発音のゆれは同じ人の話しでも、状況に応じて使い分けられていることもあります。
あらたまっては「ゆく」ふだんは「いく」ということもあります。
「どちらが正しい」というのではないと思われますので、どうぞご自分の発音をもう一度点検なさってください。
どうやら、放送界でも、「どちらが正しい」という見解はないようです。
[注2]NHK放送文化研究所/ことばウラ・オモテ/発音の変化
「いく」「ゆく」は状況で使い分ける
「行く」は、「いく」と読んでも「ゆく」と読んでも間違いではありません。
話し言葉であれば、「いく」が一般的です。
文章のなかでより文学的に古風に表現したいなら「ゆく」がよいでしょう。
状況に合わせて適宜使い分けていきましょう。