「おられる」という言葉ですが、なんだか違和感があります。
「おられる」の正しい使い方を教えてください。
- 「こちらにおられるのが〇〇様です」
- 「先生はあちらにおられる」
わかりました。
上の「おられる」は、どちらも尊敬語の正しい使い方です。
正しい使い方でも、なんだか違和感があるなら、スムーズな表現に言い換えるのがおすすめです。
「おられる」を言い換えるなら、「いらっしゃる」が適切でしょう。
こちらでは、「おられる」と「いらっしゃる」の意味、使い方、言い換え方法を、わかりやすくご説明します。
目次
「おられる」は間違いではないが「いらっしゃる」を使うのが無難
文化庁の平成10年度「国語に関する世論調査」によると、「おられる」について、3〜4割もの人が「気になる言い方」と回答しています。[注1]
「おられる」と同じ意味で使える尊敬語に、「いらっしゃる」という言葉があります。そちらを使うほうがおすすめです。
なるほど。
より多くの人にスムーズに届く言葉を使いたいと思っているので、参考になります。
「おられる」について、デジタル大辞泉には下記の記載があります。[注2]
【デジタル大辞泉】
お・る【居る】
1㋐人が存在する。そこにいる。
㋑「いる」の古風な、尊大な言い方。また、「いる」に比べて方言的な響きを帯びる。
2 「いる」の丁寧な言い方
〈中略〉
◆助動詞「れる」の付いた「おられる」「…ておられる」の形で尊敬表現に用いられる。
つまり、「おられる」は、正しい尊敬表現です。
しかし、文化庁は、「おる」は、謙譲語Ⅱ(丁重語)として分類しています。謙譲語は、自分の行為をへりくだって表現する言葉であるため、敬う相手の行為に使うのは間違いです。
この考え方が馴染んでいる方は、謙譲語(丁重語)の「おる」に尊敬語の「れる」がつくと感じて、「なんだか変だな」という印象を持つのでしょう。
それでは、本当に違和感があるのか、例文で確認してみましょう。
【例文:おられる】
この内容で契約している取引先様もおられらます。
ビジネスメールを読んでいて、上記のような文章に出くわすと、なんともいえない引っかかりを感じます。
そう。「おられる」は尊敬の意味で使用して間違いありませんが、違和感を覚える方も少なくありません。
「いらっしゃる」を使うほうが無難です。
より多くの方にスムーズに理解していただこうと考えるなら、文章作成の場では、「いらっしゃる」の使用をおすすめします。
謙譲語についてもっと知りたい方は、記事ブログ内に謙譲語について詳しく書いた記事があります。謙譲語はへりくだることで相手を高める敬語です。こちらも、ぜひ、ご覧くださいね↓
[注2]デジタル大辞泉/小学館
「おられる」の意味と使い方
「おられる」の意味と使い方を教えてください。
「おられる」は「いる」の尊敬語です。
「お客様はこちらにおられます」のように使います。
詳しく見ていきましょう。
「おられる」は「いる」の尊敬語
「おられる」は「いる」の尊敬語です。
明鏡国語辞典には、「おられる」について、次のように記載されています。[注3]
【明鏡国語辞典】
おられる
①「いる」「…て[で]いる」の尊敬語。
「その頃向島に文淵先生という方がおられた〈鴎外〉
「この物語を最初から読んでおられる読者は、多分覚えておられるでしょうが〈谷崎潤一郎〉
②(…て)おることができる。(…て)いられる。(…て)おれる。
「長くおられません」「泣かずにはおれない」
◆動詞「おる(居る)の未然形+尊敬・可能の助動詞「れる」。
もともと、「おる」は、無生物の存在を表す「ある」に対して、「いる」とともに人や動物の存在を表す語として使われた。江戸時代に「いられる」、近代に「おられる」の尊敬語の用法も生まれた。
「お客様は今別室におられます」などは、現在では西日本的な言い方。東日本では一般的に「いらっしゃいます」「おいでになります」となる。
「おられる」「いらっしゃる」は、地方によっても用法に違いがあると記載されています。
- 西日本:「お客様は別室におられます」
- 東日本:「お客様は別室にいらっしゃいます」「お客様は別室においでになります」
一般的に、西日本のほうが、「おられる」を尊敬表現として使用することに抵抗がないようです。
[注3]明鏡国語辞典/大修館書店
「おられる」の使い方:例文
尊敬語の「おられる」を例文で見てみましょう。
【例文:尊敬語「おられる」】
こちらにおられるのがクライアント様です。
「いる」を「おられる」にすることで、尊敬を表現しています。
もう一つ、例文を見てみましょう。
【例文:尊敬語「おられる」】
部長はどちらにおられますか。
「部長はどちらにいますか」を、尊敬語で表した例文です。
もう一つ、例文を見てみましょう。
【例文:尊敬語「おられる」】
田中さんは、総務部におられました。
「田中さんは、総務部にいました」を尊敬語で表現しています。
どれも正しい尊敬語のようですが、私はどうしても違和感を覚えてしまいます。ほかの表現があれば教えてください!
わかりました。「おられる」の適切な言い換え方法を、次でご紹介します。
「おられる」を「いらっしゃる」に言い換える
さきほどご紹介した例文の「おられる」を、すべて「いらっしゃる」に言い換えましょう。
【例文:尊敬語「おられる」を「いらっしゃる」に言い換える】
こちらにおられるのがクライアント様です。
↓言い換え
こちらにいらっしゃるのがクライアント様です。
【例文:尊敬語「おられる」を「いらっしゃる」に言い換える】
部長はどちらにおられますか。
↓言い換え
部長はどちらにいらっしゃいますか。
【例文:尊敬語「おられる」を「いらっしゃる」に言い換える】
田中さんは、総務部におられました。
↓言い換え
田中さんは、総務部にいらっしゃいました。
「おられる」を「いらっしゃる」に言い換えると、私にもすっきりと尊敬表現であると理解できます!
「おられる」を使用して、少しでも引っかかりを感じたら、「いらっしゃる」に言い換えてしまいましょう。
「いらっしゃる」の4つの意味と使い方
「いらっしゃる」についても意味と使い方を教えてください。
「いらっしゃる」は、「いる」「来る」「行く」「である」の尊敬語です。
例文で詳しく見ていきましょう。
「いらっしゃる」の例文
「いらっしゃる」を、4つの意味別に、例文で確認してみましょう。
いらっしゃる(尊敬語) |
いる |
来る | |
行く | |
である |
いる
【例文:「いる」と「いらっしゃる」】
カメラの前に、大統領がいる。
↓
カメラの前に、大統領がいらっしゃる。
来る
【例文:「来る」と「いらっしゃる」】
東京方面から、お客様が来る。
↓
東京方面から、お客様がいらっしゃる。
行く
【例文:「行く」と「いらっしゃる」】
部長は、5時に、会社から渋谷に行く。
↓
部長は、5時に、会社から渋谷にいらっしゃる。
である
【例文:「である」と「いらっしゃる」】
こちらが、私の師匠であります。
↓
こちらが、私の師匠でいらっしゃいます。
「いる」「行く」「来る」「である」の4つは、「いらっしゃる」という尊敬語で表現できます。
「おられる」は気になると感じる人が43.1%
文化庁の平成10年度「国語に関する世論調査」によると、次の結果が発表されています。
【文化庁/ 平成10年度「国語に関する世論調査」】
3.気になる言い方〈Q6〉ー「おられる」は気になるかー分かれる感じ方ー
(1)「先生は心配しておられたよ」 気になる 43.1% 気にならない 51.8%
4割強の人が「気になる」と答えている。平成9年度の調査で、「総務課の武田さんは、どちらにおられますか」について「敬語が正しく使われていないと思う」と答えた人の割合が30.0%だったことを考え合わせると、「おられる」という言葉については3〜4割程度の人が違和感を持っているものと思われる。
3〜4割程度の人が違和感を持っているのが「おられる」という言葉です。
メールの相手先や、読み手に、「本当にこの使い方で合っているのかな」と思われてしまうと、文章力に不信感を抱かれてしまいそうで心配です。
そうですね。正しい、正しくないはさておき、3〜4割もの人が違和感を覚えるのだから、「おられます」の使用はできるだけ避けましょう。
誰もがスムーズに受け取れる表現を目指そう
尊敬語の「おられる」「いらっしゃる」についてご説明しました。
「おられる」は、尊敬表現として使っても間違いではありません。しかし、違和感を覚える人が多い表現であると認識しておきましょう。
より多くの方にスムーズに理解していただこうと思うなら、「いらっしゃる」を使うのがおすすめです。
たとえ正しい表現でも、違和感や気持ち悪さを与える表現は避けるほうがよいです。正しく、同時にわかりやすい表現があるなら、迷わずそちらを選択しましょう。