外は雨模様です。
傘を持っていなくて、ぬれてしまいました。
その「雨模様」の使い方、間違いです。
雨模様とは、今にも雨が降り出しそうな空の様子のことです。
まだ雨は降っていません。
間違えて覚えられていることが多い「雨模様」について、例文も交えて解説いたします。
目次
雨模様とは:雨が降り出しそうな様子
雨模様とは、今にも雨が降り出しそうな空の様子を意味します。[注1]
まだ、雨は降っていない状態です。
【雨模様】
雨が降りだしそうなようす。あまもよう。雨催(あまもよい)
※朱雀日記(1912)<谷崎潤一郎>嵯峨野「雨模様の空が鼠色に曇って」
[引用]小学館「精選版 日本国語大辞典」
読み方は、「あまもよう」「あめもよう」です。
雨模様の語源
雨模様の語源は、「雨催い(あまもよい」です。
「催い」には、「その物事のきざしが見える」という意味があります。
【催い】
1 準備をすること。用意を整えること。多く、名詞の下に付けて用いる。「舟催い」
2 名詞の下に付けて、その物事のきざしが見えることを表す。「雨催いの空」「雪催い」
[引用]小学館デジタル大辞泉
これから雨が降りそうな様子である「雨を催す」「雨催い(あまもよい)」が変化して「雨模様」と言われるようになりました。[注1]
雨模様の誤用:約5割の人が間違えている
文化庁によると、「雨模様」の意味を約5割の人が間違えているという調査結果があります。[注2]
次に示すのは、「外は雨模様だ」という例文を挙げ、「雨模様」の意味を尋ねた結果です。
【雨模様 例:外は雨模様だ】
① 雨が降りそうな様子 | 43.3% |
② 小雨が降ったりやんだりしている様子 | 47.5% |
①②、両方の意味 | 4.8% |
①②、とは別の意味 | 3.2% |
わからない | 1.2% |
赤字で示した「雨が降りそうな様子」が本来の意味です。
しかし、「小雨が降ったりやんだししている様子」と勘違いしている人が約5割もいます。
「催す」意味がある「催い」が「模様」に変化し、本来の意味がわかりにくくなってしまったのでしょう。
[注2]文化庁/平成22年度「国語に関する世論調査」の結果について[PDF]
雨模様の使い方:例文で解説
「雨模様」は、次のように使います。
【例文:雨模様】
◯ 雨模様だから、降ってくる前に帰ろう。
◯ 雨模様だから洗濯物は部屋の中に干そう。
◯ 外は雨模様です。傘を持っていったほうがいいでしょう。
今にも降り出しそうだが、まだ降ってはいない、という状態で使います。
間違った使い方も例文で確認してみましょう。
【例文:雨模様の間違った使い方】
✕ 今日は雨模様だからぬれてしまった。
✕ 雨模様の中、ぬれてさまよう。
✕ 雨模様だけど、もうすぐやむでしょう。
もう雨が降っている状態で「雨模様」を使うのは間違いです。
雨模様を類語で言い換えよう
雨模様には次の類語があります。
【雨模様の類語】
怪しい天気
怪しい天候
雨の予感
思わしくない天気
思わしくない空模様
どんよりした天気
どんよりした空模様
雨模様を類語で言い換えてみましょう。
【例文:空模様の類語】
怪しい天気になってきたから家に帰ろう。
今にも降り出しそうな怪しい天候だ。
雨の予感がする日だ。
思わしくない天気だから出かけるのをやめた。
思わしくない空模様だから早く洗濯物を取り入れよう。
気が滅入るようなどんよりした天気だ。
どんよりした空模様だから傘を忘れないで。
雨模様の英語表現
雨模様の意味を表す英語表現をご紹介します。
【例文:雨模様を英語で】
・threatening sky
it’s a threatening sky today.
・signs of rain
There are signs of rain.
There are signs of a coming rain.
・looks like rain
It looks like rain.
threateningには、「天候が急に崩れそうな」という意味があります。
signには、「兆し、兆候」という意味があります。
it looks likeは、この場合、未来に起こりそうなことを予想する意味で使用されています。
上記の例文は、どれも「雨模様だ」と訳してよいでしょう。
間違いが多い!天気の表現
「雨模様」の他にも、間違いが多い天気の表現があります。
- 小春日和
- 五月晴れ
- 満点の星空
- 未明
詳しく見ていきましょう。
小春日和
小春日和は、「初冬(11月から12月上旬頃)の穏やかで暖かな天気のこと」です。
小春日和には「春」という漢字が入っていますが、春先の穏やかな天気のことではありません。
文学作品でも、次のように使われています。
秋から冬に成る頃の小春日和は,この地方での最も忘れ難い,最も心地の好い時の一つである。
島崎藤村 「千曲川のスケッチ」 (明治44年)
[引用]島崎藤村「千曲川のスケッチ」
五月晴れ
五月晴れは、「梅雨の晴れ間」を表します。
5月の晴天のことではありません。
旧暦の5月は、太陽暦の6月頃です。
そのため、五月晴れは、本来、梅雨の晴れ間を指す言葉でした。
俳句では、五月晴れは夏の季語とされてます。
五月雨も、5月に降る雨のことではありません。五月雨は梅雨を指します。
満天の星空
満天の星空は、重複表現です。
「満天」の「天」は、「空」を意味します。そのため、「満天」だけでも「空」の意味があります。
そこに「星空」を重ねると重複してしまいます。
「空いっぱいの星空」といっているようなものです。
「満面の笑顔」「頭痛が痛い」「馬から落馬する」などと同じ重複表現です。
正しくは、「満天の星」です。
未明
未明は、「夜が明けようとする頃」のことです。
気象庁の天気予報では「午前0時頃から午前3時頃まで」を指します。[注3]
未明は、明け方をイメージする人が多いのですが、イメージよりも早い時間帯です。
美しい雨の表現
「雨模様」も語源の「雨催い」も、情緒のある素敵な表現です。
他にも、美しい雨の表現をご紹介します。
木の芽流し(きのめながし) | 木の芽を優しく洗うように降る雨。 |
春霖(しゅんりん) | 春、3月から4月にかけて降る長雨。 |
紅雨(こうう) | 春、花に降り注ぐ雨。 |
翠雨(すいう) | 草木の青葉に降る雨。 |
夕立(ゆうだち) | 夏の夕方に激しく降る雨。 |
驟雨(しゅうう) | にわか雨。急に降り出してまもなくやんでしまう雨。 |
涼雨(りょうう) | 夏に涼しさをもたらす雨 |
時雨(しぐれ) | 秋の末から冬の始めにかけて、ぱらぱらと通り雨のように降る雨。 |
氷雨(ひさめ) | 冷たい雨。または、みぞれ。 |
狐の嫁入り(きつねのよめいり) | 天気雨。日が照っているのに急に雨がぱらつくこと。 |
雨模様の本来の意味を知っておこう
雨模様の本来の意味は、「今にも雨が降り出しそうな空の様子」です。
しかし、近年では、誤用が広まり、「小雨が降ったり止んだりしている様子」として使われることも増えました。
雨模様は、本来の意味である「今にも雨が降り出しそうな空の様子」として使いましょう。
雨模様では、まだ雨は降っていません。