「ぞっとしない」の本来の意味は「面白くない」「あまり感心しない」です。
ところが、「ぞっとしない」を「恐ろしくない」の意味だと勘違いしている人が54.1%もいるという調査結果があります。[注1]
確かに、「ぞっとしないね」などと言われると、
「あれ?意味はなんだったかな」と、混乱することがあります。
では、こちらの記事でしっかり確認しましょう。
「ぞっとしない」の意味・語源・類語などを解説いたします。
目次
【意味】ぞっとしない:面白くない・あまり感心しない
「ぞっとしない」の本来の意味は、「面白くない」「あまり感心しない」です。
デジタル大辞泉には次の記載があります。[注2]
【ぞっとしない】
おもしろくない。あまり感心しない。
「引き出物にするにはぞっとしない品だ」
さきほどの話はぞっとしない話でしたね。
えっと、恐ろしいという意味ですか?
恐ろしくないという意味ですか?
どちらも違います!
「ぞっと」の響きから意味を勘違いされやすいのが「ぞっとしない」という言葉です。
「ぞっとしない話でしたね」と言われたら、「面白くない話でしたね」「あまり感心しない話でしたね」という意味です。
「ぞっとしない」は文学作品でも使われています。
「然もそれを濡らした水は、幾日前に汲んだ、溜め置きかと考へると、余りぞっとしない」
意味:しかも、それを濡らした水は、幾日前に汲んだ、溜め置きかと考えると、あまり感心しない
夏目漱石「草枕」1906
例文で確認してみましょう。
「ぞっとしない」は次のように使われます。
【例文:「ぞっとしない」】
今日観た映画は ぞっとしない 話だった。
服装についてあれこれ言われるのは ぞっとしない な。
実に ぞっとしない 物語だ。
彼のバイオリンは ぞっとしない 演奏だった。
せっかく借りたけれど、ぞっとしない 漫画だった。
ぞっとしない 企画だね。
今日は ぞっとしない メンバーだから盛り上がらなかった。
[注2]小学館/デジタル大辞泉
「ぞっとしない」誤用が54.1 %以上
「ぞっとしない」を「恐ろしくない」という意味だと勘違いしている人が54.1%もいるという調査結果があります。
平成18年度の「国語に関する世論調査」では、次の結果が出ました。[注2]
平成18年度の「国語に関する世論調査」で,「今の映画は,余りぞっとしないものだった。」という例文を挙げ,「ぞっとしない」の意味を尋ねました。結果は次のとおりです。(下線を付したものが本来の意味。)
〔全 体〕
ぞっとしない(ア)面白くない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31.3%
(イ)恐ろしくない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54.1%
(ア)と(イ)の両方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.4%
(ア),(イ)とは全く別の意味・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.4%
分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9.8%
上記の調査結果では、本来の意味である「面白くない」と答えた人はわずか31.3%と、半数を下回ります。
「ぞっとする」には「恐ろしい」という意味があるため、「ぞっとしない」を「恐ろしくない」と解釈してしまうのでしょう。しかし、これは誤りなのです。
[注2]文化庁/平成18年度「国語に関する世論調査」の結果について
「ぞっとしない」の語源を解釈
「ぞっとしない」の意味が間違えられてしまうのには、語源も関係しているのでしょう。
まず、「ぞっと」の意味を確認してみましょう。[注2]
【ぞっと】
寒さや恐怖などのために、また、強い感動を受けて、からだが震え上がるさま。
「ぞっと寒気をおぼえる」
「今地震が来たらと思うとぞっとする」
「ぞっとするほど美しい顔立ち」
「ぞっと」の意味には、恐怖の他に、「強い感動」があります。
これを反対にすると「強く感動しない」、転じて「面白くない」「あまり感心しない」になります。
つまり、「ぞっとしない」は、「強く感動する」の否定として、「面白くない」「あまり感心しない」という意味で使われるのでしょう。
「あの映画はぞっとしない」
↓
「あの映画は強く感動しない」
↓
「あの映画は面白くない」
上記のように考えてみましょう。
[注2]小学館「デジタル大辞泉」
「ぞっとしない」の類語
それでは、「ぞっとしない」の類語をご紹介します。
【類語:ぞっとしない】
ぞっとしない=面白くない・あまり感心しない
面白くない
味気ない
無味乾燥な
趣がない
興ざめのする
情感がない
感心しない
不興を買う
例文で確認しましょう。
【例文:ぞっとしないの類語】
面白くない
あの小説は面白くない。
味気ない
今日のドラマは味気なかった。
無味乾燥な
始業式の校長先生の挨拶は無味乾燥だった。
趣がない
この俳句は趣がない。
興ざめ
おめでたい席で興ざめな話はしないこと。
情感がない
情感がない歌だった。
感心しない
あまり感心しないやり方だ。
「ぞっとしない」は、半数以上もの人が意味を間違えている言葉です。
「ぞっとしない」を使って誤解を招きそうな場面では、他の言葉に言い換えてみましょう。
「ぞっとしないね」は使わない?
ここまでご説明してきましたが、「ぞっとしない」は日常ではあまり使わないかもしれません。
確かに、「あの映画観たけど、ぞっとしなかったよ」
とは言わないかもしれません。
話し言葉で使う場面は少ないでしょう。
ただし、文学作品を正しく読んだり、記事を書くためには、正しい言葉の知識は必要です。
ちょっとした豆知識として、楽しんで覚えてみましょう。
「ぞっとしない」の本来の意味を知っておこう
「ぞっとしない」は、「面白くない」「あまり感心しない」という意味です。
「その展開はぞっとしない(その展開は面白くない)」
そんなふうに使いましょう。
「ぞっとしない」を「恐ろしくない」の意味で使ったり理解したりしないようお気をつけください!