「役不足」は、その人の力量に比べて、役目が軽すぎることを意味します。
- 能力が高い人に対して、あのポジションでは役不足の感がある
本来はそんな風に使います。
ところが、意味を間違えている人が約半分もいるのです。
多くの間違いは、「力不足」と混同して、謙遜すべき場面で使ってしまいます。
そんな大役、私には役不足です。
その「役不足」の使い方、間違っています!
「私には役不足です」では、「私(のように力量がある者)にはその役目は軽すぎます」と、尊大な発言になってしまいます。
文脈から「私には力不足です」と謙遜したいのだろうと推測はできますが、ここで「役不足」は誤用です。
今回は、「役不足」について正しく使えるよう、わかりやすくご紹介します。
目次
役不足とは
役不足とは、次の意味があります。[注1]
- その人の能力に対して、与えられた役や役目が軽すぎること
つまり、「役不足」で足りないのは「役目」ということです。
これを「能力が足りない」という意味に勘違いして使ってしまっている人が多いようです。
本来であれば、「力不足」を使って謙遜すべき場面で、この「役不足」を使ってしまうことがあります。
プロジェクトリーダーだなんて、私には役不足です…
それは「役不足」の間違った使い方です。
それを言うなら、「私には力不足です」でしょう。
辞書で「役不足」を調べてみると次の記載があります。[注2]
やくぶそく【役不足】
①俳優などが、自分に割り当てられた役に対して不満を抱くこと。
②その人の力量に比べて、役目が軽すぎること。
「ーの感がある」
▷誤って、力不足の意に用いることがある。
役不足の正しい使い方を例文で確認してみましょう。
【例文:役不足】
彼のような大物俳優には、それは役不足ですよ。
(意味:彼のような大物俳優には、その役は軽すぎて力量を十分に発揮できない)
通行人の役なんて私には役不足だ。
(意味:通行人の役なんて私には役が軽すぎて不満だ)
部長のような優れた方にこのポストは役不足です。
(意味:部長のような優れた方にこのポストは軽い役目で能力にふさわしくない)
このように、「役不足」は、能力に対して役目が軽すぎるという意味で使われます。
[注2]オンライン広辞苑
「役不足」の意味を「力不足」と誤解している人が約50%
「役不足」は50.3%の人が意味を誤解しているという調査結果があります。[注1]
- 本来の意味 : 能力に対して役目が軽すぎる
- 誤解されている意味: 能力に対して役目が重すぎる
よく、謙遜する意味で次のように言われることがあります。
あなたに、この記事をぜひ任せたいと思います。
いえいえ、とても無理です。
私には役不足です。
!
上記の会話は、「力不足」という言葉を使うべきところを「役不足」を使ってしまっています。
つまり、「私の能力に対して、その役目は軽すぎます」と、とても尊大なことを言ってしまっているのです。
謙遜するつもりが尊大になってしまっては大変です。注意しましょう。
平成18年度の「国語に関する世論調査」では、次の結果が出ています。[注]
【役不足の意味】 | |
☓本人の力量に対して役目が重すぎること | 50.3% |
◯本人の力量に対して役目が軽すぎること | 40.3% |
その他 | 9.4% |
なんと、50.3%と、半数の人が「役不足」の意味を勘違いしているのです。
これだけ多くの人が誤解している理由は、「役不足」という言葉が、「力不足」「能力不足」という言葉と混同されやすいことが考えられます。
「役不足」は誤解を招く可能性がある
ここで注意しなければならないのが、「役不足」を正しく使ったとしても、相手側が意味を間違えて理解していた場合、失礼に受け取られてしまう可能性があることです。
編集長、今度の記事の担当から私が外されたのはどうしてですか?
君には役不足だからだよ
上記の会話の場合、ライターが「役不足」を正しく理解しれば、「能力を高く評価してもらっていて、次の記事は自分を担当させるほど重要ではないということか」と考えられます。
しかし、もしもライターが「役不足」を「力不足」という意味と勘違いしていたなら、「自分では力不足でその記事は担当できないと言われた」と理解してしまいます。
大変な誤解を招いてしまいます。
また、次の場合も、もしも誤解が発生したら困りものです。
〇〇さんにはこの仕事は役不足ですよ。
…。
この場合、「〇〇さん(目上の人)は能力が高いから、この仕事は軽すぎる」という意図の発言です。
しかし、もしも〇〇さん(目上の人)が「役不足」の意味を「力不足」と勘違いしていたら大変です。
「〇〇さん(目上の人)ではこの仕事には能力が足りないですよ」と言われたように感じてしまいます。
約半数の人が誤解している言葉です。たとえ正しく使えても誤解を招いてしまう可能性はあります。
能力に関する話題であるため、「役不足」という言葉の使用には細心の注意が必要です。
役不足の使い方
それでは、「役不足」の正しい使い方を例文でご紹介します。
【例文:役不足の正しい使い方】
そのポストは彼には役不足だから上司に相談する。
(意味:そのポストは彼には役目が軽すぎるから上司に相談する)
彼は、今回の配役は役不足だと不満のようだ。
(意味:彼は、今回の配役は、自分の実力に見合わず軽い役だと不満のようだ)
この仕事はあなたには役不足ですが、後任が見つかるまで引き受けてください。
(意味:この仕事はあなたの能力に見合わない簡単な仕事ですが、後任が見つかるまで引き受けてください)
役不足は、「その人の能力に対して、与えられた役や役目が軽すぎること」という意味で使いましょう。
役不足の言い換え【例文つき】
「役不足」は、意味を誤って認識している人が多い言葉です。
誤解されては困る場合には、ほかの言葉で言い換えましょう。
「自分の能力には物足りない」という意味合いの言葉が当てはまります。
【例文:役不足を言い換える】
こんな仕事は私には役不足だ。
↓
こんな仕事は私には朝飯前だ。
それなら僕には役不足だよ。
↓
それなら僕には楽勝だよ。
そのポジションでは役不足ではないでしょうか。
↓
そのポジションでは簡単すぎるのではないでしょうか。
この仕事では役不足だ。
↓
この仕事では物足りない。
例文では、「役不足」を次の言葉で言い換えました。
- 朝飯前
- 楽勝
- 簡単すぎる
- 物足りない
これらの言葉なら、意味を誤解されることは少ないでしょう。
適宜使い分けてみてはいかがでしょうか。
【おまけ】間違いやすい言葉
「役不足」の他にも、意味を間違えている人が多い言葉はあります。
表で確認してみましょう。
【意味を間違いやすい言葉】
◯正しい意味 | ☓間違いやすい意味 | |
話のさわり | 話の中心部分
話の要点 |
話の最初の部分 |
ぞっとしない | 面白くない | 恐ろしくない |
うがった見方をする | 物事の本質を捉えた見方をする | 疑って掛かるような見方をする |
「話のさわり」は、話の中心部分という意味なのですが、話の最初の部分と誤解している人が53.3%もいるという調査結果もあります。[注3]
「話のさわりをお話します」というのは、「話の要点をお話します」という意味です。
「話の最初」と間違えないように注意しましょう。
「話のさわり」など、間違いが多い言葉をご紹介した記事があります。こちらもご覧ください↓
[注3]文化庁/文化庁月報/連載「言葉のQ&A」/「さわりだけ聞かせる」の「さわり」とは?
「役不足」は「力不足」の意味では使わない
「役不足」は、能力に対して役目が軽すぎるという意味で使われます。
くれぐれも、「力不足」「力量が足りない」という言葉と混同しないようにしましょう。
また、5割もの人が意味を間違えている言葉です。
使用する場合は、誤解のないように気をつけましょう。