述語は、主語を受けて説明する文節のことです。
- 空が 青い。
- 風が 吹く。
「青い」「吹く」は述語です。
日本語の文章は、述語で意味が決定されます。
分かりやすい文章を書けるかどうかは、主語と述語を適切に組み立てられるかどうかにかかっています。
「書いてあることの意味が分からない…」「読んでも頭に入らない…」
そんな文章は、主語と述語の関係に問題があることが多いです。
「主語と述語を噛み合わせる」など、こちらでご紹介する4つのテクニックを実践してみてください。
文章がすっきりして分かりやすくなるでしょう。
目次
「述語」とは主語を受ける文節のこと
述語とは、主語を受けて説明する文節のことです。
「何がどうした」の「どうした」の部分は述語です。述語が文章の意味を決定します。
- 花が(主語) 美しく(修飾語) 咲く(述語)
日本語の文章では、通常、述語は文末にあります。(倒置法では述語が前にくる)
デジタル大辞泉には次のように説明されています。
【デジタル大辞泉】
じゅつご【述語】
文の成分の一。主語について、その動作・作用・性質・状態などを叙述するもの。
「鳥が鳴く」「山が高い」「彼は学生だ」の「鳴く」「高い」「学生だ」の類。
例文で見てみましょう。
【例文:述語】
彼が 笑う。
→彼が(主語) 笑う(述語)
→何が どうする(動作)
薬が 効く。
→薬が(主語) 効く(述語)
→何が どうなる (作用)
海が 青い。
→海が(主語) 青い(述語)
→何が どんなだ(性質)
彼女は 学生だ。
→彼女は(主語) 学生だ(述語)
→何が 何だ(状態)
主語は述語にかかり、述語は主語を受けます。
日本語では、通常、最後にある述語まで読んで文章全体の意味が明らかになります。
【例文:述語が文章の意味を決定する】
彼女は 震える指先で その封筒を 開けた。
彼女は 震える指先で その封筒を 捨てた。
上記の例文では、述語まで読まないと、彼女が封筒をどうしたのか分かりません。述語次第で全く違う意味になります。
文章の意味を明らかにするのは、最後の述語です。
そのため、意味がスラスラ頭に入る文章を書くためには、主語と述語を適切に組み合わせることが大切なのです。
「主語+述語」が適切な文章は分かりやすい
主語と述語の関係は、文章の意味を明らかにする重要な骨格です。
読み手がスムーズに理解できる文章を書くためには、主語と述語を上手に組み合わせる必要があります。
「読んでもなんだか意味が分からない」
そう感じる文章は、主語と述語が噛み合っていないことが多いものです。
主語と述語が噛み合っていないことを「文章のねじれ」といいます。
【例文:文章のねじれ】
私は、WHOがウイルス対策にマスクが不要と公表したことが原因です。
思わず二度見してしまう文章です。しかし、2回読んでも、推測で補わなければ書き手の意図が分かりません。
原因は、主語と述語が噛み合っていないことです。
主語「私は」が、述語「原因です」にかかっていないため、文章の主意が分からず、読み手を混乱させます。
【例文:文章のねじれを改善】
私は、この問題の原因は、WHOが「ウイルス対策にマスクが不要」と公表したことだと思います。
改善例では、主語「私は」と述語「思います」が噛み合っています。
「文章の主語と述語が噛み合っていること」は、意味が分かる文章を書くための基本です。
述語:4つのポイント
分かりやすい文章は、主語と述語が明瞭です。
- 花が 咲いた。
- 星が 光る。
- あなたが 笑う。
主語と述語の骨格がシンプルで明快であるほど、読み手は理解しやすいと感じます。
実際に記事を書く場合には、上記の例文より、もっと長い文章を書く必要があります。
その際は、ご説明する4つのテクニックを駆使してみましょう。
述語の使い方を丁寧に意識するだけで、スラスラと分かりやすい文章を書けるようになります。
それでは、文章を分かりやすくするための述語の使い方4つのポイントをご紹介します。
ポイント1. 主語と述語を噛み合わせる
まず、基本は主語と述語を的確に噛み合わせることです。
文章をチェックして、主語と述語が噛み合っていることを確認しましょう。
【NG例:主語と述語が噛み合わない文章】
部長の提言は、オンラインに不慣れな社員がいて、会議がうまく進まないことがあるため、対策が必要です。
上記の例文は、主語「部長の提言は」と述語「必要です」が噛み合っていません。
読み進んでも意味がよく分からないと感じる文章は、このように主語と述語が噛み合っていないケースが多いです。
改善してみましょう。
【改善例:主語と述語が噛み合っている文章】
部長の提言は、オンラインに不慣れな社員がいて会議がうまく進まないことへの、対策の必要性です。
改善例では、主語「部長の提言は」と、述語「対策の必要性です」が噛み合っています。意味が分かります。
長い文章ほど、主語から述語の間が長いため、噛み合わなくなってしまいがちです。
「なにかおかしい文章だな」
「読んでも意味が分からないな」
そう感じたら、主語と述語を並べて考え、噛み合っているかを確認してみてください。
ポイント2. 述語を早く登場させる
述語はできるだけ早く登場させましょう。
つまり、一つひとつの文章をすっきり短く書きましょう。
述語がなかなか出てこない長すぎる文章には、次のデメリットがあります。
【長すぎる文章のデメリット】
- 主語と述語が噛み合わなくなる可能性が高まる
- 読み手は述語に辿り着くまでの長い文章を覚えていなければいけない
- 理解が難しい
長すぎる文章は、「結局、何が言いたのか分からなかった…」という状態になりがちです。
短くシンプルに言い切ってみましょう。
【NG例:述語がなかなか出てこない文章】
引越しで新居のインテリアを揃えるなら、せっかくだからお洒落な雰囲気にしたいと考える方が多いため、今回は、理想の部屋を実現するインテリアコーディネーターの斎藤さんに、誰でも簡単にお洒落な部屋を作れるコツについて伝授していただきましたので、新居をお洒落にコーディネートしたい方は必見です。
極端な例ですが、このようにダラダラと長い文は、潔く句点「。」で区切り、短く改善しましょう。
【改善例】
新居のインテリアを揃える際、「お洒落な雰囲気にしたいけれど、やり方が分からない」そんな声をよく聞きます。
そこで今回は、インテリアコーディネーターの斎藤さんに、誰でも簡単にお洒落な部屋を作れるコツを伝授していただきます。
斎藤さんは、理想の部屋を実現するインテリアコーディネーターとして名高い方です。
新居をお洒落にコーディネートしたい方は必見です。
「ため」「ので」でつながれていた文章を区切り、4つの文に分けました。
もう一つ、例を示します。
【NG例:述語がなかなかでてこない文章】
固定金利は、あらかじめ決められた期間は金利を固定できて、5年や10年など期間を選ぶ期間選択型と、完済まで金利がずっと変わらない全期間固定型があります。
例文はけして間違いではないのですが、意味がスラスラ分かる文章とはいえません。
少し直してみましょう。
【改善例】
固定金利は、あらかじめ決められた期間、金利を固定できます。
固定金利には次の2つのタイプがあります。
- 期間選択型
- 全期間固定型
期間選型は、5年や10年など、金利を固定する期間を選べます。
全期間固定型は、完済まで金利がずっと変わりません。
短く区切って、箇条書きも入れてみました。
何が書いてあるのか、スラスラ分かるようになります。
短い文章は、述語が早く登場するため、何を説明しているのかスムーズに理解できます。
ポイント3. 主題1つに述語1つとする
文章は、主題1つに述語を1つ組み合わせ、すっきりと区切りましょう。
1つの文章でいくつもの主題を述べようとすると、何を言っているのか分からない文章になってしまいがちです。
【NG例:主題が多い文章】
注文住宅で考えられるトラブルとして、傷、汚れ、色ムラなどの施工ミスや、水回りの不具合、ドアや窓の取りつけの不具合がありますが、住み始めてから気づくことが多く、修理を依頼するのが面倒になってしまうため、引き渡しの際には、細部までしっかり確認する必要があります。
NG例では、1つの文章でいくつものことを述べようとしています。その結果、何が書いてあるのか今ひとつ分からなくなってしまっています。
【改善例】
注文住宅の引き渡しの際には、細部までしっかり確認しましょう。
住み始めてから次のトラブルに気が付くことがあるためです。
- 施工ミス(傷・汚れ・色ムラなど)
- 水回りの不具合
- *ドアや窓の取り付け不具合
住み始めてからトラブルに気が付いても、修理を依頼するのが億劫に感じてしまいます。
改善例では、「確認しましょう」という結論を短い文にして最初に持ってきました。
その後、文章を適宜区切って理由を説明しています。
これなら、スムーズに情報を伝えられます。
ポイント4. 文中の述語を書き落とさない
文中で、必要な述語がうっかり抜けてしまうことがあります。
【NG例:必要な述語が抜けている文章】
業者におかませやプロだから分かるだろうと確認を怠ると、トラブルにつながります。
意図するところは分からないこともないのですが、引っかかる文章です。
【改善例】
業者に任せっきりにしたり、プロだから分かるだろうと確認を怠ったりすると、トラブルにつながります。
改善例のように、丁寧に述語をつけていきましょう。
もう一つ、例文で確認してみましょう。
【NG例:必要な述語が抜けている文章】
ドイツでは、クリスマス前の4週間は、アドヴェントキャンドルや、クッキー、シュトーレンなどの伝統菓子、グリューワインを飲んで過ごします。
NG例は、最後の述語で無理やりすべてを引き受けるという少々雑な文章です。
【改善例】
ドイツでは、クリスマス前の4週間は、アドヴェントキャンドルを灯し、クッキーを焼き、シュトーレンなどの伝統菓子を食べ、グリューワインを飲んで過ごします。
改善例のように、一つひとつ、必要な述語を丁寧に組み込んでいきましょう。
品詞別の述語一覧
述語は、主語を受けて説明する言葉です。「どうする」「どうなる」「どんなだ」という意味を表現します。
具体的な述語を、品詞別に一覧で見てみましょう。
【述語一覧:品詞別】
動詞 | 笑う・見る・歩く・食べる・する・寝る |
形容詞 | 青い・重い・丸い・高い・長い・大きい・速い・新しい
遠い・広い・難しい |
形容動詞 | 親切だ・熱心だ・幸せだ・静かだ・明らかだ・安心だ・不便だ・変だ・真面目だ |
名詞+動詞 | 結婚する・学生だ・社長だ・日本人だ・本だ |
英語の「述語」は冒頭部分にある
日本語の述語は最後に示されますが、英語の述語は文章の冒頭部分で早々に示されます。
【例文:日本語の述語と英語の述語】
日本語:彼女は私に本をくれた。
英語 :She gave me the book.
日本語:彼は、今日、やらなければいけない宿題がたくさんあります。
英語 :He have a lot of homework to do today.
英語は述語が最初に示されるので、文章の結論がすぐに分かり、その後を読み進むことができます。
日本語では最後の述語まで読まないと結論や主意が分かりません。
そのため、述語に辿り着く前に、あまりに長すぎる修飾語句を挟むのは読み手にとっては負担です。
日本語では、文章を短く分けて、主語から述語までをすっきり分かるようにしておきましょう。
やさしい言葉を丁寧に組み立てよう
分かりやすい文章を書くためには、「主語+述語」の骨組みを上手に組み立てることが大切です。
文章を書く際には、主語と述語が適切に組み合わされているかを、いつも念頭に置くとよいです。
伝わる文章を書きたいなら、やさしい言葉を丁寧に組み立ててみましょう。
【参考文献】
阿部紘久「シンプルに書く」 飛鳥新社
阿部紘久「文章力の基本」 日本実業出版社
「みんなの日本語初級1教え方の手引」 スリーエーネットワーク