「共に」と「ともに」は、漢字かひらがなのどちらで書くべきでしょう?
「一緒」「同じ」という意味であれば、漢字の「共に」を使います。
ほら、「風と共に去りぬ」という文学作品もあるでしょう?
「風と一緒に」だから「風と共に」と書くわけです。
「同時に」という意味であれば、ひらがなの「ともに」を使います。
文章を書きながら、「共に」「ともに」、「あれ?どちらの表記で書くのがいいのかな?」と思うことがあります。
公用文では明確な指針があるため、こちらでご紹介いたします。
目次
「共に」「ともに」の使い分け【公用文】
新聞・雑誌など、公用文では、「共に」「ともに」は、意味によって次のように使い分けます。
意味 | 表記 |
一緒・同じ | 共に |
同時 | ともに |
共同通信社の記者ハンドブックには、明確な指針があります。[注1]
【引用:記者ハンドブック第13版】
とも
=共
〔一緒、同じ〕
行動を共にする、自他共に認める、生死を共にする、共裏、共切れ、共食い、共倒れ、共働き、母と共に食事をする
〔注〕
…と同時の意味の「…とともに」は平仮名書き。
つまり、記事作成の場合には、次の表記が一般的です。
- 「一緒・同じ」の意味の場合: 共に
- 「同時」の意味の場合: ともに
例文で確認してみましょう。
【例文:共に】
【共に】意味:一緒・同じ
共に生きる。
寝食を共にする。
【例文:ともに】
【ともに】意味:同時に
彼とともに(同時に)到着した。
感謝とともにご多幸をお祈り申し上げます。
上記のように、公用文の場合には明確な指針があるため、使い分けは簡単です。
「同時」の意味である場合のみ「ともに」とひらがな表記すると覚えてしまいましょう。
それでは、もう少し詳しく見ていきましょう。
「共に」と表記する: 「一緒・同じ」の意味の場合
「共に」と漢字表記をするのは、「一緒・同じ」という意味である場合です。
これは、覚えやすいと感じます。
「行動を一緒にする」であれば、「行動を共にする」と、表記すればよろしいでしょうか?
正解です。
とくに難しいことはありません。
シンプルに考えて大丈夫です。
では、例文で確認してみましょう。
【例文:「一緒」としての意味で使う「共に」】
一つにまとめること
荷物を共にする
区別のないこと
意見を共にする
同じことをする
共に学ぶ
同行する
共に行く。
【例文:「同じ」としての意味で使う「共に」】
同一である
行きと共に車で帰る。
区別がないさま・同様である
帽子が共に赤色だ。
「ともに」と表記する: 「同時」の意味の場合
少し紛らわしいのが「同時」の意味の「ともに」です。
つい漢字で書いてしまいそうですが、「同時」の意味があるならひらがな表記をしましょう。
では、具体的にどのような文章が「同時」に該当するのか、ご説明します。
【副詞的】同時に
上下線 ともに 発車します。
【接続詞的】同時に
ドアが開く音がして、ともに 愛犬が入ってきた。
私の短所であり、ともに 長所である。
【接続助詞的】同時に
夜が明けると ともに 出発した。
他人に甘いと ともに 自分にも甘い。
上記の例文のように「同時」としての意味で「ともに」を使う場合には、「ともに」とひらがなで表記しましょう
承知しました!
[注1]引用:共同通信社「記者ハンドブック第13版」
論文では表記ゆれしないことが大切である
新聞、雑誌など、公用文での使い分けはご説明いたしました。
それでは、論文では「ともに」は漢字表記とひらがな表記はどちらにするべきでしょう。
東北大学大学院理学研究科の「原稿を作成する際の表記法・用語法について 」には、次の記載がありました。[注2]
【引用:東北大学】
「ともに」と「共に」
:「ともに」と,ひらがなを使用.(例)・・・するとともに,・・・.
上記の研究科の資料では、ひらがなが推奨されていることになっています。
ただし、次のようにも記載されています。
大事なことは,冊子のなかで,用語法が統一されていることです.
一般的な表記の指針を参考に、表記ゆれしやすい用語はしっかりと表記ルールを作成しておくことが大切です。
[注2]東北大学大学院理学研究科/原稿を作成する際の表記法・用語法について /3.用語の具体例(「ひらかな」か「漢字」か)/pdf
「共に」「ともに」は表記ゆれに注意
表記を迷いがちな「共に」と「ともに」について解説いたしました。
- 「一緒・同じ」という意味は漢字の「共に」を使う
- 「同時」という意味はひらがなの「ともに」を使う
上記を覚えておきましょう。
ただし、これはあくまで一般的な指針であります。社内表記ルールで漢字かひらがなのどちらかだけに統一するのであれば、そのほうがすっきりするかもしれません。
大切なのは、表記ゆれしないことです。