連体詞は、体言(名詞・代名詞)を修飾する働きをします。
- ある 日、私は 気がついた。
- その 本に 書いてある。
「ある」は「日」を、「その」は「本」を修飾しています。
このように、体言(名詞)を修飾する働きをするのが連体詞です。
その存在や働きが今ひとつわからない連体詞ですが、こちらで覚え方をわかりやすく解説いたします。
「大きな」「小さな」のように、形容詞や形容動詞と間違えやすい連体詞についてもご説明いたします。
大きな・小さな・おかしな・いろんな、の4つは連体詞と覚えてしまいましょう!
副詞、形容詞、形容動詞との見分け方も知って、連体詞をすっきり理解しましょう。
目次
連体詞とは
連体詞とは、「ある 日」「あの 人」のように、体言を修飾する働きをする品詞です。
- ある 日、その 事件は 起きた。
- あの 人 が 私の運命を変えた。
活用しない自立語で、単独で連体修飾語になります。
次のようにまとめられます。
【連体詞の性質】
- 活用しない
- 自立語(その語句だけで意味がわかる・その語句だけで文節を作れる)
- 語尾で分類する5つの型がある
【連体詞の働き】
- 体言(名詞)だけを修飾する
- 単独で連体修飾語になる(連体修飾語は体言を修飾する言葉のこと)
連体詞の性質と働きを、例文で見てみましょう。
【例文:連体詞の性質と働き】
重要なのはこの部分 だ。 (←活用しない)
ある店で 購入 した。 (←自立語)
駅前の 書店であの人が この本を 購入した。(←体言だけを修飾する)
あらゆる人々が その曲を 聴いた。(単独で連体修飾語になる)
連体詞は語句も少ないため、いったん覚えてしまうと「これが連体詞」とすぐにわかるようになります。
文中で連体詞かどうか判断したいときには、下記の性質があてはまるか考えてみましょう。
- 体言(名詞)を修飾している
- 活用しない
あてはまれば連体詞の可能性が強いでしょう。
覚えておきたい連体詞:大きな・小さな・おかしな・いろんな
「大きな」「小さな」「おかしな」「いろんな」は連体詞です。
形容詞「大きい」「「小さい」「おかしい」と混同しやすく、さらに「―な」の形で体言(名詞)を修飾することから、形容動詞とも間違えやすいです。
そのため、分類にとくに注意が必要な連体詞であります。ぜひ、覚えておきましょう。
【例文:「大きな」は連体詞・「大きい」は形容詞】
リビングに 大きな時計 を 置く。(←連体詞)
リビングに 大きい 時計 を 置く。(←形容詞)
「大きい」は、次の2点から、形容詞とわかります。
- 「大きい」は終止形(言い切りの形)が「い」で終わる
- 「大きい時計」のように、「―い」の形で体言(名詞)を修飾する
一方、「大きな」は、上の2点があてはまらないことから、形容詞でないことがわかります。
さらに、「―な」で体言を修飾する形容動詞とも紛らわしいのが連体詞です。
連体詞と形容動詞を見分けるためには、語幹に「だった」をつけてみます。
- 語幹に「だった」をつけて成立すれば形容動詞
- 語幹に「だった」をつけて成立しなければ連体詞
例文で見てみましょう。
【例文:連体詞と形容動詞】
大きな→大きだった ×→連体詞
小さな→小さだった ×→連体詞
おかしな→おかしだった ×→連体詞
静かな→静かだった ◯→形容動詞
きれいな→きれいだった ◯→形容動詞
元気な→元気だった ◯→形容動詞
「大きな」は、語幹に「だった」をつけると「大きだった」と成立しないため、形容動詞ではなく連体詞とわかります。
実際に、模試や入試のようにスピードが必要な場面で、上記のように考える時間はないかもしれません。
「大きな・小さな・おかしな・いろんな、の4つは連体詞」と覚えてしまうのをおすすめします。
豆知識としても、覚えておくと品詞の分類に悩みませんね。
形容詞・形容動詞に関しては、記事ブログ内に私が解説した記事があります。
形容詞の記事は、基礎知識のほかに、表現力をアップさせる3つのポイントをご紹介しております。形容詞を上手に使いこなす参考になさってください↓
形容動詞の記事は、形容詞や他品詞との見分け方を解説しております。形容動詞の性質や特徴もわかりやすくまとめてあるため、こちらも必見です↓
連体詞の5つの型の覚え方
連体詞には、語尾で分類する5つの型があります。
分類に沿って覚えると、「これは連体詞だ」とすぐにわかるようになります。
語尾の形によって、「の・る・な・ただ・その他」と覚えると簡単です。
【連体詞5つの型】
語尾 | 連体詞 | 連体詞:例文 |
「―の」型 | この・その・あの・どの・例の | この家・その本・あの人・
どの街・例の噂 |
「―る」型 | ある・あらゆる・いわゆる・いかなる・さる・きたる | ある日・あらゆる人々・
いわゆる天才・さる8月・ きたる2030年 |
「―な」型 | 大きな・小さな・おかしな・いろんな | 大きな木・小さな動物・
おかしな生物・いろんな果物 |
「―た」型
「―だ」型 |
たいした
とんだ |
たいしたもの
とんだ災難 |
その他 | あらぬ・わが | あらぬ方向・わが国 |
ここでは、「連体詞は“のるなただ”(+その他)」と、ざっくり理解しておいてください。
1. 「―の」型
この・その・あの・どの・例の・ほんの
「―の」型は、「この・その・あの・どの」にように指示語(こそあど)に当たる言葉など、「の」で終わる形で体言(名詞)を修飾します。
「この家」「その本」「あの人」「どの道」「例の話」などです。
2. 「―る」型
ある・あらゆる・いわゆる・いかなる・さる・きたる
「―る」型は、「あるとき」のように、「る」で終わる形で体言(名詞)を修飾します。
「ある日」「あらゆる場面」「いかなるとき」「さる3月」「きたる未来」などです。
3. 「―な」型
大きな・小さな・おかしな・いろんな
形容詞、形容動詞と間違えやすいのが、「―な」型の連体詞です。
形容詞との見分け方、形容動詞との見分け方は、前述いたしました。
仕組みを理解したら、あとは「大きな・小さな・おかしな・いろんな、は連体詞」と、丸覚えしてしまうことをおすすめします。
4.「―た」「―だ」型
たいした・とんだ
「―た」「―だ」型は、語尾が「た」か「だ」で終わる形で体言(名詞)を修飾します。
「たいした奴」「たいした事」「とんだ災難」「とんだ食わせ者」などです。
5. その他
わが・あらぬ
上記の4つに分類できないのが、その他の連体詞です。
「わが国」「わが子」「あらぬ噂」「あらぬ方向」などです。
連体詞は「のるなただ+その他」の型と、型の中の代表的な連体詞をザックリ覚えてしまいましょう。
指示語にあたる連体詞
「―の」型の連体詞は、「こそあど」と呼ばれる指示語に含まれます。
指示語のなかでも、体言(名詞)につながる指示語「この」「その」「あの」「どの」があります。
ただし、指示語には、さまざまな品詞が含まれるため、注意しましょう。
指示語(こそあど)には、名詞(代名詞)・連体詞・副詞・形容動詞が含まれます。
次の表で確認してみましょう。
【指示語】
品詞 | 近称 | 中称 | 遠称 | 不定称 |
名詞
(代名詞) |
これ
ここ こちら |
それ
そこ そちら |
あれ
あそこ あちら |
どれ
どこ どちら |
連体詞 | この | その | あの | どの |
副詞 | こう | そう | ああ | どう |
形容動詞 | こんなだ | そんなだ | あんなだ | どんなだ |
指示語に含まれる連体詞は、「この」「その「あの」「どの」があります。連体詞は名詞につながる指示語です。
指示語「こそあど」については、記事ブログ内に私がわかりやすく解説した記事があります。こそあどは、適切に使用することで、文章をシンプルにわかりやすくできます。ただし、使い方には注意点もあるため、ぜひ、こちらもチェックしてみてください!
連体詞と間違えやすい品詞の見分け方
連体詞は、入試などで出題されることがあります。
ほかの品詞と似ていてまぎらわしく、見分けを間違えやすいからかもしれません。
そこで、連体詞と、まぎらわしいほかの品詞との見分け方を整理してみましょう。
連体詞と形容詞の見分け方
連体詞と形容詞の見分け方は簡単です。
どちらもほかの語句を修飾する言葉ですが、次の大きな違いがあります。
- 形容詞は「―い」の形でほかの語句を修飾する
- 連体詞は「―の」「―る」「―な」「―た」「―だ」「その他」の形でほかの語句を修飾する
紛らわしいのが次の語句です
- 「大きな(連体詞)」 「大きい(形容詞)」
- 「小さな(連体詞)」 「小さい(形容詞)」
- 「おかしな(連体詞)」 「おかしい(形容詞)」
- 「いろんな(連体詞)」 「いろいろな(形容詞)」
語幹が同じで似ているため、混同しやすいのです。
ついうっかり、「大きな」などを形容詞と思ってしまいがちですが、「―な」は、形容詞の活用形にはない形であることから、形容詞でないことがわかります。
連体詞と形容動詞の見分け方
連体詞と形容動詞は、どちらも体言(名詞)を修飾するため、少し紛らわしいときがあります。
とくに紛らわしいのが、前述した「大きな」「小さな」「おかしな」「いろんな」です。
「―な」型の連体詞と、「―な」の形で体言(名詞)を修飾する形容動詞は、見分けにくいです。
【連体詞と形容動詞】
いろいろな国。→いろいろだ(活用する)→形容動詞
いろんな国。→活用しない→連体詞
上記のように活用する・しないで見分けることができます。
また、語幹に「だった」をつけてみましょう。
連体詞「おかしな」は「おかしだった」と、成立しません。
形容動詞「きれいな」は「きれいだった」と成立します。
だったがつけば、形容動詞、だったがつかなければ連体詞、と覚えましょう。
連体詞と副詞の見分け方
連体詞と副詞も混同しやすいようです。
連体詞と副詞は、どちらも修飾語になる性質が同じで、自立語で活用がないのも同じです。
大きな違いは、修飾する言葉です。
- 連体詞は、体言(名詞)を修飾する。
- 副詞は、用言(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾する。
例文で見てみましょう。
【例文:連体詞と副詞】
連体詞:この花は 小さな 花 です。
副詞: 庭に 咲く 花は とても 美しい。
連体詞「この」は体言「花」を、副詞「とても」は用言「美しい」を修飾していますね。
例外として、副詞は、「時間」「場所」「方向」「数量」に限定して、体言(名詞)を修飾することもあります。
「ずっと 昔」「もっと 前」などです。
ただし、こちらは連体詞の5つの型「のるなただ+その他」には当てはまらないため、連体詞ではないとすぐにわかります。
記事ブログ内に副詞について解説した記事があります。「しばらく」「とても」「ずいぶん」など、代表的な副詞の一覧もあり、パッと見て副詞についてわかるようになっています。ぜひご覧くださいね。
英語には連体詞という品詞はない
「英語にも連体詞はあるの?」という疑問もよく聞かれますが、英語には連体詞にあたる品詞の分類はありませせん。
英語では形容詞に含まれることが多いようです。
おもな連体詞は覚えてしまおう
連体詞は「活用しない自立語で、体言(名詞)のみを修飾する」性質と働きをもちます。
パッと判断するためには、5つの型に代表されるおもな連体詞をだいたい覚えてしまうのがよいでしょう。
「この、その」などの指示語、「ある、いわゆる」「たいした、とんだ」、また、「大きな、小さな、おかしな」は、見たらすぐに連体詞とわかるようにしてしまいましょう。