「させる」と「する」を使い分けましょう。
- 情報を周知する
- 情報を周知させる
どちらが正しいでしょう?
この場合、正解は「周知させる」です。理由は本文でご説明いたします!
ほかにも、「させる」について、言い換え・敬語・古語・英語などを分かりやすく解説いたします。
目次
「させる」と「する」の違いと使い分け
「させる」は他動詞、「する」は自動詞です。[注1]
「させる」と「する」を間違えて使っている文章をよく見かけます。
「させる」と「する」を間違えても、意味はわかることが多いです。
しかし、間違えている文章は、どことなく噛み合わない違和感が残ります。
【どちらが正解?】
情報 を 周知 する
情報 を 周知 させる
正解は、「情報を周知させる」です。
「する」と「させる」には使い分けのポイントがあります。
次のポイントを目安としましょう。
- 「〜を」 →「させる」
- 「〜が(は)」 →「する」
表で確認してみましょう。
【「させる」と「する」】
「させる」 | 「する」 |
勉強とスポーツ を 両立 させる | 勉強とスポーツ が(は) 両立 する |
花の香り を させる | 花の香り が(は) する |
レポート を 完成 させる | レポート が(は) 完成 する |
名前と顔 を 一致 させる | 名前と顔 が(は) 一致 する |
違い を はっきり させる | 違い が(は) はっきり する |
売上 を 向上 させる | 売上 が(は) 向上 する |
- させる(他動詞):「〜を」という対象を表す言葉がある
- する(自動詞) :「〜が」「〜は」で主語の動作を表している
上記のように考えるとすっきりします。
「周知させる」か「周知する」でよく悩むのですが…
「この事実を周知させる」のように、「〜を」という対象があれば「させる」が正解です。
[注1]ベネッセ教育情報サイト/【国語】自動詞と他動詞の見分け方
【類義語】「させる」の言い換え
「させる」を言い換えるなら、次の言葉があります。
- してもらう
- していただく
- さす
【「させる」の言い換え】
学生にプロジェクトを遂行させる。
↓言い換え
学生にプロジェクトを遂行してもらう。
【「させる」の言い換え】
仕事を確実に実行させる。
↓言い換え
仕事を確実に実行していただく。
【「させる」の言い換え】
勉強と部活を両立させる。
↓言い換え
勉強と部活を両立さす。
「させる」の敬語:「〜いただく」
「させる」は、「誰か・何かに〇〇をさせる」という意味があります。
これをもっと丁寧に表現するなら「〜いただく」が適切でしょう。
【例文:「させる」を丁寧に表現する】
パンを食べさせる
↓
パンをお食べいただく
パンを召し上がっていただく
服を着させる
↓
服を着ていただく
服をお召しいただく
理解させる
↓
ご理解いただく
満足させる
↓
ご満足いただく
連絡させる
↓
ご連絡いただく
返信させる
↓
ご返信いただく
例文のように、基本的には「〜いただく」にすると、丁寧な表現になります。
「させてもらう」の敬語は「させていただく」
「させる」に似ている言葉で、「させてもらう」という言葉もあります。
「させてもらう」の敬語は「させていただく」です。
「させていただく」は、「相手の許可を得て行い、そのことで恩恵を受ける」場合に使える謙譲表現です。
【例文:させていただく】
こちらの書類をコピーさせていただきます。
明日は遅れて出社させていただきます。
期日を◯月◯日に設定させていただきます。
上記は「させていただく」の正しい使い方です。
「させていただく」は、間違った使い方も多い言葉です。
次のような使い方をしないよう注意しましょう。
【例文:「させていただく」の間違った使い方】
× 拝見させていただきます。
→二重敬語
× A大学を卒業させていただきました。
→冗長表現
× 反省させていただきました。
→相手の許可を得て反省するわけではない
まず、「拝見させていただきます」は「拝見」と「させていただきます」が重なる二重敬語です。同じ理由で「頂戴させていただきます」なども間違いです。
また、相手の許可を得ているニュアンスをもたないごく自発的な表現に「させていただきます」は使いません。冗長表現や慇懃無礼になってしまうので注意しましょう。
ちなみに、上記の間違い例を正しく言い換えるなら次の表現がよいでしょう。
【例文:「させていただきます」の言い換え】
× 拝見させていただきます。
↓
◯ 拝見いたします。
☓ A大学を卒業させていただきました。
↓
◯ A大学を卒業いたしました。
× 反省させていただきました。
↓
◯ 反省いたしました。
「させていただく」については、記事ブログ内に詳しい記事があります。こちらもご覧ください↓
「させる」の意味
助動詞の「させる」には次の意味があります。[注2]
【させる】
1 使役の意を表す。「子供にすきなだけ食べさせる」
2 (「させていただく」「させてもらう」の形で)相手方の許しを求めて行動する意をこめ、相手への敬意を表す。「今月限りで辞めさせていただきます」「答えさせてもらう」
3 他の行動に対する、不干渉・放任の意を表す。「どうしても受験したいなら、受けさせるのだな」「好きなだけ食べさせなさい」
4 (多くは「させられる「させたもう」の形で)尊敬の意を表す。現代では文語調の表現に用いられ、高い敬意を表す。「神よ、人々に恵みを垂れさせたまえ」
日常で使うことが多いのは、使役の「させる」でしょう。
使役とは、相手に何かの動作させることです。
例文で確認してみましょう。
【例文:使役「させる」】
私はハムスターにひまわりの種を食べさせる。
母は子どもに部屋を掃除させる。
先生は生徒に宿題をさせる。
腐った野菜を処分させる。
再生可能エネルギーを普及させる。
使役はよく使う言葉です。
相手に何かの動作をさせる場合には、「する」ではなく「させる」を使いましょう。
[注2]小学館/デジタル大辞泉
「させる」の古語は「さす」
使役の意味の「させる」は、古語では「さす」です。
例文で確認してみましょう。
【例文:古語「さす」】
「これはいさめる馬なり」とて、鞍を置きかへさせけり。
意味:「この馬は気が立っている馬だ」といって、鞍を置きかえさせた」
(徒然草)
「口づきのをのこに、まづ一度せさせよ」とて、酒を出だしたれば、
意味:馬の口取りの男に、まずはお酒を一杯のませてやりなさい」といって、酒を出したところ、
(徒然草)
からうじて待ちつけて喜びながら加持せさするに、
意味:やっとのことで待ち受けて、喜びながら加持祈祷させたが、
(枕草子)
古語の「さす」は、現代語の「させる」であることが、例文でもよくわかります。
「させる」は英語でmake・have・let
使役の「させる」は英語では次の3つの表現があります。
- make:強制してさせる
- have :仕事として、料金を払ってさせる
- let :好きなようにさせる
1. make
主語+make+人+動詞の原形
makeは、「強制してさせる」というニュアンスがあります。
人が主語の場合には強制的、物・事が主語の場合には非強制的です。
例文で確認してみましょう。
【例文:make(〜させる)】
She makes me go.
(彼女は私を行かせる)
The teacher makes her write an essay.
(先生は彼女にエッセイを書かせる)
2. have
主語+have+人+動詞の原形
haveは、「義務としてさせる」ニュアンスがあります。
makeのように強制するニュアンスは弱くなります。
させられる側は納得していて、強制して無理にやらされるわけではないのがmakeとの違いです。
例文で確認してみましょう。
【例文:have(〜させる)】
I’ll have someone check on it right away.
(私はすぐに誰かにそれを確認させる)
I have him call you tomorrow.
(彼に明日電話をさせる)
3. let
主語+let+人+動詞の原形
letには、「許可する」というニュアンスがあります。
よく「私に知らせてください」の意味で「please let me know」が使われます。
例文で確認してみましょう。
【例文:let(〜させる)】
Let me take one more picture.
(写真をもう1枚撮らせてください)
Let us sleep on it.
(それについて一晩考えさせてください)
「させる」と「する」の使い分けに気をつけよう
よく使う「させる」ですが、「する」との違いに注意しましょう。
- 「〜を」→「させる」
- 「〜が」→「する」
上記はセットにして覚えてしまいましょう。
「本業と副業を両立させる」のように使います。