受け身とは?国語の受け身をわかりやすく解説【例文あり】

国語の受け身とは?簡単に解説

「財布が盗まれた」「校舎が建てられた」のように、動作を受けるものを中心にして表現する文章を国語文法では受身・受け身(うけみ)と呼びます。

「盗まれた」のように、迷惑を受けることや、「〜されてしまった…」というネガティブなニュアンスを表すときによく使われます。

 

  • 田中くんが 私を たたいた。(能動文)
  • 私は 田中くんに たたかれた。(受け身文

 

動詞の意味によっては「〜してもらった」というポジティブなニュアンスの受け身もあります。

 

  • 先生が 私を 褒めた。(能動文)
  • 私は 先生に 褒められた。(受け身文

 

私達が英作文をするときに、受け身で表すのは能動で表すより少し手間がかかると感じるように、外国人の日本語学習者の方も、受け身をあえて使うのは面倒に感じるようです。

 

そんな受け身を、スッキリ整理してみました。ご紹介する受け身の知識を、ぜひ、文章作成にお役立てください。

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国語の受け身・受身(うけみ)とは

受け身とは

 

受け身の文章は、ある動作を受けたものを中心に表現します。

受動態(じゅどうたい)とも呼ばれます。

 

  • 〇〇は 〇〇に 〇〇される
  • 〇〇は 〇〇に 〇〇を 〇〇された。

 

受け身は、一般的に、動詞の未然形に助動詞「れる」「られる」をつけて表します。

「親に叱られる」「上司に怒られた」なんて、日常的に耳にするかもしれません。

 

ちなみに、「られる」には受け身のほかにも、可能・自発・尊敬の意味を表す使い方があります。同じ「見られる」でも、次のように、使い方により複数の意味があります。

 

  • 多くの お客様に 見られる。  (受け身
  • この海でイルカを見られる。  (可能)
  • 先生がそちらを見られた    (尊敬)

 

可能の「られる」の使い方について、私が詳しく解説した記事もあります。ありがちな「ら抜き言葉」の間違いについてよく理解できるようご説明しております。ぜひ、ご覧になってください↓

「ら抜き言葉」は可能表現の間違い!3つの見分け方を例文で解説

 

受け身の種類

直接受け身と間接受け身

 

受け身は身近でよく使う表現ですが、受け身にも細かい種類があります。

呼び方も諸説さまざまです。

 

こちらでは、受け身をわかりやすく理解するために役立つ種類をとりあげます。

詳しく見ていきましょう。

 

直接受け身

国語の直接受け身

受け身は、「直接受け身」と「間接受け身」に大きく分けられます。

まずは、直接受け身について詳しくご説明します。

直接受け身は、主語が、他者によって、直接、何かをされる文章です。

 

【直接受け身の定義】

  1. 対応する能動文がある
  2. それだけでは迷惑の意味はない(動詞自体の意味による)
  3. 英語にもある

 

例文で見ていきましょう。

 

【例文:直接受け身】

私は 先生に 叱られた

 

例文の直接受け身は、主語「私」が、他者「先生」によって、直接、何かをされた文章です。例文の場合は、「叱られる」という動作を受けていますね。

 

直接受け身には、必ず対応する能動文があります。

上の例文にも、対応する能動文があります。

 

【例文:対応する能動文と受け身文】

能動文:   先生は 私を 叱った。

直接受け身文: 私は 先生に 叱られた

 

能動文の目的語が、受け身文では主語になります。

対応する能動文と直接受け身文を表で見てみましょう。

 

能動文 直接受け身文
先生は 私を 褒めた。 私は 先生に 褒められた
母は 妹を 叱った。 妹は 母に 叱られた
田中は 佐藤を 殴った。 佐藤は 田中に 殴られた
ワニは 鹿を 食べた。 鹿は ワニに 食べられた
佐藤は 田中に 告白した。 田中は 佐藤に 告白された

 

直接受け身文には、対応する能動文があるのがわかります。

直接受け身文は、動詞の意味により、ポジティブにもネガティブにもなります。

これに対し、間接受け身の文章は、常に「迷惑をかけられた」というネガティブなニュアンスです。後ほど、間接受け身のところでご説明します。

 

また、直接受け身の文章は、英語にもあります。

例文で確認しましょう。

 

【例文:英語の直接受け身文】

日本語:私は 先生に 叱られた

英語: I was scolded by the teacher.

例文の直接受け身文は、簡単に英語の受け身文にできることがわかります。

 

非情の受け身

直接受け身文のなかには、主語が非情物(事・物)の場合があります。これを非情の受け身と呼びます。

能動文 非情の受け身文
ヘッセは「車輪の下」を書いた。 「車輪の下」は、ヘッセによって書かれた
多くの人が「クリスマスキャロル」を読んでいる。 「クリスマスキャロル」は、多くの人に読まれている
始皇帝が長城を建設した。 長城は始皇帝によって建設された

 

主語になる非情物(事・物)には、感情がありません。

客観的な事実を伝えるため、新聞やニュースでよく使われます。

 

非情の受け身の「動作主」は事・物ですが、おもに次の4つです。

  1. 有名な人物
  2. 不特定多数の人々
  3. 団体・主催者
  4. 特定できない人物

 

それぞれの動作主がわかる例文を見てみましょう。

 

【例文:非情の受け身のおもな動作主】

万里の長城は 始皇帝によって 建設された。      (←有名な人物

「はらぺこあおむし」は 多くの子どもに 読まれている。(←不特定多数の人

オリンピックが (IOCによって)開催された。     (←団体・主催者

青汁は 健康志向の人によって 飲まれている。     (←特定できない人物

 

間接受け身

国語の間接受け身

 

間接受け身は、主語が、他者によって、間接的に何かをされる文章です。

人間が主語です。何かをされたことによって、主語が悪影響を被り、迷惑に感じていることを表す文章です。

 

直接受け身との大きな違いは、間接受け身には対応する能動文がないことです。

また、直接受け身が動詞の意味によってポジティブなニュアンスになるのに対し、間接受け身は常に「迷惑をかけられた」というネガティブなニュアンスです。

 

間接受け身には次の2つの定義があります。

 

【間接受け身の定義】

  1. 対応する能動文がない
  2. 迷惑の意味がある

 

例文で見ていきましょう。

 

【例文:間接受け身】

私は 母に 漫画を 捨てられた

 

主語「私」が、他者「母」によって、「漫画を捨てられる」文章です。

直接受け身と違うのは、主語「私」が、他者(母)によって、間接的に何かをされる(漫画を捨てられる)ことです。

 

定義に当てはまっていますね。

もう少し詳しく見てみましょう。

 

【例文:対応する能動文がないのが間接受け身】

能動文:      母が 漫画を 捨てた。

受け身文: 私は 母に 漫画を 捨てられた

 

受け身文では、「私は」が主語ですが、能動文には「私」がありません。このことが、「対応する能動文がない」とうことです。

 

また、「私」は、母に漫画を捨てられて、迷惑を受けているニュアンスがあります。

直接受け身文「佐藤は田中に殴られた」のように、直接迷惑をかけられたわけではなく、「漫画を捨てられた」ことにより、間接的に迷惑をかけられています

 

間接受け身文を表で見てみましょう。

【間接受け身文】

対応する能動文 間接受け身文
なし (私は)ほかの客に エレベーターを 閉められた
なし (私は)友だちに お弁当を 食べられた
なし (私は)ママ友に 悪口を 言いふらされた
なし (私は)ひったくりに カバンを ひったくられた

 

上記のように、間接受け身文は、誰かによって間接的に何かをされて悪影響を受けた、というニュアンスがあります。そのため、迷惑の受け身と呼ばれることもあります。

関節受け身には次の種類があります。

  • 迷惑の受け身
  • 持ち主の受け身・所有の受け身
  • 自動詞の受け身

 

それでは、間接受け身を種類ごとにご説明します。

 

迷惑の受け身

主語が他者から悪影響を被る間接受け身文は「迷惑の受け身」と呼ばれます。

 

【例文:迷惑の受け身文】

(私は) 子どもに 家のドアを 壊された

(私は) ほかの客に 欲しい商品を 買われた

 

迷惑の受け身も、対応する能動文はありません。

動作の受け手である「私」を、能動文に組み込むことができないためです。

例文であれば、「子どもが 家のドアを 壊した」では、「私」を組み込めないですね。

 

持ち主の受け身:所有の受け身

間接受け身には、「持ち主の受け身」と分類される種類があります。同じ間接受け身を「所有の受け身」と呼ぶこともあります。

間接受け身なので、もちろん、対応する能動文はありません。

主語の身体の部位や、持ち物を目的語とする他動詞の受け身形です。

 

例文で見ていきましょう。

 

【例文:持ち主(所有)の受け身文】

(私は) 娘に 手を つかまれた。(←身体の部位が目的語)

(私は) iPhoneを 置き引きされた。(←持ち物が目的語)

 

自動詞の受け身

間接受け身の中には、自動詞の受け身も含まれます。

受け身文の動詞を見て、自動詞だった場合には、それは間接受け身だとすぐにわかります。

 

自動詞とは、「〜を」という目的語を必要としない動詞です。[注1]

逆に、「〜を」という目的語を必要とするのが他動詞です。

自動詞には「走る」「泣く」「落ちる」「燃える」「逃げる」などがあります。

 

【例文:自動詞の受け身】

(私は) 雨に 降られた

(私は) 母に 泣かれた

(私は) 彼女に 逃げられた

 

受け身文が、直接受け身か間接受け身かを判断するためには、まず動詞が自動詞か他動詞かを確認しましょう。

 

【直接受け身と間接受け身の見分け方】

  • 自動詞                            →間接受け身
  • 他動詞→能動文が作れる    →直接受け身
  • 能動文が作れない             →間接受け身

 

上記を知っていれば、簡単に分類できそうですね。

 

[注1]ベネッセ教育情報サイト/【国語文法】自動詞と他動詞の見分け方

 

受け身にできない動詞

受け身にできない動詞もあります。

 

【受け身にできない動詞】

  • 自発的な意味の動詞:                  「見える」「聞こえる」「売れる」
  • 受け身的な意味の動詞:                 「教わる」「見つかる」
  • 能力を表す動詞:                        「できる」
  • ほかに影響を与えない状態動詞:   「ある」など

 

たとえば、「テーブルのうえにコーヒーカップがある」を、「コーヒーカップがテーブルのうえにあられる」とは言いませんよね。

 

使役受け身文:〜させられる

使役受け身について解説

「〇〇させる」のように、ある行為を人に行わせることを表すのが「使役(使役)」です。

この使役にも受け身があり、「使役受け身」と呼ばれます。

 

例文で見てみましょう。

 

【使役受け身文】

私は 母に 毎日 人参を 食べさせられた

弟は 兄に 着ぐるみを 着させられた

 

他動詞が使役を受ける場合は、下記のように文を作ります。

 

【例文:使役受け身】

小林が 部屋を 片付づける。

佐藤が 小林に 部屋を 片付けさせる。(使役文)

小林が 佐藤に 部屋を 片付けさせられる。(使役受け身文

 

使役受け身は、やりたくないことを誰かに強制されたときによく使われます。

例文のように、最初に使役動詞(片付けさせる)を考えてから、使役受け身の形(片付けさせられる)にすると、スムーズに使役受け身文を作れます。

 

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受け身を自然に使いこなそう

今回は、国語文法の受け身(うけみ)についてご説明しました。

受け身には、主語が直接何かをされる直接受け身と、間接的に何かをされて影響を受ける間接受け身があります。記事でご説明した特徴を参考に、それぞれを見分けてみてください。

少しややこしいのが使役受け身ですが、「書かせる→書かされる」のように、使役動詞を考えてから受け身にして、使役受け身の形を作るのがよいでしょう。

ただし、受け身文を読み返してみて、「なんだかまわりくどいな」と感じる場合は、受け身はやめ、スッキリと能動文で表現し直しましょう。

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